第1話
一人の少年が、逆境を乗りこえ成長していく物語です。
読んで元気が出るようなお話にできるといいなあ。
「ねえ、リトル、早く行こうよ!」
ボクの手を引く金髪の女の子。
今日で六才になるジーナは、ボクの幼馴染だ。
そう、ボクも今日で六才になる。
この村だけじゃない、この国ではどこでも年の初めにみんなが一つ年を重ねるんだ。
そして六才になる子どもが、みんな儀式を受ける。
儀式は『受能の儀』と呼ばれていて、神様から職業を授かるんだ。
母さんは、なぜか自分の職業がなにか教えてくれない。
どんな職業か知らないけど、母さんのことだから、きっと凄い職業に違いない。
「ジーナちゃん、リトルをよろしくね。
リトル、寄り道せずに帰るのよ」
家の扉を開け顔をのぞかせた母さんは、なぜかとても心配そうな顔をしていた。
「ジーナ、行こう!」
ボクは柔らかくふにふにした手を取り、走りだした。
◇
村の聖堂は石造りで、普通の家よりずっと大きい。
その前に子供たちが集まっていた。
なぜだから知らないけど、儀式には大人の出席は認められていない。
遠巻きに見ている大人たちはいるけど、聖堂前の広場には子供だけしかいなかった。
この中で六才になる子供だけが、儀式を受けることになるんだ。
聖堂の黒い扉が開き、カールさんが出てくる。
カールさんは、黒い口ひげを生やしたおじさんで、教会の神父さんだ。
「さあ、みんな入って。
六才になる人は、祭壇の前に並びなさい」
どんなスキルがもらえるか、ワクワクするなあ。
◇
ギギィー
そんな音がして聖堂の扉が閉まった。
中には神父のカールさんと子供たちしかいない。
今日この村で六才になるのは、ボクとジーナを含めて四人だけ。
あとの二人は、村長の息子ポータと鍛冶屋の息子アインだけ。
「では、『受能の儀』を始めます。
ポータが最初かい?
この玉に触れなさい」
最初に儀式を受けるのポータは、すごく緊張しているみたいだ。いつもジーナやボクに意地悪しながら笑っている顔が、青白くなっている。
小さなテーブルの上に置かれた透明な玉に、彼が両手で触れると、それが白く光りだした。
薄暗い聖堂の中が、照らされる。
子供たちが食いいるように儀式を見ていた。
「うむ、【剣士】だね。
ステータスカードを授かっているはずだから、それを確認してみなさい」
「「「うわー!」」」
みんなから歓声が上がる。
ポータが授かった【剣士】は、男の子に人気の職業だ。
都の騎士たちは、ほとんどがこの職業だそうだ。
『ステータスカード』というのは、職業を得た人が使える石板のようなものだ。
自分だけが見えるそのカードには、その人の能力が書かれているらしい。
母さんに見せてって頼んだけど、どうしても見せてくれなかった。
ジーナは、彼女の両親や兄さんから、それを見せてもらったそうだ。
「アインは、『鍛冶師』だね」
「やったー!」
みんなは微妙な顔をしているけど、アイン自身はすごく喜んでいる。
あいつ、おじさんの跡を継いで、鍛冶がしたいって言ってたもんね。
「次、ジーナ。
この玉の上に手を載せなさい」
いつになく緊張した顔のジーナが、玉を載せたテーブルの横に立つ。
彼女がこちらを見たので、手を振ると強張っていた表情が消えた。
玉の上に、ジーナの小さな白い手が触れた。
「「「うわっ!」」」
みんなが声を上げる。
目を開けられないほど強い光が周囲を照らした。
「凄いぞジーナ、お前は『聖騎士』だ!」
やっと見えてきた目に映ったのは、カールさんがジーナの頭を撫でているところだった。
「聖騎士!」
「すげえ!」
「かっこいい!」
子供たちが騒ぎだす。
ポータが、ものすごい目つきでジーナをにらんでいる。
そりゃ、『剣士』より『聖騎士』の方が上だもんね。確か魔術だって使えるはず。
「さあ、最後はリトル、お前だよ」
カールさんに背中を押され、玉に近づく。
透明な玉には、ぐにっと曲がったボクの顔がうつっていた。
プニみたい。
ボクは、みんなに隠れて『プニ』って名前をつけたスライムを育てているんだ。
「さあ、早く手を玉に置いて」
カールさんに急かされて、玉に手を置く。
「な、なんだこれは!」
玉の中で、雷のような光がピカピカしている。
赤、青、緑、黄……玉の色が、次々と変わる
ピシッ!
そんな音がすると、玉にヒビが入る。
そして、玉は粉々になって床に散らばった。
「な、なんだこれは!?」
カールさんは、睨みつけるようにボクを見ている。
そこには、いつもの優しい神父さんはいなかった。
「みんな、聖堂の外に出なさい。
ポータ、村長を呼んできてくれ!」
どうやら、ボクの職業は教えてもらえないらしい。
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