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31-4・ネメシスヴァルカン~試験終了

 セラフ(麻由)が作っている川面の歪みが大きく揺れて、オーク×3匹が出現!エリス(鏡像の美穂)は「援軍が来た」と一瞬喜ぶが、立て続けにHAバルミィとラピュセル(ジャンヌ+真奈)が出現をして、それぞれが光弾とノイエ・ペティ・ディアブル(黒炎の小悪魔達)を放って、オークに着弾させて足止めをする!そして、川面の歪みが一際大きく波打って、翼を広げた冥鳥が出現!


「んぁぁぁっっっっっっっっっ!!!逃げるなコラァァッッッッ!!!

 ウルティマバスタァァッッッッ!!!!」


 上空まで上がって旋回して急下降!3匹のオークを押し潰した!悲鳴を上げ、木っ端微塵に吹っ飛ぶオーク達!冥鳥落下の中心から、ゲンジ(紅葉)が現れた!


「んっ!これでザコゎ全部やっつけたよ!!」

「紅葉、ミーメさん、真奈さん、ジャンヌ、お疲れ様です!」

「もう、出入口は解除して良いばるよ!」

「マユユ!犬馬の労、お疲れ様でした!」

〈ジャンヌさん、『犬馬の労』って、君主のために全力を尽くすことをだよ!」


 マスクの下で憎々しい表情をして、ゲンジ達を睨み付けるエリス!その視界を塞ぐようにして、ネメシス(美穂)が立つ!


「何処を見てるんだよ?オマエの相手は、あたしだ!」

「チィッ!」

「安心しろ!大サービスで、紅葉達には手を出させない!サシの勝負だ!

 『集団で勝つのはズルい』なんて言い訳はされたくないからな!」

「フン!余裕ぶりやがって!ムカ付く!」


 ネメシスが、ゲンジ達を制して「下がって見てろ」と指示を出す。ゲンジ達は、やや不満に感じつつ、言われた通りに下がって変身を解除して、ネメシスとエリスの睨み合いを見守る。

 エリスは、口では悪態をついているが、内心ではネメシスの甘さをほくそ笑んでいた。ネメシスは自分だから解る。恩着せがましい言い方をしているが、前回の戦いで手も足も出ずに敗れたのが悔しいのだ。土壇場でプライドを優先させて“決定的な勝つ条件”を放棄してくれた。


「その自信の根拠は‘ヴァルカン’だろ!?」

「やっぱ、バレてたか?」


 ローブの男=バルドルは「ヴァルカンを使えば、後戻りが出来なくなる」と言っていた。少し戸惑いはある。だから、自分のアパートでは真次郎の遺品の封筒を空けるのを躊躇った。

 だけど、アナザービーストだけではなく、妖怪に、天界人に、宇宙人に、リベンジャー。様々な戦いに首を突っ込んで、とっくに後戻りは出来なくなってる。今更「後戻りが出来ない」が1つ増えたところで、どうって事は無い。


「迷う意味なんて無い!腹は括っている!」


 ネメシス(美穂)は、エリスを睨みつけながらサマナーホルダに手を伸ばし、ヴァルカンのカードを抜いて川面に向けた。

 周囲に真紅の炎が上がり、ネメシスを包む!そして炎が弾け飛び、白が基調で所々に赤いアクセントがあり、プロテクターと装飾が大きく派手になったネメシス・ヴァルカン(以後、ネメシスV)が出現!


 同時に、エリスがエリス・ネプトゥー(以後、エリスN)に変化!ネプトゥーハルバード(以後、Nハルバード)を装備して、先端から冷気の塊を発する!

 ネメシスVが装備したヴァルカンハルバード(以後、Vハルバード)の両先端から炎が発せられる!同時に駆け寄り、刃と刃が交わって火花が散り、炎と冷気が相殺される!


「へぇ・・・ヴァルカンもいいね!

 ・・・融合して、2枚の神のカードを使い分けるのも有りだな」


 数歩後退したエリスNが、ハルバードを振るって吹雪を発生させた!ネメシスVは吹雪を堪えつつ、エリスNに向けてVハルバード先端の炎を飛ばす!しかし、エリスNは楽々と回避して、火炎弾は足元や背後で爆発する!


(なるほど、同じようなハルバードでも、あっちは拡散攻撃。

 こっちは威力あるけど連射に劣るって事か)


 ハルバードから火炎弾を撃ち出すネメシスV!エリスNは、素早いフットワークで避け続け、時折、吹雪で牽制!回避をされた火炎弾が、エリスNの背後の地面に着弾をして土砂が捲れ上がる!互いに決め手に欠くと判断したネメシスVは、Vハルバードを手放し、ヴァルカンシールドとヴァルカンレイピアを装備してエリスNに突進!エリスNが発する吹雪を、炎の力を宿したシールドに身を隠して防ぎ、一気に間合いを詰める!


「フン!だったらこっちもっ!」


 エリスNも、ハルバードを手放して、ネプトゥーシールドとネプトゥーレイピアを装備して応戦!炎を宿したレイピアと、氷を宿したレイピアがぶつかる!炎と氷が特殊効果を打ち消し合い、力による押し合いは互角に見えた!


「オマエは初戦で調子に乗って手の内を見せすぎた!」

「それがどうした!?攻撃力が互角になっただけだろうに!」

「あたしは、オマエのネプトゥーを一度見ている!

 そして、オマエはあたしのヴァルカンを初見!

 互角だからこそ、その差がデカいんだ!」


 ネメシスVは、シールドをエリスNに押し付けて、力任せに押し込んだ!シールドアタック想定をしていなかったエリスNは、力負けをして一歩後退!次の瞬間、火炎弾によって背後に穿たれた穴に足を取られて、後ろ向きに転倒をした!


「なにぃっっ!?」


 素早く一歩踏み込んだネメシスVが、レイピアの切っ先をエリスNの首筋に突き付ける!


「さっきの火炎弾は、オマエではなく、オマエの背後を狙ったんだ!

 拡散攻撃の‘吹雪’しか使えないオマエでは、出来ない攻撃だろうに!」

「・・・くっ!」

「このままトドメって言いたいけど、前の戦いでは、散々、手加減されたからな。

 こっちにもプライドがある!1回だけは、見逃して仕切り直してやるよ!

 ・・・これで、チャラだ!」


 ネメシスVは、レイピアを引っ込め、数歩後退して、手を前に出して人差し指を「チョイチョイ」と動かして「掛かってこい」挑発する!エリスNは苛立ちながら立ち上がって構えた!


「ムカ付く!!その、余計なプライドに足元を掬われるって事を教えてやるよ!」


 エリスVは、サマナーホルダから黒鳥が描かれたカードを抜いて翳す!進化をした黒鳥モンスター・ネプトゥースワンが出現して、エリスNの頭上で飛び回る!


「大技で逆転狙いか!」


 ネメシスVも白鳥が描かれたカードを翳す!白鳥モンスター・キグナスターが出現して、その表皮がめくれるように剥がれて身体が一回り大きくなり、羽が真紅のヴァルカンキグナスに変形した!

 ネメシスVとエリスNは同時に召喚モンスターに飛び乗り、白鳥と黒鳥のモンスターは同時に地上に降りてバイクに変形!

 エリスNは、スワンバイクを走らせながら、周りに無数の氷の刃を出現させ、ネメシスVに向けて飛ばす!ネメシスVは、キグナスバイクを発進させて氷の刃を回避!


「なんだなんだ?真っ向勝負をせずに回避かよ?」


 エリスNはマスクの下で笑みを浮かべ、スワンバイクから氷の刃を発して撃ち出しながら、ネメシスVが駆るキグナスバイクを追走する!ネメシスVは、バイクの進路を左右に振って回避をするので精一杯だ!


「あっはっは、バーカ!

 いくら、力が互角になっても、使いこなせなきゃ意味が無いね!

 オマエのヴァルカンなんて、所詮は付焼刃なんだよっ!」


 ネメシスVの背後を取って「有利」と判断したエリスNは、一気に決着を付けるべく、今まで以上の氷の刃を出現させて回避不能なほどに乱れ打った!

 だが、ネメシスVは、逃げるフリをしながら、これを待っていた!ブレーキターンでリアを滑らせつつ、アクセルを少し空けてクラッチを繋ぎ、タイヤが流れると同時にクラッチを切ってアクセルを戻し、アクセルターンでバイクの向きを180度反転!カウルに付いたキグナスターの頭部が火炎弾を吐き出した!


「ちぃぃっっ!!」


 火炎弾と氷の刃が相殺され、発せられた水蒸気で真っ白くなったところに、バイクを駆るエリスNが飛び込んでしまう!視界不良でネメシスVを見失った!急いで水蒸気の中から脱出しようとしたその時!


「これで、終わりだぁっっ!!」


 視界ゼロの中で、火炎弾が飛んできてスワンバイクのサイドに着弾!乗っていたエリスNがバランスを崩す!ようやく、水蒸気から脱出したところへ、横合いから、キグナスバイクを駆るネメシス・ヴァルカンが、前輪を高々と持ち上げて突っ込んできた!奥義・キグナス・バーニングアタック発動!


「くっ!オマエ、このタイミングをっ!」

「フン!これだけお膳立てして、他にどのタイミングが有るってんだよ!?」


 回避不能と判断した、エリス・ネプトゥーは、バイクを放棄して後ろに飛んで回避!キグナス・バーニングアタックは、無人になったスワンバイクに体当たりをした!エリスNは地面を転がり、スワンバイクは木っ端微塵に吹っ飛ばされる!

 使役モンスターを破壊されたエリスは戦闘能力を失い、変身が強制解除をされて鏡像の美穂の姿に戻った。そして、女神の紋章を失ったサマナーホルダが地面に落ちて、中のカードが散らばる。

 バイクから降りたネメシスVが駆け寄ってきて、鏡像の美穂を見つめる。勝敗は、誰の目にも明らかだ。


「言ったろ!?オマエは、初戦で手の内を見せすぎた!

 あたしは炎と氷の特性を充分に把握してから戦った!

 オマエの敗因は、初戦で調子に乗って力に溺れた事なんだよ!」

「く・・・くそっ!」


 氷の力に溺れた鏡像の美穂と、炎の力を理解して戦ったネメシスの違い。勝敗を分けたのはそれだけでは無い。一度、刃を突き付けながら剣を引き、仕切り直しを演出した。ネメシス(美穂)にしてみれば、美穂の形をした人外の首に剣を突き刺しても息の根を止められる確証など無い。

 あの行動は「初戦の惨敗で潰されたプライドを保つ」目的もあるが、「手加減された鏡像の美穂が頭に血を上らせて盲目的になる」を狙っていたのだ。案の定、鏡像の美穂は勝ちを焦り、奥義による力押しで決着を付けようとした。

 そもそも、初戦では、ネメシスの方が頭に血を上らせて退くに退けなくなり、ジャンヌに助けられなければ、鏡像の美穂の作戦通りに取り込まれていた。ネメシス(美穂)は、自分自身の弱点を冷静に把握して利用したのだ。だけど、自分でも、この弱点はまだ克服していない自覚があるので、「勝因の1つ」として自慢するつもりは無い。


「ネプトゥーは回収させてもらう」


 突如、抑揚の無い声が聞こえ、ネメシスと鏡像の美穂が見たら、ローブ男=バルドルが立っていた。手にはネプトゥーのカードが握られている。


「はぁ!?急に出てきて漁夫の利かよ!?」

「人間ごときが、2枚も所持を出来るカードではない」

「か、返せ!ふざけるなっ!それは、あたしのカードだっ!」


 鏡像の美穂が立ち上がって掴みかかるが、バルドルは瞬間移動をして少し離れた場所に出現する。そして、鏡像の美穂には目もくれずに、ネメシスを見つめている。


「神のカードを使えば、後戻りは出来なくなる。待つのは修羅道か死。

 オマエの覚悟と行く末、観察させてもらうぞ」


 そう言い残して、バルドルは姿を消した。

 鏡像の美穂は、地に両膝を落として無言で頭を垂れる。その正面にネメシスが立って、鏡像の美穂を見つめた。憎たらしい奴だが、何もかもを失った姿は、少し気の毒に思えてしまう。


「さっさと、インバージョンワールドに引っ込め!それくらいは出来るんだろ?

 そして、2度とあたしのフリをして悪さをするな!

 そうすりゃ、退治はしない!」

「・・・なに?」

「現状を変えたくて、何が何でも融合をしたかったオマエと、

 それなりに充実してるから、現状を変える必要が無くて、

 融合に興味が無いあたし。

 案外、勝敗の差は、その程度の基本的なことなのかもな」


 ネメシスは、踵を返して鏡像美穂に背を向け、変身を解除して美穂の姿に戻って、戦いを見守ってくれた仲間達のところ向かう。いつの間にか、周りには警察の規制線が張られており、堤防の上では夏沢雛子と葵怜香が並んで立っていた。2人揃って愉怪な仲間達を労うような、それでいて申し訳なさそうな、何とも複雑な表情を浮かべている。


「お疲れ様・・・一件落着したようね」

「まぁ、それなりにね」

「助けてくれて、どうもありがとう・・・ごめんなさい」

「???」

「私は、真実を伝えることが、私に出来る正義だと思ってた。

 だけど、貴女達を見て、私の正義は、貴女達の正義に比べたら、

 とても些細と思い知らされたわ」

「え?なら、あたし達のことは?」

「記事にはしない。

 その真実が世間に与える恩恵より、

 その暴露で発生する損失の方が大きいでしょうからね。

 だけど、貴女達への興味まで無くしたわけではないわよ。

 これからは、私にできる方法で影ながら貴女達をサポートさせてもらうわ。

 代わりと言っちゃ何だけど、

 表沙汰になってない面白い話を聞かせてもらえたら嬉しいわね」

「ええ・・・・まあ、差し支えない範囲でなら」

「ありがとう」


 一礼をして、愉怪な仲間達は河川敷を離れる。

 停車中の怜香の車のサイドガラスに美穂が映り、美穂と別の動きをして、リアルワールドの美穂を見つめて話しかけた。


「・・・・・・・・・え?」


 急に、美穂の脳内に、今まで経験したことの無い記憶が定着される。



 何度もインバージョンワールドを出入りして、インバージョンワールドに残した美穂の念が、一塊の意識に成って異世界を飛び回っている。ただの精神体ゆえに何処にでも行ける。

 そして見た。「聖地」と呼ぶに相応しい美しい森の中で、中性的な顔立ちの青年が瞑想をしている。


 彼は、迷い込んできた精神体に興味を持ち、話しかけてきた。精神体は、初めて話せる相手に遭遇したので、彼と話した。彼は「ダメージを修復中」のために動けないらしい。精神体は、話し相手になったお礼に、相応しい形の肉体をもらった。

 だが、それは、異世界でしか生きられない肉体。それが鏡像の美穂。彼からは「貴女との会話は楽しいが、2度と此処に来ては成らない」と言われた。

 数日後、鏡像の美穂に興味を持って接触した男が居た。その男の背には翼が生えていた。翼男は笑顔だったが、瞳は暗く濁っていた。鏡像の美穂から姿を得た経緯を聞き「彼の居場所に案内して欲しい」と言った。そして、前払いの報酬で、「過去の戦利品だが使い道が無い」と言って、サマナーホルダとネプトゥーのカードをくれた。



「・・・これ、あたしが、アイツ(鏡像の美穂)に聞きたかった事じゃん。

 あたしの記憶や経験がアイツに共有されるように、

 アイツの意思次第で、アイツの記憶もあたしに流入する?」


 立ち止まり、身近な窓ガラスに映った自分を見つめる美穂。鏡の向こうの自分は、少しだけ違う動きをして微笑み、踵を返して遠ざかっていった。彼女は、翼男との約束を守る気が無いので、逃げ廻るつもりらしい。


「そっか・・・オマエの申告した記憶が正確なら、

 あたしも、その翼男は信用しないだろうな」


 鏡に映っている美穂は、美穂と同じ動きしかしない。彼女は去ったようだ。


「後戻りできない・・・か」


 中性的な顔立ちの青年と、背中に翼の生えた男、そして真次郎が異獣サマナーだった事実。

 何かが動き始めてるような、漠然とした緊迫を感じる。だけど、解らないまま心配をしても、何も始まらないので、頭の片隅にだけ留め置いて深くは考えない事にした。

 美穂は、先行して歩く紅葉達を「置いていくな!」と言って追い掛けていく。




―数日後(2月下旬)―


 校舎の廊下に、定期テストの結果が貼り出された。麻由は不動のトップ。真奈が49位と健闘。2人は特進クラス入りの切符を手に入れた。

 紅葉は前回の102位から96位へと微妙にアップ。美穂が172位から80位に大躍進。本当に紅葉を飛び越えてしまった。美穂が満足そうな笑顔で、真奈をビシッと指さす。


「3年の1学期中間では、真奈を越えてやる!

 そんで、秋までには、麻由に追い付いてやるからな!」

「ま、負けないからっ!」

「大きく出ましたね、美穂さん。秋を楽しみにしていますよ」


「ミホ以下なんて納得ぃかな~~~ぃっ!!

 さてゎ、ァタシの答案カンニングしたなっ!?」

「違うクラスの答案、どうやってカンニングすんだよっ!?

 そもそも、実力が下な奴をカンニングしてどうするっ!

 これは実力だ、ジ・ツ・リョ・ク!!悔しかったら、次で抜いてみなっ!!」

「ふんぬぅ~~~~~っ!!!!」


 ドヤ顔で「あっかんべ~」してから逃げてく美穂を、紅葉は地団太を踏んでから追いかけていく。

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