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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第二章 翔ぶ鶴
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第1話 魔導航空戦隊

機巧暦2139年12月・ドイツ帝国ベルリン陸軍大病院



「何? ユウナに第一航空戦隊の指揮を任せるだと?」



「はい。一航戦は帝国の防波堤です。今ユズキが倒れ纏める者がいない状態ではいずれは瓦解してしまいます。瓦解する前に指揮官を決めなければと・・・・・・・なのでユズキの考えや意思を引き継ぐ者として妥当な人物がユウナ=コウサカだと考えました」



「お前から見てユウナはどう映る? 聡明か暗愚か?」



レイシアは玉座に座るイリアスにそう言う。



「まだ分かりません」



「見込みはある・・・・・・と言うことか」



「はい」



こればっかりはやってみなければ分からなかった・・・・・・・・



「あのユウナとやらに第一航空戦隊のお守りが出来るのか?」



「・・・・・・・・・ユズキと同等の魔術を保持していますから多少は指揮できるかと」



「・・・・・・・分かった。ユウナに第一航空戦隊を任せよう」



「有難き幸せ」



親友同士だったはずのレイシアとイリアスの関係は完全に崩壊し今や皇帝と臣下の関係となっていた・・・・・・





ーーーードイツ帝国・ブレーメン



「おいリム准尉、親父が重傷って本当かよ!?」



「何度も言わせるな。重傷で入院中だよ」



「・・・・・・・それじゃ、この部隊のトップは誰が・・・・・・・?」



「親父の副官だったグレイス中尉だろうな」



「まあ普通に考えてそうだよな」



第一航空戦隊の2万の兵士らが広場に集められていた。当然ながら各兵は柚希不在の状態で誰が指揮を執るのか不安げな様子だ。



「なあ、あれ見ろよ」



「うん? なんだ」



「あそこ」



リムの隣にいたラムがそう言うと目の前の拝将台を指を差す。拝将台にはシャルロット王女が立っていてその前に女性が跪いている。



「グレイス中尉じゃないのか・・・・・・・」



「あれ誰だ?」



「・・・・・・・・・・あの格好からすると大日本帝国の者か?」



拝将台で跪いている女性は黒地に金色の鶴の刺繍が入った着物を着ている。拝将台でシャルロット王女から陸軍少将の証であるバッチを受け取ると兵士たちがいる方に振り向く。艶のある長い黒髪が風に靡く。



「ユウナ=コウサカ・・・・・・・」



「なッ!! 親父の女が指揮官だと!?」



「・・・・・・・・・・」



将兵らは響めく。左腰には黒い刀を差していた。着物は動きやすいように腰辺りしかない。腰から下は太ももの中間までしかない短いスカートを履き、太ももから下は白いストッキングを履いていた。


「私は先程シャルロット王女よりドイツ帝国臨時陸軍少将の地位を拝命した紅坂友那よ。久遠柚希陸軍少将が倒れたことを受け急遽、第一航空戦隊の指揮官に抜擢されたわ!! 柚希少将より至らない点があるかもしれないけど精一杯やらせてもらうわ!!」



友那は拝将台から声高らかにそう叫んだ。





ーーーーブレーメン・軍事執務室



「こ、ここが柚希の・・・・・・・」



「はい。ここでユズキ少将は私たちに司令を出していました」



「・・・・・・・・・」



6畳ほどの執務室だ。奥には執務用の机があり手前には応接用の椅子とガラス製の長机がある。執務用の机の上は書籍やら書類やらが山積みで仕事出来るような状況ではなかった。



「ユズキ少将は奥の机は一切使わずに手前の机を使っていましたね。本人が言うには部屋に入ってきた時に威圧感を与えたくないってことらしいですよ・・・・・・・」



「・・・・・・・・・そう」



友那は周りを見渡した。壁には賞状やら感状、勲章が飾られている。



「さて今後のことも含めて少し話しましょうか」



「そ、そうね」



グレイスはそう言うと応接用の椅子に座った。友那もグレイスの前の椅子に座る。



「改めて私は第一航空戦隊・参謀兼副官のグレイス=シェフィールドです」



「私は・・・・・・・久遠柚希の彼女・紅坂友那です」



「ガールフレンドか・・・・・・・そんなことはいい。まずは部隊の説明からする。第一航空戦隊は特殊部隊の一つで複葉機の代わりと言う面が強い」



「複葉機の代わり?」



「複葉機では侵攻出来ないような場所に私たち第一航空戦隊が侵攻するんだ。複葉機より航空戦隊のが速いし小廻りもきく。でも複葉機と違って生身の人間だから防御力はゼロだ」



グレイスは淡々と説明しだした。



「防御力ゼロなら柚希はなんで生き残れるの?」



「ああユズキ少将は盾の魔術があるから、それで敵の攻撃を何とか凌いでいるらしい。私たちも魔術は持ってるけど攻撃特化型が多くてね。スピード特化もあるから敵からの攻撃は逃げたり避けるのが生き残る秘訣かな」



「ねぇ、第一航空戦隊があるってことは第二航空戦隊もあるってことだよね?」



友那がそう言うとグレイスは困り気味な表情をする。



「・・・・・・かつては第二航空戦隊もあったのですが今は第一航空戦隊だけです」



他人と話すとグレイスは語尾がぶれる癖があった。



「・・・・・・・そうなんだ」



その後、グレイスからあらかた話を聞いた友那は軍務に取りかかることになった。まずは編成の変更から取りかかった。第二航空戦隊が無い今、第一航空戦隊は第一と付ける必要がない。



「ねぇグレイス、これでどうかしら」



「なるほど、今の一個師団の2万をばらして5個に分け第五航空戦隊まで部隊を増やすということですか」



「そう。なんかこの資料を見ると有事が起こる度にユズキが自ら相応しい人材を部隊から選んで派遣しているようだし、これでは効率が悪いわ」



「いいと思います」


こうして第一航空戦隊から魔導航空戦隊と名を変え第一航空戦隊から第五航空戦隊まで編成された。



《魔導航空戦隊》


第一航空戦隊《4千》・・・・久遠柚希


第二航空戦隊《4千》・・・・グレイス=シェフィールド


第三航空戦隊《4千》・・・・リム


第四航空戦隊《4千》・・・・ラム


第五航空戦隊《4千》・・・・レム

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