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2年生編①・海跳と石松の出会~1年の葛城麻由

 冨久海跳ふく かいと。容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能、同性の友達が多く、異性からも信頼されている。彼の悪口は聞いたことが無い。天才という言葉は彼のような人物の為にあるのかもしれない。

 2年生の平山亜美(紅葉の幼馴染み)や、3年生の田村環奈(第5話登場)、他、彼が初恋だった女生徒は多数。高校に入ってからは、他校出身の半田好代(第26話登場)なども彼に憧れている。

 文架東中時代から成績はトップクラスで「市内№1の進学校・文架高校への合格は間違い無い」と評判だったが、「高校に行っても仲間達と共に野球に打ち込みたい」という理由で、市内の公立高で野球が一番強い優麗高に進学をして、周囲を驚かせた。

 一年時の夏頃からは、「3年時の生徒会長は海跳しかいない!」と周りに推され、先輩方からも数多引かれ、3年生が生徒会を引退する1年時の秋には、生徒会の副会長に着任をした。


 そんな彼が、2年生に進級をした春から、この思い出話は始まる。


 今日も、昼休みに、同学年の女子から体育館裏に呼び出されて手紙を渡された。いつもの癖で前髪を整えて、メガネを指で上げ、涼やかな笑みを浮かべて受け取り、「サンキュ」と礼を言う。内心は「面倒臭い」と感じているが、そんな表情は少しも見せない。手紙の返事はいつも「応援してくれてありがとう。でもゴメン。今は野球に打ち込みたいから、他のことを考えている余裕が無い」で決まっている。あとは、もらった手紙の内容に合わせて、当たり障りの無い回答をする。

 女生徒を見送って踵を返すと、見慣れた巨体が隠れてこっちを見ている。海跳は「また見に来たのか、暇人め」と溜息をついた。


「英邦、オマエ、僕の監視以外にすること無いのかよ?」

「優麗高始まって以来ん天才て言わるる親友が、一体どぎゃん子と付き合うんか?

 興味があって当然やろう!」

「誰とも付き合わないよっ!」

「ありゃ?また断っとか?結構むぞらしか子なんに、勿体なか」

「まだチョット、恋愛に現を抜かす気にはなれなくてね」


 巨体の名は石松英邦。「親友」扱いに「知り合って何日だよ?親友じゃね~よ!」とツッコミを入れたいが、あえて聞き流す。英邦は、この春に熊本の高校から転入してきたばかり。海跳はA組で、英邦はC組。海跳は野球部で、英邦は相撲部。卒業後は公立4大に進学するつもりの海跳と、卒業後は相撲部屋に入門するつもりの英邦。全く接点は無いのだが、2人は妙にウマが合う。




-数日前-


 転入の翌日、英邦は、手っ取り早く馴染む為に、優麗高の番長とタイマンをするつもりだったのだが、優麗高に番長なんて存在しなかった。皆が口々に言うのは「同学年のトップは冨久海跳だ」という評判だったので、その「冨久」とやらを呼び出してシメて、名を上げるつもりだった・・・が。


「あいてててっ!

 ・・・ったく、冗談じゃないよ!

 なんで、転入生の友達作りのために、僕が絡まれなきゃならないんだ?」

「す、すまん・・・」

「『すまん』じゃないよ!

 友達が欲しいなら、素直にそう言え、このたわけものっ!」


 英邦の惨敗だった。校舎の壁に背を凭れかけて座る海跳と、大の字の倒れている英邦。英邦の拳は、不意打ちの一発目が頬にヒットして海跳のメガネを飛ばしたのみ。二発目以降が大きく空振りをして、海跳の一発目の拳を鼻に喰らって戦意が喪失して、二発目を顎に喰らってダウンをした。


「おんし・・・喧嘩強いのう?」

「僕は喧嘩なんてしたつもりは無い。絡まれるのが面倒で、あしらっただけ。

 中学の時にさ、友達に喧嘩の強い奴がいて、

 最小限の手数で相手を戦意喪失させて、喧嘩をせずに済む方法を教わったんだ。

 たいていは、相手がナメてくれてるうちに、

 鼻をへし折るつもりで一発入れれば、喧嘩は終わるらしい。

 君の場合は、鼻だけじゃダウンしなかったから、顎も叩いたけどな」

「・・・・・つ、つぎは負けないぞん」

「前の熊本の学校じゃどうだったのか解らないけど、

 この学校じゃ、喧嘩なんて強くても自慢にはならない。

 それに、これでも甲子園を目指しているんでね、『次』はお断りだ。

 友達ってなら、なっても良いけど」

「ぬぐぐっ・・・なら・・・そっちの方向で」


 以降、2人は一緒に居る機会が増えた。正確には、英邦が一方的に寄ってくるのだが、海跳も英邦の朗らかさを気に入っている。「優麗高始まって以来の天才」と」前の学校ではちょいワル」の意外な組合せは、あっという間に校内で注目の的になった。




-今に至る-


「新入生に結構可愛い子が入ってるとね。

 クラスの連中が『今年は豊作』って言っておったばい!」

「へぇ?そうなんだ?」

「豊作の中でも、東中の源川って娘と、北中の葛城って娘がダントツって話ばい。

 海跳は興味のある娘はおらんのかい?」

「東の源川?

 そういや、中学の時の一学年下にそんな名前の有名なジャジャ馬が居たっけな?

 へぇ、優麗高に来たんだ?でも、あんまり興味ないなぁ。

 北中のナントカって娘は知らない。

 野球が強い一年坊なら興味あるけどさっ。オマエ、相撲辞めて野球やらない?

 足は頼りにならないだろうけど、動体視力ありそうだし、肩強そうだし、

 強打者やキャッチャーなら務まりそうだ」

「お断りや!相撲ばする為に、相撲部があるこん高校ば選んだんやけんな!」


 そろそろ、昼休みが終わる時間だ。海跳と英邦は並んで校舎に戻っていった。

 一階にある1年生の教室を繋ぐ廊下から、「ふにゃぁぁっっっっっっっっ!!」と甲高い奇声が聞こえてくる。海跳は、この“超音波”は聞き覚えがある。東中時代にも何度か聞いた。超音波の発信元の顔を見なくても想像できる。多分、下級生の源川だろう。「優麗高に入学した」のは事実らしい。ただし、全く興味は無い。




-1階廊下-


「わぁぁっっ!突然どうしたの、クレハ!」

「アミ、いま、見た?外、見た?」

「・・・み、見たけどっ」

「にぃ~ひっひっひ!アミが好きだった冨久センパイがいたっ!」

「私は、好きとかそう言うのじゃなくて、

 冨久先輩にチョット憧れていただけだよっ!」


 海跳から「有名なジャジャ馬」と評されたツインテールのチビッコと、赤面をする温和しそうな友達。入学したばかりの「火の玉娘」の伝説は、まだ始まっていない。




-数日後の放課後・生徒会室-


 各クラスの委員が決まり名簿ができたので、生徒会役員達に配られた。生徒会長を含め、海跳以外の男子役員達が色めいている。話題の中心は1年A組の評議委員だ。北中の葛城麻由。中学時代は2年間、生徒会執行部に従事しており、その仕事ぶりは高く評価されて評議委員(学級委員)に選ばれたらしい。しかも、新入生トップ2美少女の一角って噂だ。


「あ~~・・・そういや、英邦が、北中の葛城がどうとかって言ってたっけ?」

「なに、オマエ、1Aの葛城、知らないの?」

「興味ない」

「相変わらずだな~。

 今年の優麗高人気投票№1は、男子がオマエで、

 女子は1年の源川か葛城で決まりだと思うぜ」

「どうでもイイ!仮に選ばれても、表彰式に出る気無い!」

「人気№1同士ってのがキッカケで付き合ったカップル、結構いるんだぜ」

「バカバカしい。女の子に使う労力や時間なんて、僕には必要無いよ」


 海跳は他の役員からの嫉妬を聞き流して溜息をつく。名簿を確認してメンバーを品評する以外にやる事が無いなら、早く解散をしてもらって部活動に参加したい。

 噂の「葛城なんちゃら」が評議委員になったからって、皆、何がそんなに嬉しいのだろうか?生徒会役員と絡むのは、せいぜいで執行部と各委員長だけ。ヒラの評議委員の、しかも1年生と絡む事など、ほぼ無いだろう。噂の「葛城」が学年委員(各学年の評議員の代表)にでもなれば、顔合わせの機会くらいはあるのかな?




-更に数日後・生徒総会(体育館)-


「こんな時代錯誤で無駄な労力、中止にしてもらいたいです!」


 ステージ上で事務的な大声が上がる。今は、生徒会規則、及び、その他行事の運営に対して、質問を受け付ける時間帯だ。たいていの場合は「何か質問はありませんか?」「シーン」「ありませんね」で、質問コーナーは終わるのだが、今回は違った。1年生の女子が挙手をしてステージに上がり、「優麗高生・人気投票は何の為に実施するのか?」と質問をしたのだ。文化祭実行委員長が「毎年やっているから」と回答したら、質問をした女子は即座に上記の言葉で噛み付いた。


「ジェンダー軽視!選ばれたら迷惑、票が入らなくて傷付く人もいます!

 こんなイベント、無意味どころか弊害しかありません!」


 ステージ脇の生徒会役員席にいた海跳は、ステージ上で声を荒げている1年女子を見つめている。発議者が一票も入る可能性の無い生徒なら、まだ話が解る。だが、ステージ上の女子は、確実に何票も獲得するであろう美しい顔立ちをしている。

 票を得られない生徒の意見では嫉妬だが、美少女が言うからこそ説得力があると言うべきか?


「へぇ・・・合理的だな」


 彼女の意見には同調できる。今まで「人気投票を迷惑」とは感じていたが、表彰式を辞退して逃げるだけで、廃止にする発想は無かった。

 対照的に他の生徒会役員達は動揺でザワついている。


「おいおい、今年の優勝候補が人気投票の全否定かよ?」

「まいったな、こりゃ」

「ん?何の話ですか?」

「何だ、冨久、知らないのか?彼女が今年の優勝候補なんだよ!」

「そうなんですか?確かに芸能人でも通じそうな可愛い子ですね。

 でも、僕は、彼女の言い分が理解出来ますよ」

「おいおい、オマエまでそんな事をっ!」


 ステージ上の彼女が、噂の「葛城なんちゃら」らしい。1年生なのに随分と度胸がある。納得できないうちは、一歩も引く気は無さそうだ。3年生の文化祭実行委員長の方が「毎年恒例の行事だから」以外には答えられず、しどろもどろとしている。

 結局、15分近い満足な答えの無い質疑回答の後、「この件は、後日、役員会で話し合う」「文化祭実行委員長と質疑者も出席をしてください」とアナウンスされて、保留扱いで終了となった。


 冨久海跳が、噂の彼女を“1年A組の葛城麻由”と認識するのは、後日の役員会と時になる。




-放課後・生徒会室-


 優麗高の生徒会は、生徒会会長、生徒会副会長(3年1名、2年1名)、書記長、書記(2人)、会計長、会計(2人)、庶務長、庶務(2人)の、計12人の幹部から成り立っている。


「やれやれ、まいったよ~。いきなり、優高名物の人気投票を全否定だもんな~」

「役員会審議か~・・・面倒臭いなぁ」

「可愛いけど、ちょっと面倒臭い子だな」

「確か、生徒会長と同じ弓道部っすよね?部活の時も、あんな感じなんですか?」

「いや、生真面目で融通が利かないところはあるけど、

 もう少し可愛げがあると思ってた」


 海跳が顔を出すと、生徒会室内の話題は葛城麻由の批評で一色だった。女子役員達ですら、「新入生が意見した事」に驚いている。

 弓道部に所属している生徒会長が3階の窓から外を眺めたら、「噂をすれば何とやら」と言うべきか、今はまだ基礎体力作りが中心の新入部員達が学校の外周をランニングしている。その中には、汗を流す葛城麻由の姿もある。生徒会長の「あ!葛城だ!」という言葉につられて、他の生徒会役員達もランニング中の弓道部員達を眺めた。


「上手いんですか?」

「新入生はまだ自前の弓は持ってなくて、試射をしただけなんだけどさ、

 葛城は上手さも集中力も、他の奴等に比べて頭一つ飛び抜けてる印象だ。

 新人戦の頃(秋)には、上級生を差し置いて部内の戦力になるかもな」


 弓道部の新入部員ランニング群は、明確に2種類に分かれている。真面目に走るグループと、遅れて怠そうに走るグループ。中学時代から真面目にスポーツに取り組んでいた部員達が先頭を走り、麻由はその一団に懸命に付いていく。所定の周回を終えて正門前でゴールした先頭グループは肩で息をしながら校庭内に入り、タオルで汗を拭い、次のトレーニング(筋トレ)をする為に弓道場に歩いて行った。

 遠目に見た印象では、葛城麻由は「生意気で場違いな1年生」には見えない。


「人気投票廃止の事、海跳はどう思った?」

「ちょっと、面白かったですね。

 でも、ずっと続けてきたイベントを急に廃止ってのは些か無謀かと思います」

「だよね。1年生であんな事を言ってたら先が思いやられるね」

「僕もそう思います。

 イヤなら、投票をしないとか、表彰式に行かないとかして、

 参加しなきゃ良いんですよ」

「オマエらしい意見だな」


 去年(1年時)の海跳は、投票は「興味が無い」と棄権して、人気トップ3に選ばれたが表彰式には参加しなかった。今年は、人気№1と前評判を立てられているが、もし選ばれても表彰式には行く気は無いし、もちろん投票は棄権をするつもりだ。


「僕がそういうのが苦手ってだけで、

 わざわざ、先輩方の伝統を否定する気はありませんよ」

「だよなぁ~。全否定は極端だよ」


 本日の生徒会のお題は、総会後の反省会と、人気投票廃止案の臨時役員会について。日程調整をして「週明けの月曜日に臨時役員会を開催する」「明日中に発案者(麻由)と担当(文化祭実行委員長)に日程を通知する」を決めて解散となった。


 冨久海跳は、パラレルワールドになる『妖幻ファイターザムシード』の第29話~第30話に登場したゲストキャラと同一人物。ただし、絡むキャラが変化をしているので展開も変わります。

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