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スライムマスター・リトル  作者: 空知音
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第2話


 ボクが『受職の儀』を受けた次の日から、村のみんながボクを見る目が変わった。

 冷たい、どこか突きはなしたような目でボクを見るんだ。

 それは、聖堂で神父のカールさんがボクを見た目と同じだった。 

 誰一人、ボクに話しかけてこなくなったし、ボクが話しかけても答えてくれなくなった。


「ジーナ、ジーナ、ボクだよ!

 リトルだ!」


 ジーナの家に遊びに行っても、誰も出てきてくれない。

 家の中に人がいる気配はするから、わざとそうしてるんだろう。

 他の人はともかく、幼馴染のジーナにまで無視されたのがすごく悲しかった。


 そのことを母さんに言うと、なんとも言えないくらい悲しそうな顔でボクを見た。


「ごめんね、リトル。

 母さんのせいなの、ごめんね」


 母さんはボクを抱きしめると、何度もそう言った。

 頭がびしょびしょに濡れていたのは、母さんが泣いたからだと思う。

 

 ボクは、あんなに大好きだった村が、嫌いになりかけていた。

 もし、話し相手がいなかったら、村から逃げだしていたかもしれない。


 去年、冬の寒い日に拾った小さなスライム。

 ボクは、彼を納屋に隠し育てていた。

 朝、母さんが起きる前に、そっとベッドを抜けだして納屋へ行く。

 納屋の隅には、使われていない大きな木箱があって、その中に枯草を敷いてある。


「プニ、プニ、ボクだよ。

 出ておいで」


 話しかけると、枯草がカサリと動いて、小さな青いスライムが顔を出した。

 ボクは、プニを抱きあげる。

 すべすべして冷たいプニは、ボクの胸でプルプル震えている。

 喜んでくれてるね。


「ほら、ポタだよ。

 お食べ」


 夕食で出たポタ(※白い根菜)を少しだけ食べずにとっておき、それをポケットに入れておいた。 

 ポタの白い塊を近よせると、プニの表面から二本の「手」が伸びてきてそれを受けとる。

「手」って言っても、指があるわけじゃないんだけどね。

 プニは、二本の「手」ではさんだポタを自分の身体に押しつける。

 それは、すうっとポタの中に取りこまれた。

 青い体の中に浮かんだポタが少しずつ溶けていくのが分かる。

 そして、全部食べおわると、体をプルプル震わせる。


 ボクはプルがもの食べるところを見るのが大好きなんだ。

 

「ありがと」


 ん?

 なにか聞こえたぞ?

 それは、小さな女の子の声だった。

 辺りを見まわしても誰もいない。

 

「あれ?

 気のせいかな?」


 プルを見て、あることに気づいた。

 黒くツヤツヤした小さな丸いものが二つ、青い表面に浮かんでいる。

 両手に載せたプルを動かすと、その黒い粒が動く。

 もしかして、これって目玉?


「プル、もしかして目ができたの?」


「うん、めができた」


 やっぱり声が聞こえる。


「プル、しゃべれるの?」


「しゃべれる」


「すごい!

 スライムってしゃべれるんだね!」

  

「ますたーとなら、しゃべれる」


 ふうん、「ますたー」ってなんだろう?

 でも、これで村の人がおしゃべりしてくれなくても大丈夫。

 ボクにはプニがいるんだから。


 



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