第5話 理由
「よう、ミーナ。これ食ってみてくれよ。」
「あ、カイさん。何ですか、これは?」
「3種のチーズの串揚げだ。トリュフ塩でどうぞ。」
「いただきます・・・ん~っ♪」
「上品なミルクの風味が口に広がる・・・カマンベール?」
「次は、癖のある青カビの刺激の中にしっかり甘味を感じられる。ゴルゴンゾーラね。」
「最後は、これ。芳醇な香りに濃厚なコク。私の好きなチェダーチーズ。」
「美味しい・・・」
緊張と焦りで疲れのあったミーナだったが、少し元気が出たようだ。
「ありがとう、カイさん。とっても美味しかったです。」
「そうかい?そりゃあ良かった。」
「ごめ~ん、ミーナ。お待たせ~」
「あ、真白さん。」
「あ!何それ、いいな~。カイ、私にも・・・」
「話があんだろ?また後でな。」
「え~ん・・・」
「では、真白さん。お話よろしいですか?」
「美味しかった?」
「え?あ、はい。美味しかったです。」
「何食べたの?」
「3種のチーズの・・・あの、真白さん。」
「チーズ!?美味しそ~」
「あの・・・」
「3種も!?凄~い」
「・・・」
「おい、真白。ちゃんと聴いてやれ。」
「レオ居たの?・・・はい。ごめんなさい。」
「ミーナ。ちゃんと聴きます。」
「はい。では・・・」
「以前から調査を進めていましたパルドさんの件ですが、」
「今のところ、これといった成果を上げられていません。」
「今、分かっていることは、」
「パルドさんのパーティー以外にも数名が被害に遭っていること。」
「被害者は女性、または女性を含むパーティーのメンバーであること。」
「被害現場は、北の遺跡群近くに集中していることくらいです。」
「そうか、女性が・・・」
「遺跡群に何かあるのか?」
「うむ。あそこは昔から不可思議な事象が頻発しておるからのぉ。」
「先生、わたしも歴史書で読みました。」
「美桜、レオ、おじいちゃんにアンジュも、聞いてたの?」
「うむ。それでミーナよ、わしらに調査依頼かの?」
「はい、オルディス様。いかがでしょうか?」
「リーダーは真白じゃからの。どうじゃ、真白よ?」
「う~ん・・・協力はしたいけど、でも・・・」
「俺は反対だぜ。」
「レオ?」
「女が狙われてるんだろ?やめておいた方が良い。」
「だよね~。私も魔力が無くなると困るし・・・」
「そうですよね・・・分かりました。他を当たります。」
「まぁ待て、ミーナ。やらないとは言っていない。」
「レオさん?でも・・・」
「俺が行く。調べれば良いんだろ?」
「わしも行くぞ。」
「師範、私も行きます。元々、魔力ないですし。」
「いや、ミオが大丈夫でも、俺やオルディス様が狙われるかもしれん。」
「あぁ・・・」
「まぁ、あそこには大した魔物はおらんはずじゃ。2人で大丈夫じゃろ。」
「では、お2人にお願いしてもよろしいですか?」
「ああ、任せろ。」
「ごめんね、2人とも・・・気を付けて。」
「ほっほっほ。真白よ、お主はお主の仕事を頑張るのじゃ。」
「うん・・・ありがとう。」
早速、準備を整えると、2人は調査へ向かった―――
「ほらよ。まぁ、気にするな。」
カイが串揚げを出してくれた。
「ありがとう。2人とも大丈夫かな・・・」
「2人じゃないみたいだったがな。」
「え?どういうこと??」
「あんたのマブダチもついて行ったぜ。」
「え!?マミーが?マジ??」
「ああ。レオの肩に乗ってたよ。」
「まったく・・・」
「あ、美味しい♪」
3種のチーズの串揚げは、優しいミルクの味がした・・・
カラン、カラン♪
食堂の扉が開き、女性が1人入って来た。
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ~。」
「あの・・・真白さんがいらっしゃると聞いて・・・」
「あ、はい。私です。」
「真白さんですか?上のサロンに行ったら、こちらにって・・・」
「あ~、ごめんなさい。お客様ですね。」
「はい・・・ちょっとご相談が・・・」
「分かりました。サロンの方へ移動しましょう。」
カウンセリングルーム―――
「改めまして、真白です。それで、ご相談というのは?」
「あ、はい・・・ダイエットの・・・あ、セーナといいます。」
「セーナさんですね。ダイエットを?」
「はい・・・アルゴ食堂の女将さんに聞いて・・・」
「アルゴ食堂?ハンナさんのところかな?」
「あ、そうです。ハンナさんに聞いて。凄い先生がいるって・・・」
「先生はちょっと・・・真白でお願いします。」
「あ、はい。真白さん・・・」
「あ~、でも。セーナさん・・・」
「はい?」
「シミ取りとか、ヘアトリートメントとかなら直ぐに結果が出るんですけど・・・」
「大丈夫です。時間掛かるんですよね?」
「はい。それに・・・」
「私の努力次第・・・?」
「その通りです。私たちは、あくまでお手伝いしか出来ません。」
「それで大丈夫です。1人じゃ頑張れない気がして・・・」
「分かります。そうですよね・・・」
改めてセーナを観察する。
20代前半のヒューマン系。
身長は150cm前後。
かなり丸みのある体型。パンツで言うとXLサイズだろう。
奇麗なブロンドヘア。
カールのかかったロングボブにしてある。
顔の輪郭を隠したいのだろうか・・・
「それでセーナさん、どのくらいの・・・」
「2サイズ落としたいんです。」
「2サイズ?」
「標準体型?っていうんでしょうか・・・そうなりたくて。」
「なるほど・・・期間は?」
「出来るなら、早い方が・・・」
「ですよね・・・少しお時間いただけますか?」
「時間ですか?」
「ジムのトレーナーや料理人とも相談してプランを考えてみたいので。」
「プランを・・・」
「はい。・・・明日の午後とか都合いかがですか?」
「大丈夫です。お願いします。」
「ありがとうございます。ところで・・・」
「はい?」
「差し支えなければ・・・どうして、ダイエットを?」
「あ・・・」
「あぁ、ごめんなさい。余計なことを・・・」
「いえ、良いんです。実は・・・」
「私、体型が原因で職場でいじめられて・・・」
「ダイエットして、でも挫折して・・・」
「仕事辞めて、実家に引きこもって・・・」
「ただただ、ぐうたら過ごして・・・」
「何もやる気が起きなくて・・・」
「もう、何で生きてるのかも分からなくなって・・・」
「そんな時、テレビからCMが流れてきたんです。」
『光より輝く漆黒の夜―――月が見ている、ヴァクタレーア』
「一瞬で心を奪われました・・・」
「これが似合う素敵な女性になってやるって・・・」
「生きる気力が湧いたんです!」
「私は履きたい・・・あのパンツを!」
「えーーーっ!パンツぅぅぅーー!?」




