#闘技会8
#は目線が主人公以外のときに付けていこうと思います。
サブタイトルが変わらない場合だけですが……(*´-`)
なぜだかレゲル様がやって来て少し喋った。
試合前に俺とヘクと話にきたと言っていたな。試合に呼ばれたからわりとすぐレゲル様と別れたけど。
「試合前に補佐官様とお喋りか。ずいぶんと余裕だな」
嫌味ったらしい口調でそんなことを言ったのは同期の首席、コレンだった。騎士団に入団してすぐ、次席だったヘクとちょっとした揉め事が起こって、解決のために行った決闘であっさりと負けたやつ。
その揉め事は俺もおもいっきり関係しているんだが……まあ、それは置いといて、コレンはヘクに負けて以来、ヘクを目の敵にしている。
面と向かっては嫌がらせをしていないようだが、俺の知らないところでヘクが虐められていないか心配だ。
だが、言い返さないヘクもヘクだ。こいつを打ち負かしたときのヘクはどこへ行ったのだろう。
「だからなんだ。お前、レゲル様に話しかけられたら無視でもするのかよ」
「確かにできねーな、でもよ、平民の出なのに喋りに来るなんて、少し不真面目じゃ……」
「どの口がそんなこと言えんだよ、少なくともお前よりはずっと真面目な人だ」
コレンは目元をピクピクさせながら怒っている。やっぱりこいつは嫌いだ。あれほどひどくヘクに負けた挙げ句、レゲル様まで馬鹿にしている。学習能力皆無だなと思っていたが、そもそも頭が無いんじゃないか?
「もう始まるみたいだし、もういいから行こうよ」
ヘクに言われ、舞台の方を見る。確かに俺の前の試合は終わっていた。
「そうだな、こんなのと付き合ってたら自分が馬鹿になりそうだ」
コレンがおもいっきり睨んできたが、無視だ無視。相手するだけ無駄だし。
案内の先輩騎士に付いて舞台に上がる、視線が刺さってる、こんなたくさんの人に見られながら試合をするなんて初めてだし。それになんか、各区の騎士団の局長辺りの席は特に目の色が違う。一応、俺達は王都騎士団の『期待の新人』らしいし。
相手は見たことがない顔、まあサルア区の騎士団に知り合いいないしな。
向かい合ってお互いに礼をする。少し距離をとって木製の剣を手に取ると、審判の騎士が試合開始の合図をした。
普通試合と複試合をいくつかこなして、ようやく昼の休憩時間になった。俺もヘクも今のところどれも勝ち残っているが、普通試合と複試合の間隔が短い時とかあって疲れた。
にしても、試合が既に終わっている新人はのんびりしてるな。
ちなみにあの馬鹿、コレンも首席なだけあってまだ残っている。実力はあるのに、実に残念なやつ。
簡単な食事を配ってくれるテントでまだ試合があるし、軽めにしようとサンドイッチを受け取った。冷えた果汁も一緒に渡される。
座るところを探していると、少し前に試合が終わったらしいヘクが他の友人と話をしながら、俺と同じような軽めの昼食をとっていた。
「座っていいか?」
「あっ、お疲れ様。ここ空いてるよ」
ヘクは向かい側の椅子を指差して言った。
「ありがと、お前も残ってるんだろ」
ヘクは小さくうなずいた。自信を持てばもっと強くなるはずのに、勿体ないな。
「ヘク、お前わざわざデルグと付き合う必要はないぜ。外ではへらへらしててもどうせ部屋じゃ偉そうなんじゃねーの?」
突然コレンが取り巻きどもを連れてそんなことを言った。
とたんに、俺の前、つまりヘクの方から妙な空気……殺気のようなものが漂い始めた。
「おい……ヘク……」
笑っているコレン達はヘクの様子が変わったことに気づいていない。
「今まででは僕のことについてだったから何を言われても我慢してきたけどさ」
異様な雰囲気でコレンの方を見ようともせず、低く囁くような声でヘクが言う。
「でもさ、よく知りもしないくせに、デルグの悪口を言うとか、どの口がそんなこと言ってるんだ?」
……こんなに怒ってるヘクは初めて、というか怒ってることそのものを初めて見た。コレンもようやくその異様な雰囲気に気付いて少し怯んだようだったが、すぐ立ち直り口を開く。
「なんだと?お前誰に口を利いてると……」
「コレン様に話をしています。僕の目の前にいる貴族様に、です。そんなこともわからないんですか?さっきレゲル様の悪口を言っていましたよね。その時はデルグが言い返したから僕はなにも言わなかったけど、傲るのも大概にしろ。お前があの方に勝てるのはその馬鹿さくらいだ」
ヘクの口から考えもしなかった言葉が次々と出てきている。まさか、これがヘクの本音だったのか……?
コレンとその取り巻きも驚きのあまり口をパクパクさせている。
「な、んだと?もう一回言ってみろ!」
「二回も言わせないとわからないんですか?普段使ってない脳をたまには動かしたらどうです?それとも、使い方を忘れるくらい使ってないんだけなんですか?」
さすがに様子がおかしすぎる。まさか酒でも飲まされたのか……と思って、ヘクの飲みかけのグラスを見てみる。
匂いとかを嗅いでみたが、酒っぽいにおいもしない。
「何をしている?」
王都の騎士団の教官副長、イグルド様が呆れたようにテントに入ってきた。
いろいろありましたが、99話目になりました。
……かといって、次の100話で何かする、という予定はありませんが(超小声+震え声)
今はとにかくストックをためています。これでもかってほどためてます、が、ただ今プチスランプです。
展開はある程度決まったのに書けません。
きっといつかもとに戻ると信じて、他の作者様の小説を読むことにします(*´ω`*)




