第25話 法律の制定
機巧暦2139年12月・ドイツ帝国ブレーメン
「王女様・・・・・・・な、なぜここに?」
「シャルロットで良いわよ」
夜中に扉を叩く音がしたため開けてみると白いドレスを来たシャルロットが立っていた。
「・・・・・・・何かあったのか?」
「うん」
「立ち話もアレだから上がれ」
「分かったわ」
リビングーーーー
「さて、こんな夜にどうした?」
「や、やっぱり其方に領主の座を返すわ。私では西プロイセンの領民を従わせることなんて無理だわ・・・・・・・・」
「急にどうした? 勝ち気な王女が弱々しいなんて・・・・・・・」
「う、うるさいわね。ここの領民は人の皮を被った獣よ?
法律もろくに理解しないし理解しようともしてないわ。幸いブレーメンは統治出来たけど・・・・・・ブレーメンから一歩出たら無法地帯なのよ?」
「・・・・・・・・・・・」
そりゃー当たり前だろ? つい最近まで戦争状態だったんだからな。土地ばかりか人の心まで荒廃してんだよ・・・・・・
「ねぇ、どうすればいいのよ!?」
「まあ落ち着け、人心が荒廃した状況で難しい法律なんざ通用しないんだよ。衣食足りて礼節を知るって言うだろ? 明日を生きるための食料すらままならない状況で礼やら法だなんだ言っても無理なんだよ」
「なんで最初からそう言ってくれなかったのよ」
「いや知ってるかと思って・・・・・・・・だってシャルロットらは南フランスを統治してたんだろ?」
「・・・・・・・南フランスはこんな無法地帯じゃなかったわ」
シャルロットは口をとがらせてそう呟く。
「俺がブレーメンや西プロイセンの統治を投げ出したのはそれが理由なんだよ。人心が荒廃していた場合どうすればいいかなんて分からないんだよ・・・・・・・・・・」
西プロイセンは貴族らの搾取や、軍人らの略奪行為により荒廃していた。法も通用はせず日夜どこかで略奪や殺人が起こっている。集団での紛争も頻発し帝都から鎮圧軍が駆けつけるものの逆に大損害を被る始末だった・・・・・・・・まあそれでもブレーメン騒乱後は少しは落ち着いたかもしれないが・・・・・
「譲ってもいいかしら? 領主の座を」
「俺は有事の時も動けない身なんだぞ? 無理に決まってるだろ」
「うぅ・・・・・・・な、何かいい案はないわけ?」
「・・・・・・・・な、ならこれを試して見ろ。使えるかはわからないが・・・・・・・最低限の法律だ。これなら赤子でもわかる」
俺はそう言うと書類をシャルロットに渡した。
「こ、こんな・・・・・・・・」
「これなら簡単だろ?」
西プロイス法ーーーー
《刑罰》
・強盗は家財没収の上、容疑者のみ斬首とする。
・殺人に関しては容疑者及びその家族を斬首とする。
・放火殺人に関しては容疑者及びその家族を火刑に処す。
・窃盗に関しては家財没収の上、重労働に服すること。
・強姦に関しては男子は去勢、女子は幽閉とする。
《救済》
・3年の徴兵免除。
・3か月は無税とし税の徴収を禁止する。
・飢饉対策としてジャガイモの苗を給付する。
・エルベ川流域の開墾計画。
「混乱しているのに兵役免除するの?」
「仕方が無い。もし何かあれば第一航空戦隊が動くから気にするな」
シャルロットは書類を見ながら不安げにそう言う。
「これで幾らかマシになるはず・・・・・・・俺は直接手を出すことは出来ないがアドバイスなら出来るから相談してくれ」
「わ、分かったわ。ありがとう」
俺も自信が無いため絶対とは言えなかった。