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五話

「珠希、静香がきたよ!」

 人混みをかき分けて、由美子が一人の女性を連れてきた。


「――ごめんね、旦那の食事とか、子供のお風呂とかで遅くなっちゃった。今日は、お誕生日おめでとう。久しぶりだね、珠希!」

 大人になった静香は、化粧やアクセサリーで着飾っている。

 忙しい中、駆けつけて祝福までしてくれる友達に、頭が上がらない思いだった。


 大勢の友人たちを見かけたが、みんな着飾るのが上手だった。

 自分だけが、昔のまま取り残されているような錯覚に陥ってしまう。


「静香、いつの間に結婚したの? もしかすると独身なのって私たちだけなんじゃ……」

 由美子は、自虐的な言い方でふざけ始める。

 高校生のとき以来の対面は、学生時代を思い出して嬉しかった。


「結婚ねー、急だったから式挙げてないんだ。色々と報告が遅れてごめんね」

「ううん、いいよ。それより、毎年お祝いメッセージありがとね!」

 珠希がお礼を口にすると、静香は不思議そうな顔で疑問を投げかけてきた。


「……私たち連絡先知らないよね? 今日だって由美子がSNSで探して連絡くれたんだもん」


「――じゃあ、これ……誰?」


 短いお祝いのメッセージが突然、不気味なメッセージに思えてきた。

 珠希と静香の好きな花である向日葵が、アイコンに設定されているのも偶然ではないだろう。


「ストーカーだったりして……って、そんなわけないか」

 追い打ちをかけるように由美子が軽い言葉で茶化した。

 胸に溜まる不安は、不気味さを増して珠希に襲いかかる。


「って……うそうそ、冗談。そんな顔しないでよ、お祝いのメッセージくれるだけでしょ? きっと知り合いの誰かだよ。今日ここにいるかもしれないし、元カレも全員呼んだわけだし、片っ端から声かけておいでよ。犯人は、この中にいる!」

 表情を強張らせたのを見たからか、由美子がフォローを入れてくれた。


 日常生活でストーカー被害に心当たりもなく、バースデーメッセージ以外の特別な変化は何も感じられなかった。

 言われてみれば、大したことではないのかもしれない。

 気がつけば、そう考えられるようになっていた。


 薄暗い店内を見渡すと、知り合い同士、仲良くなった者同士でグループが出来上がっている。

 婚活パーティー感覚で参加している人も、いるようだった。


 不気味ではあるが、友人たちと話せば嫌な気分が紛れるのではないか。

 または、誰の仕業かも分かるのではないか。

 珠希は深呼吸をして、入り口近くで大きな笑い声をあげる席へと足を向けた。


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