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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 雨月狂華
序章 異世界召喚
28/222

第28話 ルーアンからの撤退

機巧暦2139年11月・北フランス共和国ルーアン



アーチゾルテ=レーゲル陸軍大将が率いる第一師団《2万》とアルベルト=カーチス陸軍大将が率いる第二師団《2万》は西フランス軍と北フランス軍に阻まれ当初の勢いは完全に失っていた。



「なぁ、いつになったら動くんだろう?」



「はぁ塹壕に籠って3か月・・・・・・・・俺らの将軍は敵に怖気づいたのか」



「もうこんな戦いは嫌だぜ。早く突撃したいんだけどな~」

 


予想以上の長滞陣に兵士たちは戸惑っていた。長滞陣が長引けば長引くほど士気の低下を招く。







ドイツ本営ーーーー



「レーゲル総攻撃の合図をしろ。俺が敵を引き付けている間に敵の背後を突け」



「しかし・・・・・・・・」



「いいから早く合図を・・・・・・レーゲル!!」



指揮所ではレーゲルとカーチスが口論していた。



「・・・・・・・・撤退だ。モンスに撤退するぞ」



「なっ!! 撤退の命令は参謀本部から出てないぞ?」



「軍が壊滅すればそれこそ軍法会議ものだ・・・・・・・・俺は名誉より実をとるつもりだ」



「?」



「軍法会議にかけられたとしても名誉を剥奪されるにすぎない。名誉なんてものは後々の活躍次第でいくらでも挽回できる。でもここで撤退を拒んでみろ。軍が壊滅する。そうなれば将兵からの信頼はなくなる。我らの指揮官は名誉を重んじ兵の命を軽んじると思われれば将としてのキャリアは終わりだ」

 


レーゲルは神妙な面持ちそう言う。



「フッ まあそうかもな」



「お取込み中すいません」



「ん」



「どうした?」



二人が話していると将校が割り込んできた。



「参謀本部からお二方に労いとして贈り物が送られてきていて・・・・・・・・・」



「参謀本部から?」



「・・・・・・・・・・・」



「ご覧になれますか?」 



「見なければわからないだろう」



レーゲルとカーチスはテントを出るとそこには馬車が4台とまっていた。



「これが参謀本部からの贈り物か?」



「はい」



各馬車の荷台には樽が2つずつ載っている。



「ワインか・・・・・・・・」



「そうですね」



「・・・・・・・・・な、なんで酒が?」 



「先程も申しましたが労いということです。レーゲル大将もカーチス大将も連戦でお疲れの模様とのことでヘルムート参謀総長が何か労いの物を送らなければと言い出しまして・・・・・・・・」



「それで酒というわけか・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・」



将校の言葉にレーゲルは冷静に聞いていたがカーチスは何か言いたげにしていた。 



「将校よ。参謀本部には我らが大喜びしていたと伝えてくれ・・・・・・・・・」



「わかりました。ではこれで失礼いたします」



将校はそういうと去っていった。



「噓つきだな。とても喜んでいる表情じゃねぇよ」



「・・・・・・・・・無駄な争いはしたくないからな」

 


「そういう問題じゃねぇだろ? 俺たちが今一番欲しいのは酒なんかじゃないだろ。武器や弾薬、食料や医療用品だろ? 違うか?」



「カーチス、撤退準備の計画をたてるから人を集めてくれ。言い争いをしたとしても時間と体力の無駄だ。これ以上はやめてくれ」



「・・・・・・・・・・・わ、わかった」



レーゲルの悲痛な表情を見たカーチスは何か言おうとしたが黙った。その後、第一師団と第二師団は撤退作戦を協議した。この時、第一師団《2万》と第二師団《2万》はモンス戦とルーアン戦で大幅に兵力をすり減らしていて第一師団は2万から1万2千に、第二師団は2万から8千になっていた。



「さて撤退するにも敵から背後を突かれてはマズいな。そのため殿《しんがり》を決めたい・・・・・・・・第一師団《1万2千》かそれとも俺の第二師団《8千》・・・・・・・・・レーゲルはどうする?」 



「どうするとは?」



「誰が殿《しんがり》の役目をやるかって話だよ」



「殿《しんがり》はなしだ。壊滅寸前で連携もとれていない第二師団に任せられないな」



「な、なんだとテメェ!?」



レーゲルの物言いにキレたカーチスが胸倉をつかむ。



「殿《しんがり》は味方を捨て駒にする愚策だ。死ぬとわかっててこの場で即答できるわけないだろ? もし追撃した奴の中に魔術師でもいたらどうする? 師団単位で固まって移動していれば一瞬で消し炭になるのがオチだぞ」



「・・・・・どうすればいいんだよ」



「個々にバラバラに逃げ出すんだ。集団で逃げれば目立つ。夜中にバラバラで逃げれば被害が少なく済む」 



「でも全員がモンスに続く道を知ってるわけねぇよな? 必ず道に迷う奴もいるはずだ・・・・・・そういう場合は考えてるのか?」



カーチスがそう言うとレーゲルは机の上に広げられた地図を指差した。



「ルーアンからモンスに続く道は一つしかないから安心しろ。迷う奴がいればそいつは前代未聞の方向音痴ということになる。諸将はわかったらさっさと荷物をまとめて撤退の準備を進めてくれ」 



「ああ、わかった」



その後、諸将はそれぞれの陣営に戻ると兵士たちに全軍撤退を通達した。兵士たち地獄のようなルーアンからようやく撤退できると大喜びした。

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