第16話 イギリス・ロンドン議会
機巧暦2139年12月・イギリス連合王国ロンドン議会
「首相! これはいったいどういうことですか!?」
「な、何のことかな?」
「ヴェルサイユでの講和会議のことですよ。なぜ貴方はこの講和条約を押し通さなかったのです? 強引でも押し通すべきではありませんか?」
ヴェルサイユ会議で何も成果がなく戻ってきた首相は議会から非難を浴びていた。
「ハァ内務卿、強引に押し通した場合、北フランスや西フランスらと対立するハメになる。それでは我が国益のためにはならないでしょう?」
「・・・・・・・・・北フランスや西フランスはなんと主張しているんですか?」
「ドイツ帝国に対してもっと厳しくやるべきだと言っててね。奴らは帝国を徹底的に追い込むつもりらしい」
「ならば我が国も北フランスや西フランスと協調しましょう。今の講和条約を破棄して新たに北フランスや西フランスの意見を盛り込んだ条約をつくるのです。そうすれば連中から反感を買うことはありません」
内務卿の言葉に議会の連中が賛同する。
「ドイツは既に経済、軍事共にボロボロな状況です。これ以上、叩きのめすのはどうかと思いますが・・・・・・」
「首相、この条約締結期間中に仮にもドイツが勢力を盛り返したらどうするおつもりですか?」
「それは有り得ないでしょうね。戦前のドイツの軍事力を100とするならば、今は20しかありません。ルーアン、モンスやエルザス、ロートリンゲンでの消耗戦で大半を失っていますから、その心配は杞憂でしょう」
「・・・・・・・・・・ならばその20が噛みついてきたらどうします? 奴らには第一航空戦隊という魔術戦力があります」
「フッ、内務卿は我が国の軍事力を疑っているのですか?」
「いや、疑ってなどない」
首相の言葉に内務卿はばつが悪そうな表情をする。
「連合王国には機巧魔術によって生み出された王立機巧師団の十個師団《20万》がいるではありませんか? この王立機巧師団を持ってすればドイツの魔術戦力など鎧袖一触でしょう」
「・・・・・・・・・・た、たしかに」
「北フランスや西フランスの講和条約を盛り込んだ場合、ドイツは窮鼠になるでしょう。こちらもそれは望んではいません。もし西フランスや北フランスが我ら連合王国の言うことを聞かずに駄々をこねるようなら滅ぼします」
「・・・・・・・・・・なっ!?」
「首相、それはどういうことですか!?」
「フランスを敵にまわしても良いとお考えですか?」
「・・・・・・・・・・・」
首相はそう言うとザワつく議会を出ていった。




