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王の愚者  作者: クロワ
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108/115

108話「できること」

一時保護区域。


ダイヤが。


名簿を見ている。


「残っている者も」


「随分」


「変わりましたね」


王。


「働ける者は」


「ほとんど」


「王国へ入ったからな」


ダイヤ。


「正確には」


「我々が」


「働けると思っていた者です」


王。


「?」


◇


一人の女性。


その横には。


幼い子供が二人。


役人。


「働く意思は?」


「あります」


「料理なら」


「できます」


「ですが」


女性が。


子供を見る。


「この子たちを」


「置いてはいけません」


ハート。


「孤児院で」


「預かりましょう」


女性。


「でも」


「この子たちは」


「孤児では……」


「夜には」


「迎えに来るのでしょう?」


「はい」


「でしたら」


「昼間だけです」


女性。


「…………」


「いいんですか?」


「もちろん」


その日から。


女性は。


炊事場で働き始めた。


大量の野菜。


大きな鍋。


女性。


「何人分です?」


「百二十人」


「…………」


「家族四人分しか」


「作ったことないんですけど」


「今日は」


「家族が増えたと」


「思ってください」


「増えすぎでしょ」


隣から。


笑い声が上がった。


作った食事は。


一時保護区域。


孤児院。


働きに出た難民たちへ。


運ばれていく。


別の母親は。


孤児院へ。


「私は」


「料理より」


「子供の相手の方が」


「得意です」


泣いている孤児を。


抱き上げる。


その横では。


預けられた子供たちも。


一緒に遊んでいた。


子供を見る者がいる。


だから。


その親が働ける。


◇


夜。


治療用の天幕。


老人が。


椅子に座っている。


王。


「何をしている?」


老人。


「仕事」


王。


「お前が?」


「悪いか」


医師。


「夜間の」


「見守りです」


「容体が変われば」


「我々を呼んでもらいます」


王。


「戦えるのか?」


老人。


「無理」


「走れるか?」


「もっと無理」


「では」


「何ができる?」


老人が。


鐘を持ち上げる。


「鳴らせる」


王。


「…………」


「十分だな」


老人。


「だろ?」


別の老人は。


倉庫の前。


椅子に座っている。


荷物を運ぶ必要はない。


異常があれば。


兵士を呼ぶ。


若い兵士。


「これで」


「夜の国境警備に」


「戻れます」


王。


「なるほど」


別の場所では。


洗濯。


清掃。


食事の配膳。


物資の整理。


王。


「随分」


「仕事があったのだな」


ダイヤ。


「人が増えれば」


「必要な仕事も」


「増えますので」


少し離れた天幕では。


足の悪い元教師が。


子供たちに。


文字を書いている。


その隣では。


難民だった医師が。


王国の医師と共に。


怪我人の処置をしていた。


王。


「働けない者が」


「残っていたのでは」


「なかったのだな」


ダイヤ。


「はい」


「我々が」


「できる仕事を」


「見つけていなかっただけです」


「働く者を」


「支えることも」


「仕事です」


王。


「なら」


「さらに」


「受け入れられるか?」


ダイヤ。


「計算してみます」


王。


「頼む」


ハート。


「怪我人と」


「病人は?」


王。


「それは」


「休ませろ」


ダイヤ。


「当然です」


ジョーカー。


「陛下も」


「随分と」


「優しくなられましたね」


王。


「病人まで働かせる王に」


「見えていたのか?」


「少々」


「ニア」


◇


数日後。


ダイヤが。


帳簿を持ってくる。


「陛下」


王。


「増えたか?」


「はい」


「このままなら」


「さらに」


「受け入れ人数を」


「増やせそうです」


王。


「そうか」


ハート。


「少しずつ」


「回り始めましたね」


王。


「ああ」


その時。


外から。


怒鳴り声。


王。


「?」


兵士が。


駆け込んでくる。


「陛下!」


「問題が!」


王。


「今度はなんだ」


町の一角。


人だかり。


二人の男が。


兵士に押さえられている。


一人は。


王国へ入った難民。


もう一人も。


同じ国から逃げてきた難民だった。


だが。


首から下げている。


信仰の印が違う。


「こいつらが!」


「俺たちの神を」


「侮辱した!」


「先に言ったのは」


「お前だろ!」


「異端者が!」


ハート。


「…………」


王。


「同じ国から」


「逃げてきた者同士だろう」


男。


「だから」


「同じだと?」


王。


「…………」


もう一人が。


叫ぶ。


「こいつらのせいで」


「俺たちは」


「迫害されたんだ!」


周囲にも。


同じ印を持つ者たちが。


集まり始める。


兵士。


「離れろ!」


「全員!」


その時。


別の兵士が。


走ってくる。


「陛下!」


王。


「まだあるのか?」


「町で」


「商店の金が」


「盗まれました」


王。


「犯人は?」


「捕まえました」


「難民として」


「先日」


「王国へ入った男です」


周囲が。


ざわつく。


南部の住民。


「ほら見ろ」


「だから」


「言ったんだ」


別の住民。


「こんなに」


「入れるからだ」


「喧嘩」


「盗み」


「次は何だ?」


王。


「待て」


「盗んだのは」


「その男だろう」


住民。


「でも」


「難民だ」


王。


「…………」


別の住民。


「今まで」


「こんなこと」


「なかった」


さらに。


別の声。


「もう」


「入れるのを」


「やめろ!」


ざわめきが。


大きくなる。


ハートは。


宗派の違う二つの集団を見る。


ダイヤは。


捕まった男を見る。


王は。


その両方を見る。


ジョーカー。


「仕事」


「食事」


「住む場所」


「随分と」


「整ってきました」


王。


「ああ」


ジョーカー。


「ですが」


人々の怒鳴り声が。


響く。


「一緒に暮らす方法までは」


「まだ」


「作っていなかったようですね」


王。


「…………」


門の前には。


今日も。


王国へ入る順番を待つ。


長い列があった。


だが。


その門の内側では。


別の問題が。


始まっていた。

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