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蒙古襲来  作者: レモンティー


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第十二話 暴風雨 ― すべてを拒む海

沖へ出た。

離れたはずだった。

陸からも。

あの“存在”からも。

だが、安堵は来なかった。

海が、静かすぎたからだ。

風が止まる。

帆が垂れる。

誰も言葉にしない。

だが全員が感じている。

「これは、来る」

最初の一撃は、風だった。

突然、叩きつけるように吹く。

帆が裂ける。

索が鳴る。

次に波。

船が持ち上がる。

落ちる。

海が“平面”ではなくなる。

上下が入れ替わる。

「嵐だ!」

叫びが上がる。

だがその声はすぐに消える。

風に飲まれる。

雨が来る。

叩きつける。

刺すような粒。

視界が消える。

隣の船が見えない。

さっきまでいたはずの船が、消える。

いや、見えないだけなのか。

分からない。

船は揺れる。

いや、“振り回される”。

誰も操っていない。

操れない。

櫂は役に立たない。

帆は意味を失う。

海がすべてを決める。

その中で、誰かが叫ぶ。

「あいつらだ……!」

否定の声は出ない。

理屈では違う。

だが感覚が拒否しない。

鎌倉武士団。

見えない。

だがここまで来ると、区別がつかない。

恐怖の原因が、一つに重なる。

船が傾く。

積荷が滑る。

人が転がる。

そのまま、海へ消える。

掴めない。

助けられない。

助けようとした者も、消える。

秩序は完全に消える。

命令は無意味。

声は届かない。

判断は間に合わない。

ただ、生き延びようとする個の動きだけが残る。

だがそれすらも、海に否定される。

波が叩きつける。

船がきしむ。

割れる音。

誰かが祈る。

誰かが叫ぶ。

誰かが笑う。

すべてが混ざる。

その中で、奇妙な理解が広がる。

「これも……同じだ」

敵は見えない。

だが確実に、抗えない。

鎌倉武士団と同じ。

“どうにもならないもの”。

船団は散る。

統一も、連携もない。

ただ、それぞれが流される。

一隻が沈む。

また一隻。

数が減っていく。

だが誰も数えられない。

数える余裕がない。

やがて。

風が弱まる。

波が落ちる。

雨が止む。

静寂が戻る。

だが。

何も戻っていない。

船団は消えている。

残っているのは、わずかな船だけ。

人も、物も、秩序も。

すべてが削られている。

誰かが呟く。

「……終わったのか」

誰も答えない。

終わったのは嵐だけだ。

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