第29話 参謀総長の刑死
機巧暦2139年11月・ドイツ帝国帝都ベルリン
「失礼いたします。お呼びですか陛下」
「呼ばれたから来たのであろう?」
「そうでしたな・・・・・・・・」
ドイツ帝国・第3代皇帝・イリアス=ブランデンブルクは自室に参謀総長のヘルムート=ヴィーリッヒを呼び出していた。イリアス=ブランデンブルクはドイツ統一した祖父の代から3代目にあたる。プロイセン王国から数えると9代目にあたる。長いストレートの黒髪に凜とした表情はどこか冷徹さを感じさせる。
「ヘルムート、お前のお陰で邪魔な奴らはすべて排除することに成功した。礼を言うぞ」
「有難き幸せ」
「ヘルムートに命じたいことがあるんだが引き受けてもらえるだろうか?」
「何なりと」
ヘルムートはイリアスの前に跪いた。
「これをお前に渡す。これが私が命じる最後の命令だ」
「はっ」
イリアスは書簡をヘルムートに渡した。
「国難において国政を妨害した罪で処断する者は以下の如し、内務大臣・フリードリヒ=アレス、参謀総長・ヘルムート=ヴィーリッヒ・・・・・・・・・陛下これはどういうことです!?」
「その書面の通りだ。お前らは私が即位してから多くの忠臣を虐殺したであろう? その報いだと思え」
「・・・・・・・・・・虐殺は致しましたが、それらは陛下の命令があったからやったのです。それを私どもが勝手にやったなどと言われては」
逮捕状や死刑執行の最終判断は皇帝が行うの当たり前でヘルムートが言うようにイリアスはその許可を出していた。ヘルムートは参謀総長の身分だが宰相の身分も兼ねていた。宰相といっても小間使い程度の権利しかない。これはイリアスの代に宰相制度を廃止し皇帝自らが政治を行いやすいようにするためだった。
「うむ。確かにお前が出してきた書面にサインはしたが・・・・・・・・・・・・・・私が殺せと言ったのは佞臣や奸臣どもだ。お前は書面上では奸臣や佞臣どもの名を書き連ねていたが実際に死刑執行を行ったのは罪もない忠臣だった・・・・・・・・・・・さぁ問おう。奸臣や佞臣を処罰せずに何処へやった?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ここで吐けば楽に殺してやる。吐かなければ八つ裂きにしてやろう」
イリアスはゾッとするような冷たいオーラを纏いヘルムートを問い詰めた。
「吐くつもりはありませんよ」
「死罪を選ぶと? お前が死罪となれば連座で妻子まで死罪になる。お前が罪を認めれば白状すれば妻子どもの生活は保障するが・・・・・・・・・それでも認めないか?」
「認める気はございません」
「わかった。謀反の罪でお前を八つ裂きの刑に処す。結果は残念なことになったが今までのことには礼を言うぞ」
その翌日、内務大臣・フリードリヒ=アレス、参謀総長・ヘルムート=ヴィーリッヒの公開処刑が行われた。本人は関節の骨を棍棒で砕かれてから手足を4台の馬車に繋がれ文字通りの八つ裂きとなった。さらに彼らの妻子や愛妾を含め50名が串刺しの刑に処された。その後、2人が匿っていた罪人も逮捕され斬首となった。