第十三話 その後 ― 選別
嵐は去った。
海は、何事もなかったかのように静まっている。
だがそこにあるのは、かつての船団ではない。
壊れた船。
漂う残骸。
そして、わずかに残った生存者。
彼らは言葉を失っていた。
何が起きたのか。
どこで壊れたのか。
誰も説明できない。
ただ一つ、確かなことだけがある。
「敗けた」
それだけだった。
やがて岸へと流れ着く。
そこにいる。
鎌倉武士団。
戦うためではない。
“待っている”。
生き残った者たちは抵抗しない。
武器を握る力が残っていない。
いや、それ以上に。
もう理解している。
戦っても意味がない。
捕らえられる。
一人ずつ。
静かに。
叫びはない。
混乱もない。
すでに戦は終わっているからだ。
その後。
選別が始まる。
言葉が通じる者。
装備が違う者。
そして、出自。
蒙古軍の者たち。
彼らは前へ出される。
抵抗はない。
誰も暴れない。
暴れる理由がない。
すべてを失っている。
処断。
それは迅速だった。
長引かない。
見せしめでもない。
ただ、決められたように終わる。
一方。
高麗軍の者たち。
彼らは分けられる。
捕虜として。
生かされる側へ。
その違いに、誰も声を上げない。
疑問もない。
ただ受け入れる。
それが現実だからだ。
ある者が小さく呟く。
「なぜだ……」
だがその問いに答える者はいない。
なぜ負けたのか。
なぜここまで壊れたのか。
そして。
なぜ“あれ”に勝てなかったのか。
誰も説明できない。
鎌倉武士団は何も語らない。
誇らない。
語る必要がない。
結果だけが、すべてを示している。
海は静かだ。
陸も静かだ。
だがその静けさの中に、
消えないものが残る。
恐怖。
そして理解不能。
生き残った者たちは知る。
この戦には、物語がない。
勝敗の理由も。
戦術の説明も。
何も残らない。
ただ一つ。
「アイツらはヤバい」
それだけが、最後まで残る。




