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えぴろーぐ
数ヶ月ぶりに日が森に差す。木々の隙間から日の光が漏れだし、傘が開いて置いてあった場を照らした。傘内に生え茂る草は日の光を待ち望んだかのように生き生きと雨の雫を光らせた。
そこへ一人の女性が土を蹴り上げ、進んで来る。迷わず一直線に、傘の元へと歩み寄り、光を浴びる傘を手に取った。
彼女はその傘を開きっぱなしで肩に掛けた。光を傘でかざす。
「今日は良い天気ね」
彼女は呟くも、頭を捻り、傘を畳んだ。
「誰に言ったんだろ?」
傘を静かに見つめ、木々から漏れる木漏れ日に眼差しを向けた。気持ちの良い日光に瞳を閉じて、全身で感じ取った。
それでも彼女は呟く。
うん、やはりこの国は晴れが一番似合う。
彼女を遠くから呼ぶ幼い声がする。この声は新しく政府から派遣された召使だな、と彼女は眉を顰め、小うるさい召使に「此処にいる、すぐ行く」と声を上げた。
その時ちかっと光が瞬き、彼女の視界を遮る。
その瞬きが余りに眩しいものだったから、彼女は光に向かい、傘を差しかけた。