第8話 三国干渉
機巧暦2140年1月・バルカン半島ギリシャ
「陸軍少将・榊原康介が鹿を射止められたぞ!!」
「おォォォォォ!! さすがです榊原少将!!」
「いや・・・・・・・」
弓で鹿を射止めた榊原は配下から大喜びされる。当の本人は困惑しているが。
「謙遜することはないぞ榊原少将」
「新田中将・・・・・・・・」
「鹿を弓で射るというのは敵将を討ち取ったも同然だ。よくやった」
「あ、ありがとうございます」
オスマン帝国に勝利した大日本帝国・欧州本部は次なる目標としてルーマニア、セルビア、モンテネグロの平定を目論見、偵察や探りの一環としてルーマニアとブルガリアの国境にある森林にて狩りを行った。将校クラスの連中は大鎧に太刀、弓で武装し、士官クラスは戦国時代の当世具足に刀と槍で武装していた。
「ハァ相変わらず新田中将は榊原少将を猫可愛がりしてますね」
「なんだ? 北畠少将、嫉妬してるのか?」
「楠木中将こそ嫉妬が顔に出てますよ」
「な!?」
「アハハ、まあ可愛がられている当の本人は複雑な感じでしょうね」
「可愛がられてイヤな気持ちはしないだろうよ」
北畠の言葉に楠木は首を傾げた。
「新田中将は榊原少将を失いたくないばかりに箱入り娘ならぬ箱入り息子にしようとしている。それが本人にとって不満だと噂に聞いている」
「・・・・・・・・確かに榊原少将の性格上、前線で戦っていた方が性に合うかもな」
「このままだと彼が魔術師になってからも決戦兵力として温存する可能性が大きいかもしれませんね」
「ハァ、榊原少将は久遠柚希をライバル視しているわけだから魔術師となれば久遠柚希のような戦い方を真似る可能性がデカい。新田中将が止めても無駄だろうよ」
「・・・・・・・・・先が思いやられますね」
「ああ」
ーーーーその夜
「失礼致します」
「どうした?」
「ロシア=ソビエトから入電がありまして」
榊原が狩りから帰って執務室の椅子でくつろいでいると通信兵が電報を片手に入ってきた。榊原は電報を受け取る。
「ありがとう。下がっていいぞ」
「はい」
パタン
「・・・・・・・・マジよ」
通信兵が部屋から出ていくと榊原はそう呟く。電報にはオスマン帝国から割譲されたアナトリア半島をオスマン帝国に返せというもので、もし返さなければ攻め込むという内容だった・・・・・・・・・・
ーーーーイタリア王国マルタ島・海軍鎮守府
「・・・・・・・ロシア=ソビエトか」
「はい」
「攻め込むというのは口だけの脅迫なのか、それとも実際に攻め込むつもりなのか・・・・・・・」
三日後、榊原は電報を持ってマルタ島の新田中将の元に駆け込んだ。
「新田中将、もしロシア=ソビエトと戦うとなれば国力差が大き過ぎて此方が滅びます」
「我らはロシア=ソビエトから喧嘩を売られたんだぞ。ここで引き下がっては名が廃るというもの!! 新田中将! 即刻開戦すべきです!!」
「楠木中将、国力数十倍の相手と戦争すればどうなるか・・・・・・分からないのですか!?」
「なら北畠少将はこの恫喝をスルーしろと言うのか!?」
「北畠も楠木もやめろ!! 今は言い争いしてる場合じゃねぇだろ?」
榊原が楠木と北畠にそう怒鳴る。怒鳴られた二人は気まずそうに顔を逸らした。
「新田中将、ここはロシア=ソビエトの言う通りアナトリアをオスマン帝国に返すべきです」
「・・・・・・・実はこの恫喝はロシア=ソビエトが率先してやったわけじゃないそうでね。裏にフランスとドイツがいるとの情報を耳にしていてね。ドイツが言いだしっぺらしいのだ」
「ドイツ帝国を叩くつもりで?」
「いや我らもオスマン帝国との戦争で圧勝はしたものの打撃を受けているわけだから今はドイツ相手でも勝つことは厳しい・・・・・・・・ましてやフランス、ドイツ、ロシア=ソビエトの三国を相手にすれば我が欧州本部の滅亡は必須だ」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・戦争は避けられない。それは新田中将がよく分かっていることだろ?」
「今は戦争をするべきではない。臥薪嘗胆・・・・・耐え忍ぶ時なのだ」
戦争したがらない新田に対して楠木は眉をひそめる。
「では・・・・・・来たるときの為に軍備の増強をお許し下さい」
「許す」
「ありがとうございます」
その後、欧州本部はオスマン帝国から追加の賠償金を受け取りアナトリア半島を返還した。追加賠償金はロシア=ソビエトが脅して無理矢理出せたものだった・・・・・・・・
ロシア=ソビエト連邦は帝政時代にオスマン帝国とオスマン帝国を支援するイギリス連合王国、北フランス共和国、西フランス共和国と戦争したが敗北し南下政策を阻まれた。
それ以来、諦めたのように思われたがドイツやフランス、イギリスが戦争により疲弊するとその野心を再び剥き出しにしたのだ・・・・・・・・・




