第6話 バルカン条約
機巧暦2139年12月・バルカン半島ギリシャ・アテネ
「此度の騒乱についてオスマン帝国と和議を結びたいのだが・・・・・・オスマン側は如何かな?」
「和議の条件にもよりますが・・・・・・・」
「条件次第では再び一戦交えるということか」
「・・・・・・・・・・はい」
アンタリヤ上陸作戦から始まった大日本帝国・欧州本部とオスマン帝国との戦争は終始、欧州本部が有利に戦局を進めついに講和会議にまでこぎ着けた。欧州本部側の全権大使は海軍中将・新田義明が、オスマン帝国側の全権大使は陸軍元帥・ウルク=メフメトがやることになった。
「まあまずはこれを、これが我らの和議の条件に御座います」
「うむ・・・・・・・・」
新田はそう言うとテーブルに書状を置いた。
そこにはーーーー
・賠償金5億6千万の支払い
・帝都アンカラのあるアナトリア半島の割譲
・ゲムリクに欧州本部海軍が駐留することを認める
・バルカン半島の独立を認める
「こ、これは・・・・・・・認められません!! 賠償金ならまだ分かりますが割譲は認めるわけにはいきませんね。自国に他国の軍が駐留なんて半ば植民地ではないか」
「不服であれば、もう一戦交えるとしようか? 此方はまだ余力がある。まあ今の貴方らの軍が相手なら鎧袖一触だがな」
「・・・・・・・・・・・」
「気負う必要などない。我らがしっかりと貴国の面倒を見るつもりだからな。私もそろそろ戦争が厭になってきた。ここらで一旦、一休みしたいところでな」
「これを認めれば我らは売国奴として臣民に糾弾されるでしょう」
「・・・・・・・・・くだらん!! 売国奴? この世に売国奴など存在しないが? バルカン半島の情勢を見るといい。泥だらけのクソ塗れだった道は整備され、貴族らから鞭を打たれることも無い民衆の姿を!!」
「・・・・・・・・・・・」
新田は統監府のバルコニーからウルクにギリシャの街並みを見せた。併合前は人々が垂れ流していた大便や小便で道が泥濘むほどだったのが今では道幅を広くして砂利がひかれ整備されている。がんじがらめだった身分制度から解放された人々は生き生きと往来している。
「国を救おうとして他国に縋るのは決して恥ずかしいことではない。自国の制度に縛られて中々近代化出来ぬという事例は多いのだよ。どうだ? 一度、我らに任せて貰えないだろうか? 悪いようにはしない。軍の駐留は貴国の防衛に問題があるから置くのだよ」
「・・・・・・・・・・わ、分かりました。しばらく国をお願い致します」
「うむ。英断だ」
こうしてバルカン条約が結ばれ大日本帝国・欧州本部とオスマン帝国との戦争は終結した。




