第33話 護るべき者の為に
機巧暦2139年12月・ドイツ帝国ミュンスター・廃墟群森林
「なぜ貴様は弱い者のために戦う!!」
ガキンッ!!
「それが俺の正義のためだからだ!!」
バキッ!!
森林の倒木に隠れた友那は柚希とドルシアの戦いを見守っていた。柚希はドルシアの背中に拳をめり込ませ、ドルシアは逆くの字になる。
「グッフ!!」
バキッ!!
「敢えて弱い者を狙うとはな!! このクズが!!」
バキッ!!
「取るに足らないゴミが!! アンタは俺の琴線に触れやがったんだ!!」
ドスッ!!
「・・・・・・・ッ!!」
柚希は一方的にドルシアを殴る蹴るといった攻撃を続ける。
そしてーーーー
カチャッ!!
「はぁァァァァァ!!」
「・・・・・・・!!」
右腰の愛刀の1本を引き抜くとドルシアに向けて突き出した。刀身は魔力を流しているらしく真っ赤に焼けた鉄のようになっている。
ガキンッ!! バキッ!!
「フン!! ・・・・・・・・機巧師団!!」
「くっ!!」
ドルシアは1対1では敵わないとみると無線で救援を求めた。
ダッ!! ダッ!! ダッ!! ダッッ!!
「・・・・・・・・チッ!! 増援をよびやがったか」
「徹底的にやらせてもらうわ。ヤッパリ1対1じゃ手に負えないからね☆」
柚希は自分の背後を見た。後ろの森林からはガチャッ! ガチャッ! という鎧が擦れる音が聞こえ徐々に近づいてくる・・・・・・・・・5体か6体はいる。
「ならば集結する前に各個撃破するまで!! はぁァァァァ!!」
「・・・・・・・・・」
柚希は愛刀を鞘にしまうと機巧師団に向かって走っていく。ちなみに完全に蚊帳の外になっている友那は静かに見守っていた。
バキッ!! ガキッ!!
身の丈以上はある機巧人形を相手に柚希はタックルしドルシアとの合流を阻止しようとする。
「行かせるかァァァァァ!!」
その後ーーーーー
ガキンッ!!
「ブハッ!!」
さすがに集団には敵わなかった・・・・・・・・一際体格がデカい機巧人形の斧を振り上げると柚希の頭部目がけて振り下ろそうとするも柚希は地面を蹴って後に逃れる。
「死になさい!!」
ガチャッ!! バァン!!
「グハッ!!」
ドサッ!!
ドルシアは右腰の銃剣から銃弾を発射、見事に柚希の頭辺りに命中し後ろに吹き飛ぶ。
「柚希ィィィィィィィ!!」
「う、うう・・・・・くっ・・・・・・・・ペッ!!」
友那の叫びに柚希は血塗れになり蹌踉けながらも起き上がると口から血反吐を吐いた。
「な、なぜ・・・・・・確かに銃弾は頭に命中したはず・・・・・・」
「・・・・・・・・あ、アハハ、伊達に灰色の亡霊と名乗ってるわけじゃねぇよ」
柚希は命中寸前に救国の剣を解除し護国の盾を発動していたため死を免れたのだ。
「・・・・・・・フッ、ユズキ私らと取引をしないか?」
「この期に及んでなんだ?」
「貴様は間違い無くここで死ぬことになる。英雄を殺すのは忍びない。生かして帰してやるわ。だからユウナをこちらに引き渡せ」
ドルシアとしては友那を機巧技術の人体実験の素材として連合王国にぜひ持って帰りたかったのだ・・・・・・・・
「わ、渡すものか!! 救国の剣!! はぁァァァァァァァ!!!」
「なっ!?」
柚希は満身創痍といった感じで立て膝をつき肩で息をしていた。愛刀を地面に突き刺した状態でドルシアの話を聞いていたが、友那を引き渡せと言われ目の色が変わった。愛刀を地面から引き抜くき、さらに左腰の刀を引き抜くとドルシアら機巧師団に斬りかかった。
「・・・・・・・くっ! 満身創痍の状態で何が出来る!!」
「オラッ!!」
バキッ!!
「はっ!!」
バキっ バキッ!!
柚希はフラフラした状態で斬りかかったため6体の機巧人形を完全に倒すことは出来なかったが、手や足を切断、さらに顔面を破壊することで戦闘不能にすることは成功した。
「・・・・・・・・ハァハァ、ハァ、ハァハァ、これでいいだろう・・・・・友那!! 何処にいる!! 引き揚げるぞ!!」
「アハハ」
「あ”っ・・・・・・・・・」
グサッ!!
「・・・・・・アハハ、油断しちゃたかな~」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”ァァァァァァァ!!」
柚希は後からドルシアに右肩を捕まれ背中を刺された。刺した銃剣が胸を突き抜けていた。剣の先からはポタポタと生暖かい血が滴り落ちる・・・・・・・・
「眠りなさい。英雄さん」
シャキッ!!
「・・・・・・・・・・・」
ドサッ
ドルシアは右腕の銃剣を引き抜く。柚希はゆっくりと膝から地面に崩れ落ちた・・・・・・・・
「えっ? ゆ、柚希・・・・・・・?」
その光景を見ていた友那はしばらく呆然としていたが、その後、声にならない悲鳴を上げた。さらにリム、レム、ラムや第一航空戦隊も現地に到着し倒れた柚希を抱えて撤退した。さらに護衛の機巧師団を失った連合王国側も撤退した。
ーーーー翌日・ベルリン陸軍大病院
「・・・・・・・う、うぅ」
「親父・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
陸軍大病院の廊下の待合室にリム、レム、ラム、友那、レイシアが居合わせていた。それぞれ沈痛な面持ちで会話はなかった。友那に至っては泣いている。柚希が倒れた後、一旦ブレーメンへと戻り軍車両にて帝都の陸軍大病院に運ばれた。
「やはりユズキは私の手元に置いておくべきだったんだ・・・・・・」
「今更、後悔しても遅いですよ。レイシア少将・・・・・・・柚希は私を護る為に必死だったんです。レイシア少将の元にいたとしても結果は変わらなかったでしょう・・・・・」
「・・・・・・・・・そうかもな」
友那の言葉にレイシアは力なさげに答えた。
ガチャッ!!
「処置は終わりましたよ」
「ハッ・・・・・・た、助かったのか?」
「どうなの?」
治療室から出て来た医師にレイシアと友那が詰め寄った。
「運が良かったようで・・・・・・・・刺された箇所があと1ミリずれていたら心臓か肺をやられて即死だったでしょうね。幸い骨も傷ついていませんでした。大量出血により危う状況だったので輸血し、それから皮膚や筋肉も損傷していましたので縫合しました」
「そ、そうなのか」
「当然ですがしばらくは入院となります。退院後もしばらくは療養となります」
「助かったなら一安心といったところか・・・・・・」
医師の言葉にレイシアは安堵のため息をついた。
「ご本人にお会いになりますか? まだ意識は回復されていませんが・・・・・・」
「ああ、会おう」
「・・・・・・・・」
医師の案内で処置室に入ったレイシアと友那だけだった。リムたちは柚希の重傷で見るに堪えない姿を見たくないということでそのまま待合室に待機となった。
ーーーー陸軍大病院・処置室
「柚希がいない状態でこれからどうする気なの?」
「いつも通り・・・・・・・とはいかないだろうな」
ベッドに横たわる柚希は酸素マスクをつけ点滴用の管などで繋がれていた。手術した胸には包帯ご巻かれている。
「君はどうするつもりなんだ? 私の元に来るか?」
「配慮は嬉しいけど、私はブレーメンのあの屋敷で柚希の帰りを待ちます」
「フフッ、そうか。私の方はどうにもならないな・・・・・・第一航空戦隊を統率できるような将が見当たらない」
レイシアは悲痛そうな表情でそう言う。
「グレイス中尉が副官と聞いているけど・・・・・・・」
「グレイスはダメだ。補佐なら良いがリーダーを任せられる器量はない」
「・・・・・・・・なら私がやります」
「それもアリかもな・・・・・・・・え?」
レイシアはキョトンとした表情で友那を見る。その後破顔一笑した。
「アハハ、冗談はよせ。魔術も経験もない君が一軍の将になれるわけがない」
「魔術ならありますよ。柚希と同じ盾の魔術・救国の剣と護国の盾を発動できるんですよ?」
「なっ!?」
「柚希に護身として教わったんです。柚希の魔術の色は紅ですけど私は蒼なんですよ。あと私は柚希の考えや気持ちがわかります。柚希の意思を一時的に継いで第一航空戦隊を率います」
「・・・・・・・・・・・・・わ、分かった。そこまで言うならやってみるといい。陛下にその旨は伝えておこう」
レイシアは心配ながらも了承した。




