色欲耐性0
さやかはそのまま、身もふたもなく、高校生らしからぬ男女の関係性についてとうとうと語り、勇騎は半分以上理解できていないと思われるが、それを必死にメモしていく。
「男はね、自分のことを受け入れてくれる人が好きなの、馬鹿よね。ほんと、ありのままの自分のすべてが好きになってくれるわけないじゃない。それは、大人な、女の方が仕方ないって諦めているか、譲歩してもらっているだけなのにね。」
TVとかで見たことある男女論している。女性代表で話している。
「で、結果、何が言いたいかというと、商店街で樹里さんを偶然を装って待ち伏せして、荷物を持ったところで、うまくいったところで、よくあるいい人どまり、すでにバレてるけど、
あと、勇騎君の話を楽しそうに聞いているのは、そういう理由で樹里さんが合わせてくれているだけ、だいたい戦前の見たこともないヒーロー漫画やアニメの話をされてわかるわけないし楽しいわけがないでしょ。特にひどいのは自分の事しか話してないところ、本当に樹里さんのことに興味があるなら少しは相手に合わせることをしなさい。」
「でも、それだと間が持たなくて、樹里さん自分から話してくれないし」
「それはつまり、あなたが思うほど樹里はあなたのことを特別扱いしてない、心を許してないってことでしょ。ふつう好きなら、信頼してくれているなら、少しくらいは自分のことを話してくれるでしょ。そうじゃないってことはそういうことよ。いい、樹里さんは攻略難易度高いんだから、なんでメイドの格好をしているかっていうとあのメイド服を見れば大抵の人は獅子王家の使用人だってわかるから声をかけられないの、そのための格好。そうじゃないとあの子すぐに声かけられるから、それと、言っていいのかな、」
「何ですか!教えてください。」
「樹里ちゃん、2年前に、憧れていた男の人に騙されて借金までしちゃって、揚句捨てられたの、そのせいで親からは勘当されて、学校もやめて働くことになったの、」
それはかなり自業自得な、勇騎君から聞いているのと事情がだいぶん異なるような、
病気の両親を助けるためにとか言ってたのは、嘘?それとも勇騎君の妄想?
「そんな子が毎日仕事に追われて、余裕もない中、男とつきあうとか恋愛とかそういうのはまだする気持ちじゃないの。しかも相手が君じゃねぇ」
「でも、俺、ここにキス、してもらいました。」
「え?だから何?恩返しにしてもらっただけでしょ。それに樹里さん。少なくとも君を嫌っていないのは君のことを男というより、弟とくらいにしか思ってないからでしょ」
え、なにキスってそんなに軽いものなの?だめでしょそれは!ここ日本だよ
「弟、恋人を通り越して家族ですか!」
「そのポジティブさ、そこまで行くと少し尊敬できるわね。まぁ、それでいいんなら別にいいんだけど、でも勇騎君。それでいいの、弟だとHなことできないわよ。」
「それは困ります!一緒にお風呂とか、あぁ、だめです!これ以上は!」
あぁ、そういう知識はあるんだ。馬鹿なくせに、
「あんた本当に欲望に忠実ね。」
「それはそれ、これはこれです。一途な思いは純愛です!別に樹里さんの体が目的じゃありません。でもそういうこともしたいですけど、まずは樹里さんに好かれたいです!」
「そう、そうね。じゃとりあえず、私も落ち着いてご飯食べたいから、アドバイス。
一つ、今みたいに、がっつり行くのはやめなさい。私がこうして昼休みとかに少しずつ女の子への接し方を教えてあげるから、それに獅子王会長から嫌われているんだから、あんまり目につくとそのうち近寄れなくなるわよ。」
「でも、それじゃ」
「今は向うにもそういう気もなければ、勇騎君にそういう気持ちにさせる技量も、そもそも魅力もない。まずはそこを整えてからよ。このままだと逆効果。今はわずかにプラスだけどすぐにマイナスになりかねない。世の中には無関心より悪印象のほうがいいなんていう馬鹿もいるけど、どう考えても無関心のほうがましだから、興味を持ってもらえるようになればすぐに好感度上がるけど、悪い印象はいつまでも心のどこかで引っかかるわ。
いい、恋愛は戦いよ。戦で準備を怠るとどうなるか、分かるわね。」
「はっ!流石、軍師、おっしゃる通りです!」
「よし、それでもう一つのアドバイス、こっちが重要。」
「何でしょうか」
「目線に気をつけなさい。今も胸ばかり見るのやめなさい。君の目線はあからさますぎる、髪型とか、服装とかの変化には全然目を行かないくせに体ばかり見ているでしょ」
「い、いや、そんなことは」
「あんた私が、少し胸元開けてたら、ちらちらずっと見てるの気づいているわよ。」
「い、いえ、決してそういうわけでは」
「勇騎君、ちょっと話が」
明らかに本気の殺気を必死に抑えながら翔真が手招きする。
「そ、それに!樹里さんいっつもメイド服じゃないですか」
「同じじゃないわよ。あの子なりにあの中でいつもアレンジしてるじゃない。小物とか髪留めとかはほとんど毎日違うでしょ。気づいてないでしょ、胸しか見てないから。ちなみに私のこの格好も改造制服どこが違うかわかる?」
「……」
「そういうことよ。」
「ぐ、軍師、俺はどうすればいいんですか!これでも見ないようにしてるつもりなんですけど、今まで女の子に接する機会なくて、あの匂いがするとどうしてもくらくらと」
「でしょうね。あんた下手したら龍千寺副会長にすら、好きになりそうな勢いだもんね。」
「あのスレンダーで、冷たい感じも捨てがたいものが、で、でも、俺は樹里さん一筋で、」
「それは分かってるから、兎に角まずは女に対する耐性をつけることね。しょっぱな、クラスの女子にちやほやされたのがまずかったわね。あれのせいで完全に堕ちてるもんね。」
「さやかちゃんがそこまでしてあげる必要ないよ。」
せっかくの昼休みをまたこうして邪魔をされる、
「いいじゃない、面白いから、なんか燃えるわね。私の手で勇騎君が男になっていくと考えると、……なによ、そんな不機嫌な顔しないでしょ。まさかこの程度でヤキモチ?」
「……そんなんじゃないけど」
「以外ね、でも安心して、勇騎君は恋愛対象として期待なんかしてないわよ。でも、翔真君には期待はしてるわけよ。私の思いもしないサプライズを待っているわよ。」
「な、だから言っただろ、彼女は手に余るって、」




