27-3・紅葉と雛子~ヌリカベ退治~心の声
ジャンヌにしがみついたまま、背後を振り返る真奈。堤防の上の駆け上がってきた紅葉&美穂&麻由、空から接近してくるバルミィが見える。さらに、まだ離れていて見えないが、サイレンの音が近付いているのも聞こえる。ヌリカベは紅葉達に任せれば何とかなりそうだ。
「んぁっ!?片輪車が飛んで行っちゃった!」
「マズいわね!どうします!?」
現地に到着した紅葉と麻由は、悔しそうに東の空を眺め、美穂は、河川敷に立つヌリカベと、空を駆けていく片輪車&ジャンヌ達を交互に確認した。
「麻由っ、壁の妖怪はオマエに任せるぞ!」
「はいっ!美穂さん達は片輪車を!?」
「ジャンヌだけじゃ祓えないからな!
あたしと紅葉は、夏沢さん達に乗せてもらって、もう一匹を追う!」
「うぃっす!」
「バルミィは、オマエの方に残していくから、
麻由は、壁妖怪を倒し次第、あたし達に合流してくれ!」
十数秒の後にバルミィが合流をしてきた。
「あたしと紅葉をザックトレーラまで送ってくれ!」
「ばるっ!?」
「あたし達はもう一匹を追う!
こき使って悪いけど、バルミィは、あたし達を送ったら、麻由の援護を頼む!」
「了解ばるっ!」
美穂と紅葉を背に乗せたバルミィが、サイレンの鳴る方向へ飛び立つ。3人を見送った麻由は、ヌリカベに向き直ってHスマホを翳した!
「幻装っ!」
聖幻ファイターセラフ登場!静薙刀を装備して、ヌリカベに突進をしていく!
一方の美穂は、バルミィの背に跨がったまま、スマホを取り出して真奈に連絡をする。
〈美穂さん、どうしたんですか?〉
「『どうした』じゃね~よ!勝手に動き回りやがって!
あたしと紅葉は、出来るだけ早くオマエ達に合流をする!
ジャンヌに、ひとけが無い適当な広い場所で妖怪を落とすように伝えてくれ!」
〈半田さんが捕まっているので落とせません!〉
「助ける方法と、落とす手段は、オマエとジャンヌで考えてくれ!」
〈わ、解りました!〉
「それから、合流までのタイムラグを少なくしたいから、
ジャンヌが妖怪を落とすまで、2~3分ごとに現在地を送信してくれ!」
真下の道路をザックトレーラーが走ってくる。バルミィは、ゆっくりと高度を下げて、紅葉&美穂を地上に降ろしてから、ザックトレーラーの運転手に「止まれ」と合図をした。運転手が紅葉に気付いてブレーキを踏み、助手席に居た雛子が「何事か?」と顔を出す。
「桐藤さんと源川さん?何でこんな所に?」
「片輪車が、川の向こうに行ってしまったんです!」
「ヒナコも妖怪を追っ掛けるんだよね?ァタシも乗せてってくんない?」
「おいおい、紅葉・・・いきなりフレンドリーだな」
雛子は、紅葉達の協力を得つつ彼女達の安全を確保したいので、一定の理解をする。
「仕方ないわね!乗りなさいっ!
ただし、ここではダメ。
一般人にしか見えない貴女達を機密車輌に乗せるには、人目がありすぎるわ。
この先の、河川敷側に曲がる路地で待つから、そこまで来て!」
「んっ!サンキューですっ!
「バルミィ、麻由のサポート頼むぞ!」
「了解ばるっ!」
ザックトレーラーは再び走り出し、紅葉と美穂は後を追い、見送ったバルミィはセラフ(麻由)が戦っている戦場に向かって飛び立つ。
紅葉達が、しばらく走って路地に入ると、ザックトレーラーが路肩に停車して待っていてくれたので飛び乗った。
「お待たせっ!ヒナコ!」
「私は歳上よ!呼び捨てはやめなさい!」
「んぁ?歳?そんなに変わんないでしょ?
ミホだって、歳上だけど、呼び捨てOKだよっ!」
「私は25歳!貴女とは8~9歳離れているの!」
「ふぅ~ん・・・そか!大して変わらないねっ、ヒナコ!
見た目も、ァタシ達と変わらないし、呼び捨てでダイジョーブだね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま・・・まぁ・・・そ・・・そうね」
「おいおい・・・夏沢さんが、紅葉のバカに抱き込まれてんぜ」
呼び捨ては、ちょっとイラッとする夏沢雛子だが、「女子高生と歳が大して変わらない」「見た目も変わらない」と言われると嫌な気分はしないので、「呼び捨てでも良いか」と思えてしまう。美穂を理詰めで論破できる雛子が、理屈抜きの紅葉に論破されてしまった。
ザックトレーラーがサイレンを鳴らしながら、川東に向かって走り出す。
-川東の空-
マスクドジャンヌと真奈が乗るユニコーンが空を駆ける。片輪車の飛行能力が低かった為に簡単に追い付けた。
「どうしよう、ジャンヌさん?」
「この先に見える田園に落としましょう!」
真奈はスマホの地図アプリを開いて確認して、位置情報を美穂に送る。
「でも、その前に半田さんを助けなきゃ!」
「無論、そのつもりです!」
ジャンヌは、左手でユニコーンの手綱を維持したまま、右手でベルトの小さな鞘から3本のナイフを抜いて気合いを込める。
「とぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!」
一斉に投擲!1つ1つに意思があるかのように、不規則に軌道を変えて飛び回り、2本が片輪車の車輪に突き刺さる!ダメージを受けた片輪車の飛行速度が落ちた!ジャンヌは、更に3本のナイフを投擲してから、片輪車に追い付いてユニコーンを並走させる!
「半田さんっ!」
真奈が助けを求めて手を伸ばす好代を掴んだ!そのまま力任せに引っ張るが、好代は片輪車に掴まれているので、脱出ができない!そこへ、ナイフ1本が飛んで来て、片輪車の背中に突き刺さる!悲鳴を上げる片輪車!好代を掴んでいる力が緩んだ隙に、真奈が引っ張って片輪車から脱出させる!片輪車は、好代を奪い返そうとして襲いかかってくるが、残る3本のナイフが飛んで来て、片輪車に突き刺さる!
「マナ!友人!すまないが、そのまま凌いでください!
特に、マナは“軽い返事に重い尻”ゆえに、
バランスを崩さぬように気を付けてっ!」
「こんな切羽詰まった状況でなんなんだけど、
“軽い返事に重い尻”ってゆ~のは、お尻が大きいって意味じゃなくて、
簡単に引き受けて、なかなか実行しないって意味だよ!
ジャンヌさんは私をバカにしているの!?」
ジャンヌはユニコーンの進行方向を田園に向けて、低速で空を駆ける!好代が真奈にしがみつき、真奈が好代を抱きかかえている状態なので、高速移動はできないが、それはダメージを受けている片輪車も同じ!予定通り、田園の真上の来たところで、追ってきた片輪車の方にユニコーンの向き変えて、オラクルフラッグを召喚!両手で持って、尖端で片輪車を狙い魔力を込める!
「テュエ・ディユ・セルパンッッ!!!」
オラクルフラッグから光蛇が発せられ、片輪車に直撃!弾き飛ばされた片輪車は、不気味な悲鳴を上げながら田園に落ちていく!
-川西の河川敷-
「やぁぁぁっっ!!」
セラフ(麻由)が振り抜いた小太刀から、カマイタチの真空波が発生!ヌリカベに炸裂するが、ヌリカベの防御力が高く、2~3歩後退させただけでダメージが通らない!
「カベカベ~~~!半田サンガ 欲シイ~~~~~~!!!オマエ邪魔!!!」
しかし、その後退させるのがセラフ&HAバルミィの作戦だった!タイミングを図っていたバルミィが、ヌリカベの背後の地面目掛けて光弾を発射!抉られた地面に足を掬われたヌリカベは、仰向けに転倒した!
「麻由っ!今、ばるっ!」
「女の子の気持ちを考えない、一方的な好意の押しつけは許せません!」
セラフが放った矢がヌリカベの真上で巨大な曼荼羅に変化!理力の雨が降り注いでヌリカベが浄化され、依り代の姿が現れた!
-伊那佐久町の田園地帯-
ユニコーンで地上に降りて、真奈と好代を庇うようにして構えるマスクドジャンヌ。30mほど先では、片輪車が起き上がって体勢を立て直す。全身を覆う闇によってダメージが回復をしてしまった。
「やはり、クーチャンかマユユが来なければ倒せないか!」
サイレン音が近付いてきたので真奈が振り返ると、ザックトレーラーが見える。
「マスターは、友人をザックトレーラーとやらに避難させて下さい!」
「ジャンヌさんは!?」
「無論、妖怪を足止めします!」
オラクルフラッグを構えて、片輪車に突進をしていくジャンヌ!真奈は、好代を伴ってザックトレーラーに向かって逃げようとするが、好代は立ち止まったまま片輪車を見つめ、寂しそうに独り言を呟く。
「なんで・・・私のパンダちゃんが、あんな怪物に?」
「半田さんっ!アイツは、半田さんを狙ってるの!ここは危険だから逃げるよ!」
「う、うん」
真奈に声を掛けられた好代が頷く。好代の腕を握って駆け出す真奈!
〈私の大切なパンダちゃんを返して・・・〉
「!!!?」
〈私の大切なパンダちゃんを返して・・・〉
「えっ!?」
〈私の大切なパンダちゃんを返して・・・〉
真奈に、好代の寂しそうな声が聞こえる。走りながら好代を見つめるが、好代は口を開いていない。寂しそうな顔をして懸命に走っている。最初は空耳かと思ったが違う。真奈には、好代の寂しそうな声が、何度も聞こえる。よく解らないが、耳ではなく、触れている好代の腕を通して、真奈の心に伝わってくる。
「なにこれ?私・・・どうなっているの?」
ザックトルーパーが停車をして、ザック部隊×2と紅葉&美穂がカーゴから飛び降りて片輪車に向かって駆けていく!
だが、片輪車の眼中には好代しか映っていない!雄叫びを上げて高速で飛び、強大な闇を発してジャンヌを弾き飛ばし、先行するザック達を弾き飛ばし、好代の背に向かって手を伸ばす!
「んぁぁっっっっっっっっっっっ!!させないっ!!」
片輪車の斜め前に、紅葉が生身のまま飛び込んだ!そして、妖気を纏った腕で、片輪車にラリアートを炸裂させる!弾き飛ばすことは出来なかったが、好代への接触を妨害するのは成功した!紅葉の、この一連の行動には、一緒にいた美穂も驚く。
「生身のままで攻撃かよ!?だんだんと人間離れしてきたな、おい!」
紅葉は、生身のままでも、感情次第で攻撃的妖気を発揮できる。ただし、変身しないとプロテクターが無いので、ラリアートをした腕は痛い。
「イテててててっ!」
「ったくっ!ちっとは考えてから行動しろっ!タラズっ!」
「んぁっ!ちょっとヤバい奴だから、つい・・・」
「そんなにヤバいのか!?」
片輪車の依り代に蓄積された念は、昨日今日に育った物ではない。好代が生まれてからの17年間、祖父母が好代に注いだ愛情と、好代が祖父母を慕った愛情が蓄積された物が暴走している。つまり、簡単に好代を諦めてくれる状況ではない。それに、昨日、麻由が言った「依り代とは別の、依り代を求める声」も気になる。
「相手がどんなヤツでも関係無い!やるぞっ、紅葉!」
戦場で迷っている余裕は無い。好代がザックトレーラーのカーゴに保護されて、こちらを目視できなくなったことを確認してから、変身アイテムを翳す。妖幻ファイターゲンジ&異獣サマナーネメシス登場。
ゲンジとネメシス、そして片輪車を挟んで反対側に居たジャンヌが、一斉に片輪車に突進をする!




