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えこらん ~工業系女子高生のカーレース~  作者: パンプキン ぽてと
4月
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7/33

自動車部~3人目~

 ~前回のあらすじ~

 きっとその先へ行ったらラノベのような異世界バトルが待っているのでしょう。という不思議穴を見つけました。


 ~本編~

「部員はあと三人いるんですよね。お休みですか? 春休みですし」


 不思議穴はとりあえず置いておいて、私は本田さんに訊ねました。


「えっと、一人は陸上部との掛け持ちなので、今はそっちの朝練に行ってます。あと二人は買い出しです」

「買い出し?」

「はい。エンジンをかける回路のヒューズが切れていたので、それを買いに。一人でいいのに、まったくあの二人はいつもイチャイチャと……」


 少し困った顔をしました。稲盛さんの他にも問題のある生徒がいるということでしょうか?


「ひょっとしてオレっちのうわさかい、あいのん。いや~、イケメンは辛いね~」


 私たちの会話に割って入ってきたのは、この学校のガクランを着た男子生徒でした。


 私を見ると、ぐっと立てた親指で自分自身を指し、とびっきりの笑顔で自己紹介しました。

 

「タンメン、刀削麺とうしょうめん、オレっちイケメンっス」

 アンド左目ウインクばっちーん!


「……(呆)」


 未だかつて、その台詞を言ってイケメンだった殿方を私は知りません。


 でも例外もあるんですね。目の前の少年はなかなかの美形でした。中性的な顔立ちに、女の子のような細くて滑らかな髪をしています。ジャニーズか読者モデルをしていると言っても誰も疑わないでしょう、というくらいに。


「本田さん、この子が?」


「はい、電気科2年の川島いつきです」


 自動車部の男子部員と初対面です。ただ第一印象の感想を言わせてもらえば、人格的には稲盛さんと同等かそれ以上に残念な子のようです。


「いやいやまいったぜい。行ったらまだ開店時間じゃなくってさ、少し待っちまったよ」


 言いながら川島くんは、本田さんに紙袋を渡しました。


「だから慌てていく必要はないって言ったのに……」

 本田さんは受け取った紙袋の中身を確認します。

「あなた、いつも人の話しを聞き終わる前に突っ走るんだから……」


「何だよ、ねぎらいの言葉もなしに、いきなり説教かぁい? クールビューティー」


「変な呼び方しないで、私も変に思われるんだから。それより領収書は?」


「紙袋ん中に、一緒に入ってるぜい。で……」


 私の方を見ながら川島くんは訊ねました。


「誰だい、あいのん?」


「新しい顧問の先生。上尾先生」


「ふーん……」

 彼は右手を差し出してきました。

「川島いつきでーっス。”いつき”でいいっスよ。よろしくでーっス!」


「こちらこそ」


 と言いながらその手を握ろうとしたら、いきなり抱きつかれました。


「え……?(硬直)」

 あんまりにも不意のことで反応できません。


「へー、ほー」

 しかも腰に手を回して、何かを確かめているよう……。

 ここは甲高い悲鳴を上げて、平手打ちでもくらわせた方がいいのでしょうか。でも生徒相手に手を上げたら暴力問題?


 するといつきくんは抱きついたまま耳元で囁きます。

「……先生、彼氏いませんね」


「は?」


「腰がプニプニっス。恋人がいないと油断してるからこうなるんだぜい」


「なっ……」

 咄嗟に彼から離れました。


「あ、やっぱ図星っスかぁ? ひょっとして処女とかー、なぁーんてねぇ」

 そしてケラケラと笑います。


 正直理解不能です。いや、バカにされているんだろうな、というのはわかりますよ。

 でも、顔だけでなく、態度も含めてここまで爽やかな変態だと怒る気も失せます。

 ただ今後の展開として、仲良くはなれないでしょう……。



「その辺りでやめなさい。先生困ってるでしょ」

 本田さんがスパナを持って、いつきくんを睨みました。


「なになに、あいのん妬いてくれてんの?」

「何で妬かないといけないのよ。私にそんな趣味ないって、変態」

「ひでえなあ」


「すいません先生、この人、頭おかしいんです」

「ああ……うん、とてもよくわかった」


「……で、先生、彼氏いないんですか?」


「……」


「ああ……あの……気にしないでください。私も昔、いきなり抱きつかれて同じこと言われました……」

 本田さんが苦笑しながら言いました。


 それで気を使ったつもりですか、本田さん? 私の方は笑えません。まったく笑えませんよ。


 教員になって初日、部活に行ったらいきなり男子生徒にセクハラされたんですから。しかも恋人がいなことも、お腹がプニプニであることも暴露されてしまって……痛恨つうこんのダメージを受けました……。


 この男子部員、退部か、退学か、もしくはそこにあるマシンで轢き殺して埋めた方がいいんじゃないんですか?



「いつきくん!」


 突然、車庫の前から甲高い声がしました。


 そこには学校指定のブレザーを着た女の子がいました。しかも心なしか私を睨んでいるような……。


「マッキー、どうした?」

 いつきくんが飄々(ひょうひょう)と訊ねます。


「どうしたじゃないよ。いきなり女の人に抱きついたりしないって、ボクに誓ったでしょ。どういうことっ!」


 どういうことなんでしょう? そしてあなたは誰?


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