#闘技会9
「いっ、イグルド様……」
ぐるりとテント内を見回したイグルド様は、最後にヘクとコレンの二人に目を止めた。
「まあ、ほとんど聞いてたけどな。ヘクにコレン、お前らな、剣士なら口じゃなくて剣で語れ。ちょうど次じゃねーか」
そんなことを言ってすぐ、俺格好いいこと言ったぜ、なんて言ったので、雰囲気はぶち壊しだ。
コレンは見られていたとわかり、少し動揺しているようだったが、ヘクは全く表情を崩すことなく、細めた目でコレンを睨み続けていた。
「そうですね。コレン様にはそっちの方がわかりやすいかもしれません」
おい、さすがに言い過ぎだろう……そう思って恐る恐るイグルド様の方を見ると、イグルド様はおかしそうに笑っていた。
そう言えばイグルド様、入団早々起こったあの騒動の報告を受けて大笑いしてたな。
ヘクとコレンが睨み合い、テント内に沈黙が漂う中、言いづらそうに案内役の騎士がヘクとコレンの名前を呼んだ。昼の休憩は終わりらしい。
二人は舞台に上がっていき、お互いに向かい合って礼をした。ある程度の距離をとったところで、審判の騎士は試合開始の合図をする。
俺がヘクを応援しようと、口を開きかけた時、何かが宙に舞い、軽い音を立てて落ちる。
が、落ちたものを確認する前に、俺は何がさっき落ちたのかがわかった。
舞台の上で、ヘクがコレンの喉元に木刀を突きつけていた。観戦していた観客同様、何が起きたのかわかっていない、呆然とした表情でコレンは立っている。
……その手にあったはずの木刀が、どこにも見当たらない。
多分、ヘクは開始の合図が終わるのと同時くらいにコレンの木刀を叩いて落としたのだ。この普通試合は、開始の合図を守り、木刀だけで行う、ということがルールだ。ヘクは一番手っ取り早い方法で、コレンを打ち負かしたようだ。
イグルド様は……こんなところでは笑えないから、無理やりこらえてるって感じか……?顔が引きつっているのが遠目からでもわかった。
「嘘だろ、あり得ない……」
呟くようにコレンは言う。信じられない、と思っているのがわかった。
「頭が使えなくても目くらい使えるでしょう?前を見てください」
審判の騎士も、目の前の状況に頭が付いていかなかったのだろう。少し遅れてヘクが勝利したという旗が上がった。
テントに戻ると、コレンが足早に取り巻きを引き連れ、テントから去っていくのが見えた。ヘクは友人に囲まれて何か言われている。晴れ晴れとした顔をしているから、悪口とかを言われているのでは無さそうだ。
「予想外だったな。あそこまで早く終わった試合はなかなかねーよ」
イグルド様はテントに入ってくるやいなや、口に手を当てて大笑いし始めた。
「イグルド様、笑いすぎです」
放っておいたらいつまでも笑い続けていそうなので、俺はイグルド様を少し呆れたように見ながら言った。
「ああ、そうだな。でもよ、まさかあんなに……ハハッ」
これは、何を言っても思い出させるだけで無駄っぽいな。
「デルグ、呼ばれてるぞ」
ヘクを取り囲んでいた友人の一人が案内役の騎士の方を指差した。
そういや次の試合俺だったな。
これに勝つと、ヘクと対戦になるんだよな。楽しみではあるんだが……
まあ今はその事を考えていてもあまり意味がないか。次の相手はここまで勝ち残った奴だし、試合で絶対に勝てるという保証はない。
「頑張ってね」
いつの間にかヘクが俺の横に立っていた。
「ああ、お前と試合してーし」
俺はヘクを見てまた思い出し笑いをしているイグルド様に一礼して、試合へ向かった。
100話目です( ´∀`)
特に何かすることはできませんでしたが、100話目です(まあ1話が短めなので予想はしていましたが……)
何かやってほしいことがございましたら、いつでもお寄せください(。-∀-)




