# 第五話 英雄の灯火 光が村を包む。
# 第五話 英雄の灯火
光が村を包む。
レインの身体から溢れる金色の輝き。
風が渦を巻く。
まるで英雄の誕生を祝福するかのように。
---
黒騎士は目を細めた。
「なるほど」
「聖剣アストラに選ばれたのは本当だったか」
---
レインは剣を構える。
不思議だった。
身体が軽い。
今なら戦える。
そんな確信があった。
---
『レイン』
アストラが語りかける。
『力に飲まれるな』
『力は怒りではなく、守りたい想いのために使え』
---
レインは静かに頷く。
---
「分かってる」
---
そして走った。
---
ドン!!
地面が砕ける。
先ほどとは比べものにならない速度。
黒騎士の目が見開かれる。
---
ガキィィン!!
剣と剣がぶつかる。
火花が散る。
今度は押し負けない。
---
「おおおおおっ!!」
---
レインは叫びながら剣を振る。
一撃。
二撃。
三撃。
---
黒騎士が後退した。
---
村人たちが驚く。
---
「押してる……」
「レインが!?」
---
昨日まで普通の村人だった少年が。
魔王軍の騎士を追い詰めている。
---
ミリアの瞳には涙が浮かんでいた。
---
「レイン……」
---
黒騎士は剣を弾く。
そして距離を取った。
---
「面白い」
---
初めて感情のある声だった。
---
「だが甘い」
---
次の瞬間。
黒い魔力が噴き出す。
---
ドォォォォン!!
---
空が曇る。
大地が震える。
---
レインの顔から笑みが消えた。
---
強い。
まだ本気じゃなかったのか。
---
黒騎士は剣を天へ向ける。
---
「我が名はヴァルグ」
---
「魔王軍四天将が一人」
---
「黒剣のヴァルグ」
---
村人たちが青ざめた。
---
四天将。
それは伝説に語られる怪物たち。
一人で国を滅ぼすと言われる存在。
---
レインも息を呑む。
---
「そんな奴が……」
---
「なぜミリアを狙う」
---
ヴァルグは静かに答えた。
---
「王女だからだ」
---
「王家の血は封印の鍵」
---
ミリアの表情が凍りつく。
---
レインが振り向く。
---
「封印?」
---
ミリアは震えながら言った。
---
「昔……」
---
「勇者たちは魔王を完全には倒せなかった」
---
「だから封印したの」
---
「そして王家は、その封印を守る一族だった」
---
レインの背筋が冷える。
---
つまり。
---
ミリアが捕まれば。
---
魔王が復活する。
---
ヴァルグは笑う。
---
「その通りだ」
---
「だから王女は必要なのだ」
---
村中が静まり返った。
---
レインはゆっくりと剣を握る。
---
守る理由が増えた。
---
ミリアだけじゃない。
---
世界まで背負うことになった。
---
普通なら逃げる。
---
普通なら諦める。
---
だけど。
---
レインはレインだった。
---
「だったらなおさら」
---
ヴァルグを睨む。
---
「お前には渡さない」
---
風が吹く。
---
赤いマフラーが揺れる。
---
ミリアが後ろで涙をこぼす。
---
その涙を見た瞬間。
---
レインは笑った。
---
優しく。
---
「大丈夫」
---
「俺がいる」
---
ミリアの瞳が揺れる。
---
その一言だけで。
---
少しだけ恐怖が消えた。
---
ヴァルグは剣を収めた。
---
「今日はここまでだ」
---
「なに?」
---
「聖剣の覚醒は想定外だった」
---
「だが次はない」
---
黒い霧が広がる。
---
「王女」
---
「いずれ迎えに来る」
---
そして。
---
ヴァルグたちは消えた。
---
静寂。
---
村に平和が戻る。
---
しかし誰も安心していなかった。
---
本当の戦いは。
---
今始まったばかりだから。
---
レインは空を見上げる。
---
遠い王都。
---
魔王軍。
---
封印。
---
そしてミリア。
---
守りたいものができた。
---
だから進む。
---
何度負けても。
---
何度倒れても。
---
夢が叶うまで。
---
英雄になるその日まで。
---
# 次回予告
## 第六話 旅立ちの日
ヴァルグの脅威は去っていない。
このまま村にいれば皆が危険になる。
レインは大きな決断を下す。
そしてミリアもまた、自分の運命と向き合うことを決意する。
涙の別れ。
新たな仲間との出会い。
英雄の旅がついに始まる!
次回――
**『旅立ちの日』**
「世界を救うなんて大それたことじゃない。まずは、君を守るために!」




