第9話 うつつ祭り、再び
再びうつつ祭の日が巡ってきたのは、それから数日後の事だった。街中の木という木には願い事の紙が生え、街の中心の広場には紙を焚き上げるための台座が置かれていた。芽郁はエリーたち、食堂の仲間とともに出店を周り、神官による指示の後には紙を集めるのにいそしんだ。
日暮れには町中の紙が広場に集まり、着火となった。芽郁は願い事の紙とともに、青い封筒に入った手紙を台座に乗せ、燃え上がる様子を眺めていた。
「これで私の記憶も輪になったかな?」
芽郁が言うと、エリーは静かにうなずいた。
願いのほとんどが煙となって空に帰っていったその時、芽郁の後ろから小さな声がした。
おもむろに振り返ると、神官姿のミツキが息を切らせて立っている。
「仕事の最中じゃない。早く戻らないと。」
と、芽郁が言うと、ミツキは
「これを渡したくて。」
と、小さなブレスレットを差し出した。
「貴方は無事、務めを果たしました。人と人の、人と物の豊かな繋がりを取り戻したのです。困難な旅だったと思いますが、最後までよくやり遂げましたね。貴方のこれからに幸あらんことを。」
ミツキは、そう言ってすぐ、社へ戻っていった。
芽郁はブレスレットを受け取ると、左手にはめた。月の光を受けて、ブレスレットが一瞬、きらめいた。
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