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異世界居酒屋  作者: 蒼崎しんのすけ


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1/3

第一話 異世界支店、開店します!

居酒屋チェーン店「エンテロッザ」の社員である俺は、その日も翌日の営業に向けた仕込みを朝五時まで続けていた。


強烈な眠気が襲ってくる


「……あかん。寝たら負けや」


俺は冷蔵庫から一本のエナジードリンクを取り出した


エンテロッザ印・最強エナジー


あの有名エナジードリンクの一・五倍のカフェインを誇る、従業員価格百円の最終兵器だ


一気に飲み干し、残りの仕込みを終える


そして締め作業をしていた、その時だった


突然、目の前が真っ暗になった。


---


気が付くと、俺は真っ暗な空間に立っていた


「……あれ? 俺、仕込み終わって締め作業してたはずやけど……ここどこや?」


周囲を見回しながら戸惑っていると、突然後ろから声が聞こえた


「おお、死んでしまうとは情けない」


「……え?」


振り向くと、そこに立っていたのは――


リーゼントにボーダーシャツという見慣れた姿。


我が社のマスコットキャラクター、黒木亭おじさんだった。


「は!? え!? 黒木亭おじさん!? ……え、死んだ? 俺が!?」


突然すぎて頭が追いつかない。


どうやら俺は――


過労死したらしい。


「だが安心しろ。このエンテロッザの大いなる神であるわしがお前を転生させてやろう」


「……は?」


「異世界へな」


「……え?」


「異世界支店を任せたい」


「…………店舗?」


あまりにも意味不明すぎる


黒木亭おじさんは腕を組み、真剣な表情で言った


「コロナ禍で店舗が減り、我が社も苦境なのじゃ そこで新規店舗を異世界へ出店する」


「いや、なにいってるうの?!」


「異世界ならコロナはないからな!」


「そうなの知らんけど!?」


ツッコミを入れた瞬間、目の前が眩しく光った。


「では任せたぞい! 異世界にエンテロッザの偉を示すのじゃ!」


「いや、まだやるって言って――」


最後まで反論する暇もなく、俺は光に包まれた


---


目を開けると、そこは見慣れた店内だった。


「……夢?」


時計を見る


午後三時


「あかん! もう店開けな!」


急いで開店準備を始める


急いでオープン準備をする

レジを開け開店処理を行い店内の開店準備をする


ふと店内みると納品済みの食材が積まれていることに気付いた


「あれ? 業者さん、いつ来たんや?」


考えている暇はない


非常口横にまとめようと裏口を開けた。


「……は?」


そこには、見たこともない景色が広がっていた


石造りの建物


見知らぬ街並み


明らかに日本ではない


「え……?」


頭が真っ白になる


しかし営業時間は待ってくれない


とりあえず冷蔵品と冷凍品だけ冷蔵庫と冷凍庫に片付け、あとは裏口に置いて


店の正面へ向かう


扉を開けた瞬間、俺は固まった


中世ヨーロッパのような街並み


鎧姿の人々


馬車


見たこともない種族


その時、夢の中で聞いた言葉を思い出した


『異世界に新店舗を出すのじゃ』


「……まさか」


周囲を見渡す


間違いない


異世界だ

どうやら本当に異世界に転生したらしい

そして

俺は過労死したことを自覚する

「……あかん。本当に俺、死んどるがな」


そう過労死したんだ・・・あれは事実


だが落ち込んでいる暇はない


店はある


商品もある


俺は店長だ


黒木亭おじさんの言葉が蘇る


『エンテロッザの偉を示せ!』


「……とりあえず店開けな」


看板の電気をつける

とりあえず販促や

深呼吸を一つ。


「いらっしゃいませー!」


声を張り上げながら街を観察する


耳の長い種族


たぶんエルフだ


獣耳の人もいる


獣人ってやつか?よくわからん


本当に異世界なんだな


……そこで重大なことに気付く


「……よく考えたら、バイトおらんやん」


ここは店はまんまだが異世界だからバイトがいない


ワンオペだ

まぁ仕方ないか・・・


「いや、良くない!」


俺はそのワンオペで過労死したんだ


でも今はどうしようもない


異世界だからエリア長に電話してヘルプも呼べないし――


……ん?


ポケットにスマホがある


試しに開くと、


電波が立っていた


電話帳を見ると、


『エリア長』


という見覚えのない登録


恐る恐る電話をかける


「お疲れさまです」


繋がった


「初めまして。店長の神威キリト君」


「え? 俺の名前知ってる!?」


「この異世界エリア担当エリア長、カールシュビンツ=ザウアーだ」


いかにも外国人の名前なのに、日本語だ。


「言葉が通じるのが不思議かい?」


考えてることを読まれた?


「それがエンテロッザの神から与えられたスキル、『翻訳』だよ」


俺は日本語を話しているつもりでも、相手には現地語として聞こえるらしい


なんて都合のいいスキルなんだ

思わず呆れてしまう

「都合のよすぎるスキルとおもったかい?」



また考えてることを読まれた


「今日から営業だから、ヘルプとして獣人の子を一人向かわせる それと今日の売上目標は三十万 未達は甘え。頑張りましょう」




電話は一方的に切れた


「くっ死んでから解ったがブラックすぎる・・・」


まぁ愚痴をいっても仕方ない・・・

店の前を歩いていた衛兵らしき二人組に声を掛ける


「いっぱいどうですかー!」


金髪と茶髪の青年だった


「今日は訓練でヘトヘトだ。何がある?」


「鶏軟骨の唐揚げ、おすすめですよ!」


「聞いたことのない料理だ」


「それはもったいない すごく美味しいですよ ビールのつまみに最高ですよ」


二人を席へ案内し、まずは冷えたビールを出す。


「冷たい!?」


驚きながら一口。


「うまい!」


続いて軟骨の唐揚げ。


コリッ。


コリコリ。


「なんだこれ! 止まらん!」


エンテロッザの大ヒット商品。


鶏軟骨の唐揚げ。


黒木亭で生まれた原価率最高の商品で

大ヒットし日本中に広がった


異世界でもヒットするはず


口コミであっという間に街へ広がり、店はみるみる賑わい始めた。


「やばい……ワンオペ限界!」


その時。


「すみません! ヘルプで来ました! アリアですにゃ!」


猫耳の少女が飛び込んできた。


「助かった! 料理運んでくれ!」


「かしこまりましたにゃ!」


次の瞬間。


彼女は風のような速さで店内を駆け回り、料理を次々と配膳していく。

どういうスピードとバランス感覚だ

速い。


速すぎる。


人間三人分は働いている。


これなら

「勝つる!」


俺は料理とドリンクに集中できる


会計がきて

ふとレジてどうなるんだと思うと

スキル会計が表示され

客の頼んだものが全部表示された


ハンディでうったわけじゃない

口頭でうけ作ったものが全部会計に表示されてる


これはすごい


便利すぎる



現実の世界でもこうだったら楽だったのに・・・


---


その日、二人だけで何とか営業を乗り切った。


売上は三十六万。

通貨が違うようだけど

日本円と同じ単位の硬貨と紙幣だ

この辺数字の単位も同じようだ


目標達成。


「店長、お疲れさまですにゃ」


「お疲れさま。そういえば自己紹介してなかったな。俺は店長の神威キリト」


「よろしくお願いしますにゃ!」


しかし安心はできない


まだ人手不足だ


このままでは、また過労死してしまう


その時


「すみませーん! 求人を見て来ました!」


求人?


そういえば、うちの会社は万年人手不足だから求人票を貼ったままだ


入口へ向かうと、小柄な少年が立っていた。


「調理スタッフの募集を見て来ました」


調理担当!


調理?それはありがたい

調理まかせられればホールをやることが出来る

「じゃあ面接というか採用で」


え?という顔される


「いまは猫の手も借りたいんだ」


いやすでに猫の手借りてるけど

ヘルプのアリアちゃんをみる俺


少年は苦笑した


彼はホビット族で、料理が得意らしい。

「マニュアルはあるから調理の経験があるなら大丈夫」

「あ ありがとうございます レニーといいます よろしくお願いします」


こうして新たな仲間が加わり、異世界支店一日目の営業は無事終了した。


とはいえ、まだ人手は足りない。


このままでは、また過労死しかねない。


会社も大事。


売上も大事。


でも――


自分の命はもっと大事だ。


過労死から始まった異世界生活。


今度こそ。


もう二度と、死なない。

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