27-4・前向きな感情~片輪車浄化~心の繋がり
「はぁぁっっっっっ!!ウルティマバスタァァッッッッ!!!!」
「えっ!?いきなり!?」
「ク、クーチャンっ!!チョット、待て!」
ゲンジ(紅葉)が問答無用で変化した神鳥が片輪車に炸裂!ネメシス(美穂)は衝撃で飛ばされ田んぼに突っ込み、ジャンヌは片輪車を巻き込みながら迫ってきた神鳥を横っ飛びで回避!
「あのバカ・・・相変わらず、ムチャクチャな」
「あ、危なく、妖怪ごと浄化されるところだった」
直撃を受けた片輪車は、破片を撒き散らせながら地面を転がって牛車の残骸と化した!覆っていた妖気は絶え絶えになり、コアになっていたパンダのキーホルダーが、片輪車の中から投げ出されて地面に落ちる!
しかし、ゲンジは手応えを得られず、技の解除と同時に構えた!キーホルダーから闇が発せられ、片輪車が復活をする!
「んんっ!やっぱり、祓えていないっ!」
ゲンジは、直感的に「片輪車」を難敵と感じたからこそ、初手で大技を放った。だが、キーホルダーの念が深すぎて、ウルティマバスターでは妖気を取り除けない。
矢継ぎ早にハリセンを装備して、片輪車に突進して何発も叩くが、清めの力は妖気の表皮の阻まれてコアにまで届かない!ゲンジの闇祓いを煩わしく感じた片輪車は、妖気の炎を発して牽制!弾き飛ばされ、火の巻かれながら地面を転がるゲンジ!
障害物を退けた片輪車は、ゲンジには目もくれずに、好代が退避したザックトレーラーに向かって走り始める!
「好代ハ 僕ダケノ物ダ~~~!」
光る矢が飛んで来て、片輪車の眼前で蜘蛛の巣に変化!片輪車に絡み付いて行動を妨害する!空からセラフ(麻由)を乗せたHAバルミィ降下してきて、地面に着地!バルミィとセラフが、ザックトレーラーを庇うようにして構えた!
「お待たせばるっ!」
「ヌリカベは浄化しました!」
ゲンジは、纏わり付いていた炎を気合いで掻き消す!片輪車は糸を焼き切って、ゲンジ&セラフ&バルミィなど気にせずに、再びザックトレーラーに向かって走り始めた!
「マユっ!コイツ、強くないんだけど、依り代の念が強すぎて浄化できないのっ!
だから、同時に浄化攻撃をするよっ!」
「はいっ!」
先ずは、セラフ(麻由)が梓弓に光の矢を番えて連射!矢は次々と蜘蛛の巣に変化をするが、片輪車は機敏な動きで回避をする!しかし、それは片輪車の突進力を弱め、且つ、一定の方向に誘導する為の作戦だった!片輪車の回避方向を察知したゲンジ(紅葉)が突進!ウルティマバスターで体当たりをして、片輪車を残骸にして弾き飛ばした!
「マユっ!依り代のキーホルダーを浄化してっ!!」
セラフは全壊した片輪車を追っていく!破片を撒き散らせながら宙を舞う片輪車!コアになっていたキーホルダーが、中から投げ出される!手の平に浄化の光を込めたセラフが、キーホルダーをキャッチしようとした、その時!
「好代ハ僕ダケノ物!」 〈パンダちゃんを返して!〉
「好代ハ僕ダケノ物!」 〈パンダちゃんを返して!〉
「えっ!?」
依り代の声と別の声が同時に聞こえて、キーホルダーの闇が増幅!再び片輪車が実体化をしてしまった!片輪車の復活が、先程までより早くなっている!片輪車は全身から炎を発して、セラフを弾き飛ばす!
「きゃぁぁっっっ!!」
地面を転がるセラフを、ゲンジとネメシスとジャンヌがフォローする。HAバルミィが左手甲からレーザーチェーンを発射して、片輪車に巻き付けて足止めをする!
「どうなってんだ!?こんなに早く復活されたら、いつになっても倒せないぞ!」
「妖怪のダメージを即時回復するほどの念が、依り代に注がれているんです」
「それも、直ぐ近くからねっ!」
ゲンジとセラフが、同時にザックトレーラーを見つめる。これまでは単発的にしか感じられなかった「大切なキーホルダーを求める念」を、今は連続的、且つ、ハッキリと感じられる。一度、中途半端に手元に戻ってきた所為で、好代がパンダのキーホルダーを求める念が強くなったのだ。
「倒す方法ゎ、依り代を破壊するか、半田さんをやっつけるっ!」
「さすがに『半田をやっつける』は無いわな」
「私は、依り代の破壊も避けたいです」
「妖怪を破壊して、キーホルダーに戻った瞬間に、
ハンダ嬢が獲得するのではダメなのだろうか?」
「それなら、依り代と半田に思惑が一致して、負の念が晴れそうだな」
「ここまでの暴走体になっちゃうと、ムズいだろね」
「現に、妖怪化した依り代は、半田さんの独占を目論みましたからね」
しばらくは、HAバルミィのチェーンに絡まったまま引っ張り合いをしていた片輪車だったが、全身を闇霧化して拘束から脱出!再び実体化をして、好代が避難中のザックトレーラーに向かって走り出した!
「スキヨォォォォ~~~~~~~~~~!!!」
「おぉぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!!!」
今度は、ジャンヌが、魔力を放出したオラクルフラッグを盾にして、片輪車と正面からぶつかって、突進を押さえ付けた!
「根源が魔力と妖力の違いはあるが、私と似た存在のようだな!」
ジャンヌは力による鬩ぎ合いを続けながら、脳内で真奈をイメージする。
-ザックトレーラーのカーゴ内-
〈マナ!私の意思は感じられますか!?〉
「・・・え?」
真奈にジャンヌの声が聞こえる。「ジャンヌに話し掛けられている?」と見廻すが、カーゴ内にジャンヌの姿は無く、一緒にいる好代はジャンヌの声を認識していない。
〈マナ!私は今、契約による繋がりを通じて、マナの心に語りかけています!〉
「・・・心?」
〈マナも、脳内に、強く私を思い浮かべて下さい!
そうすれば精神感応が繋がります!〉
「テレパシー・・・ってこと?」
直ぐには信じられないが、現実的に、真奈にだけジャンヌの声が聞こえるのだから、否定をする事は出来ない。真奈は、目を閉じて意識を集中し、ジャンヌを強く念じながら心の中で語りかけた。
(ジャンヌさん?これで良い?私の声は聞こえる?)
〈ハンダ嬢はどうしていますか?傍にいますか?〉
(居るけど、それがどうしたの?)
〈おそらく、今のハンダ嬢は、
キーホルダーに対する、何らかの病める感情に支配されています。
マナがサポートをして、健やかなる感情を持たせて下さい〉
(う、うん・・・解った。やってみる)
アドバイスを受けた真奈が、好代の手を握って見つめる。正直言って「健やかな感情」なんて言われても、どうすれば良いのか解らない。だから、真奈なりの「楽しい思い」を好代に伝える事にした。
「好代ちゃんにとって、パンダのキーホルダーはお守りなんだよね?」
「うん、お爺ちゃんとお婆ちゃんがプレゼントしてくれた大切な物。
傍に居てくれると心強いお守り。だから取り戻したい」
「パンダちゃんは、好代ちゃんを守る為に、
2人きりになるのを望んでるみたいだけど、それでいいの?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それとも、パンダちゃんに、頑張って成長する自分を見守って欲しいの?」
「わ、私は・・・見守って欲しい。
この先、友達や好きな人ができるのを、全部見守って欲しい」
「だよね。なら、そう思おうよ。
『パンダちゃん帰ってきて』『一緒に居たい』ばっかりじゃなくて、
『傍で見守って欲しい』ってお願いしようよ。
そうすれば、パンダちゃんは、あんな怖い妖怪じゃなくて、
ちゃんとした姿で戻ってきてくれるよ。」
「う・・・うんっ!」
真奈に諭された好代が、悲しそうな表情を止めて元気にな表情を作り、キーホルダーが変化した怖い妖怪ではなく、ずっと一緒に居た頼もしいお守りのパンダを思い浮かべ、真奈に言われた通り「これからも見守って欲しい」と願う。
-農面道路-
ジャンヌと力による押し合いをしていた片輪車のパワーが、急激に弱まっていく! 健やかなる想いでも、強い想いなら依り代には蓄積される。しかし、正の念は、妖怪が宿にするには居心地が悪いのだ。
「やはりな!」
ジャンヌは、リベンジャーとして召喚された直後は、操られて虚無の真奈を通じて契約者の弁才天ユカリの心が流入していた。ユカリの心は病んだ感情に塗れていた。真奈が精神支配を断ち切った事で、ユカリとの繋がりが切れて、真奈との意識共有が出来るようになった。真奈の心は健やかで希望に満ちていた。
ガーディアン(リベンジャー)は、マスターの心が健やかでも病んでいても、リンクさえされていれば、活動にはあまり影響が無い。だけど、ジャンヌは真奈の健やかな心に癒やされた。真奈との繋がりは心地が良い。
「おそらく・・・そのおかげで、マユユ達を憎むのではなく、認める事ができた!
そしてそれは、妖怪も同じ!
いや・・・負の感情を好む妖怪ならば、私以上に影響を受けるはずだ!」
妖怪が発する闇が弱まっていく!片輪車の中のキーホルダーが、少し寂しそうだが、とても嬉しそうに呟く。
「スキヨ・・・イツノ間ニ 逞シクナッテ・・・。モウ子供ジャナインダネ」
「クーチャン!マユユ!浄化を頼みます!
おぉぉぉぉっっっっっ!!!テュエ・ディユ・セルパンッッ!!!」
奥義のゼロ距離発射!強烈な“光蛇”を喰らって弾き飛ばされる片輪車!牛車の残骸と化して、中からキーホルダーが飛び出してきた!既にハリセンを持ってスタンバイしていたゲンジが、飛ばされたキーホルダーを追う!
健やかなる想いで上書きをされた依り代から、負の念を好む妖怪を剥がすのは容易い!
「りん・びょぅ・とぅ・しゃ・かぃ・ぢん・れっ・ざぃ・ぜんっ!
清めのハリセンアタァ~~~~~ック!!!」
空中でキーホルダーをブッ叩くゲンジ!邪気が取り除かれたキーホルダーは、ハリセンで打たれて軌道を変え、泥で泥濘んだ田んぼへ落ちていく!このままでは、パンダのヌイグルミキーホルダーが、泥だらけになってしまう!
「あっ!やべっ!!」
「アホンダラ!格好ばっか付けてないで、後の事も考えろってんだ!!」
キーホルダーを追ってヘッドスライディングをするネメシス!どうにかキーホルダーのキャッチには成功するが、自身は田んぼの泥濘に顔面から突っ込んだ!
「このバカっ!
何で、あたしが2回も田んぼにダイビングしなきゃならないんだよ!
こ~ゆ~汚れは、あたしの担当じゃなくて、紅葉の役割のハズだ!」
「ふぇ~~~~~・・・・ごめ~~~~ん」
ネメシスは、田んぼから上がって、ゲンジの頭をゲンコツでブッ叩き、キーホルダーを差し出した。
「んぉ?」
「親切はガラじゃない。オマエが持ち主に届けてやれ」
「んっ!ワカッタ!」
変身を解除した紅葉が、キーホルダーを受け取って、好代が居るザックトレーラーに駆け寄っていく。
キーホルダーは返却され、好代は、依頼をクリアしてくれた真奈と、愉怪な仲間達に礼を言う。真奈は「自分は何も出来なかった」と少し恥ずかしそうだが、気付いたジャンヌが言葉を掛ける。続けて、戦いながら状況を把握していた紅葉と麻由も声を掛けてくれる。
「マスターがハンダ嬢を健やかにしてくれたゆえの勝利です」
「えっ?そうなの?」
「はい、真奈さんのおかげで、妖怪は急激に弱体化をしました」
「んっ!マナのお手柄だねっ!」
美穂とバルミィは、何となく察して真奈に向かって微笑んだ。真奈としては、皆や、憧れの美穂に認めてもらえた事が嬉しい。皆をグルリと眺めて、満面の笑みを浮かべた。
「えへへっ!そうなんだね!」
成り行きでジャンヌのマスターになってしまったけど、自分は何をすれば良いのか解らなかった。ずっと、ジャンヌのオマケみたいな気分になっていた。だけど、ジャンヌと繋がる事で、自分にも出来ることが有ると知った。これまでは、ジャンヌの事を少し面倒臭く感じていたけど、今は頼もしく思える。
「これからもよろしくね、ジャンヌさん」
「もちろんだ、マナ」
真奈の笑顔に、ジャンヌが笑顔で返す。ジャンヌには、真奈の希望に満ちた感情との繋がりが、とても心地が良い。
-翌日の朝・優麗高の正門-
「おはよ~!昨日はありがとうっ!」
「ちーっす!」 「うぃっす」 「おはよう、好代ちゃん」
紅葉&美穂&真奈が登校をしていたら、正面から自転車に乗った好代が、手を振りながら寄ってくる。自転車籠に突っ込まれた鞄には、パンダのキーホルダーがシッカリと取り付けられている。
「もう無くさないでね」
「うんっ、絶対に無くさないよ!私の大切なお守りだもん!」
キーホルダーに隠っていた17年分の想いは、清めのハリセンによって全て浄化をされた。そうしなければ妖怪を屈服させる事は出来なかった。今のキーホルダーはゼロの状態なのだ。
しかし、大丈夫。好代が大切にしている限り、新たなる想いがキーホルダーに宿り、好代を見守ってくれるだろう。
「紅葉ちゃん、手を繋ごう!」
「んへぇ?」
「オマエ(真奈)、百合になったのか?」
「違いますよ!美穂さんも、手を繋ごう!」
「うへぇっ!なんだ急に?」
真奈は、やや強引に紅葉&美穂の手を握る。
「紅葉ちゃん、お腹減ったって思ってるでしょ?
美穂さんは、私のことを可愛いって思ってますよね?」
「んぁっ?今日ゎ朝ご飯をちゃんと食べてきたから、今ゎお腹減ってないょっ!」
「思ってね~よ!むしろ、朝から気持ち悪っって思ってる!」
「あっれぇ~・・・おっかしいなぁ~」
真奈は、紅葉&美穂に触れて、何となく思い付いたことを言葉にしたが、外れていた。2人の思ってることが、心に流入してこない。それが当たり前なんだけど、なら、昨日、好代の心を読んだり、一昨日、センキチの気持ちが聞こえたのは何だったんだろう?
「やっぱ、ただの気のせい・・・かな?」
契約で繋がっているジャンヌはともかく、触れただけでアカの他人の気持ちが読めるわけが無い。ジャンヌとの関係が特別なだけ。真奈は、そう解釈をして、いつも通りのに正門を通過した。




