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えこらん ~工業系女子高生のカーレース~  作者: パンプキン ぽてと
4月
6/33

自動車部~2人目~

~前回までのあらすじ~

 黒猫レンチはふしぎな電波を発した。沙耶子は混乱した。


~本編~


「もしかして……A・I?」

 この黒猫のぬいぐるみ、コンピュータの人格ですか。工業高校がこんなところまで進んでいるとは……恐るべし。……です。


「……そんなわけないじゃないですか」

 本田さんが冷徹に否定しました。心なしか視線が冷たいです。


 すると彼女は猫じゃらしを取り出しました。次に黒猫が座っているスタイリッシュチェアをどけると、デスクの下に入れました。そして小刻みに動かします。


「……何をしてるの?」


「しーっ、静かにしていてください。…………んっ、かかった!」


「”かかった”?」


 ずるぅっ……。


 猫じゃらしを引っ張ると、その先っぽには女子高生が釣れていました。


「ゲッ……」


「チーム・マネージャーの稲盛 千奏ちかなです。先生と同じ電子情報科の2年生ですよ」

 本田さんが紹介してくれました。


 メガネをかけたショートヘアの女子です。ツナギではなく制服です。が、その上にジャージを着ています。ジャージの袖が長くて手が隠れています。背が低くて中学生に見えます。


 そして感情のない顔を私に向けています。


 目を合わせると、反射的にソッポを向きました。


 そんな少女に、本田さんが注意します。

「ほら、ディスプレイ越しじゃなくて、ちゃんと挨拶しなさい。新しい顧問の先生なんだから」


「ど、どうも、上尾です。よろしくね」


 すると稲盛さんは急に顔を赤くしました。そしてデスクの下にもぐっていこうとしています。


「こ、こら、ちゃんと挨拶しなさい」

 本田さんがジャージの襟を掴みました。


「ムーっ!」

 しかし稲盛さんはジャージを脱ぎ捨てると、素早くデスクの下に滑りこんでいきました。まるで巣穴に戻るウツボのように……。


「すいません先生」

 本田さんが代わりに謝りました。

千奏ちかなは人見知りが激しいので、いつもあんな感じなんです。でもSNSじゃお喋りなんですよ」


 それってコミュ障じゃないですか? 将来が不安になります。



 それにしても……。

 と、私は稲盛さんがもぐっていったデスクの下を覗き込みました。中は暗くてよくわかりません。ここに住んでいるんでしょうか?

 不思議の国にでも繋がっている穴ですか?

 それとも、暗闇を抜け出た先は雪国?


「この下、いったいどうなっているの?」

 本田さんに訊ねました。


「噂じゃ特異点があるそうですよ」


「…………」


 ……ブラックホールですか?


「冗談です。そこは千奏の部屋です」

「はあ……」

「中にはパソコンの本体とかキーボードとか、あとカメラのモニターとかがあるみたいです」

「カメラ……?」


 今気付きましたが、ディスプレイの横には小型カメラが置いてあります。それもディスク前のに立った人を写すような角度で。


「たぶんそのカメラで先生を見ていたんですよ」


「”たぶん”……? 中を見たことあるの?」


 ぶんぶんと首を振る本田さん。

「覗こうとすると、千奏がコンピューターウィルス播くって怒るので」


「ふ~ん」

 

 そこで本田さんが手に持っている稲盛さんのジャージが気になりました。

「手が袖で隠れていたのに、あの子よくキーボード押せましたね」

 どうなっているんでしょう?

「ちょっと覗いてみようかな?」


 するとディスプレイに私の顔写真が映りました。

「え?」

 しかも今着ている服です。まさか、今まで映していたカメラの映像を静止画に?


 さらにワードで文章がうたれていきます。

『我が聖域サンクチュアリを覗くものは、ガチガチの黒地蔵に貫かれて魔汁をインストールされているアイコラを製作し、ネットの海に流してやる』


「…………肖像権の侵害ですよ」



 稲盛千奏、恐ろしい子…………のようです……色んな意味で……。



 南野工業高校の七不思議。ひとつめ、自動車部にある魔訶不思議アドベンチャー穴。



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