第2話 内政担当がいない
機巧暦2139年12月・ドイツ帝国ブレーメン
「ブレーメンの人口はどれくらいだ?」
「今のところ約5万人です。この地域は東プロイセンに属します。東プロイセン全体の人口は約2千万人です」
「もう5万人もの人口になっているのか・・・・・・・」
「建設中に住み着いた人もいれば東プロイセンの田舎から流れてきた人、北フランスから逃れてきた人いると聞いています」
「・・・・・・・・・そ、そうか」
さっそく洋館の執務室で内政にとりかかることになった。グレイスを秘書として食客にシャルロット王女、フランソワ元帥、
フローレンス大将、紅坂友那を迎えた。
そこまでは順調だった・・・・・・・・その先が問題だった・・・・・・・
「なぁグレイス、内政って何をやればいいんだ?」
「え?」
「・・・・・・・!?」
その場にいたグレイスと友那が固まった。
「え? なんで固まってるんだ? なんか変なこと言った?」
「内政を知らない状態で領主を引き受けたんですか?」
「いや・・・・・・・・俺は土地を買って家を建てようとしただけで領主になるとまでは聞いてないからな」
「いやドヤ顔しないでくださいよ・・・・・・・どうするんですか? 私たちは軍人ですから内政は専門外ですよ」
「軍政は出来ないのか?」
「そういうのは大将の権限だから私たちでは無理だ」
グレイスはため息をつきながらそう言う。
「ねぇ、南フランスに大将の人いなかった?」
「ああ、確かにいたなアンリ=フローレンス大将だったかな」
「・・・・・・・・ここは帝国領です。他国者に軍政をやらすなど言語道断ですよ」
友那がハッとしていい案を出すもグレイスに一蹴された。
「・・・・・・・・はぁ、俺が勉強しながら内政するよ」
「だ、大丈夫なの?」
「適任者がいないんだ。仕方ないだろ。すでに街は完成してるし早く整備してやらないと市民が混乱するだろ」
「確かにそうですね」
グレイスが頷く。
そしてーーーー
バタリッ
「・・・・・・・・・・」
「寝不足?」
「・・・・・・・ああ死にそう」
昼は法律の整備、政治体制についての話し合い、夜は寝る時間まで惜しんで経済や法律を叩き込んだ。その結果、難しい事が嫌いな俺はノックダウンしていた。友那が心配そうに話しかけてくる。
「グレイスはダメだって言ってたけど・・・・・・・やっぱり柚希じゃ無理だよ」
「・・・・・・・・・誰に任せるんだ」
「シャルロット王女を領主にして柚希はサポートにまわった方がいいと思う」
「シャルロット王女だと!? さ、さすがにそれはダメだ。シャルロット王女は帝国に降伏したと言えども共和国復興を夢見ている。もしこのブレーメンを彼女に渡せばどうなるか・・・・・・・」
「どうなるの?」
友那は目を細めてそう言う。その表情はどこか楽しげだ。まるで悪戯している子供のようだ・・・・・・・・コイツ、当事者意識が低いというか・・・・・この状況を楽しんでいるみたいなところがあるよな~
「どうなるも何も運が悪ければ俺の首が物理的に飛ぶ。あと友那も俺と同じ運命をたどることになるな。まあ運が良ければシャルロット王女の配下くらいにはなれるんじゃないかな・・・・・・・・・まあ帝国に敵対することには変わりはないけどな」
「・・・・・・・・・ねぇ、なんで柚希はシャルロット王女を引き取ったの? シャルロット王女から柚希の誘いに即答したって聞いてるけど」
シャルロット王女のことで友那が何を嫉妬しているのかわからないがムスッとしている。
「困っている奴がいれば助けるのが俺の信念だからな・・・・・・アハハ」
「何かに利用しようとしているでしょ?」
「・・・・・・・いや今回は純粋に助けたかっただけだから」
本当は利用してやろうって腹だけど話すと怒られそうだし・・・・・あとあまり問い詰められるとシャルロット王女が俺のことを気に入って結婚とかいう話を漏らしかねない。
「シャルロット王女、柚希のことが大好きらしいよ」
「ブホッ!! ・・・・・・・・な、なんで知ってるんだよ!?」
飲んでいたコーヒーを盛大に吹いた。
「え? だってシャルロット王女が直接、私に言ってきたんだもん。本当にシャルロット王女と結婚するの?」
「・・・・・・・わからないな」
「いい加減、返答してあげないとかわいそうだよ」
「そ、そうだな・・・・・・・・」
そう言うと友那は部屋を出ていった。




