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邪精霊3

殿下はきっと一人静かに酒を飲みたい気分なのだろうが、 身分が身分なので間断なく貴族たちから話しかけられてい た。

しかし、私の姿を見出すと素早く近付いて来られた。 「殿下、フェターシャ様が殿下にお伝えしたいことがある そうです。外にお越し願えますか?」

「ああ、構わないが……」

怪訝そうにしながらも殿下は私の後についてパーティー会場から出てくる。

フェターシャ嬢は殿下の姿を見て少しだけ身を震わせた。

「何があった?」

私に聴いてはいけませんよ。フェターシャ様に聴いてください。そういうわけで私は目でフェターシャ嬢に話すように促した。

「実は……」

フェターシャ嬢の話す声は少し震えていた。

全てを話し終えたフェターシャ嬢は恥ずかしそうにうつむいてしまった。

「殿下の神精霊は邪精霊が見えていますか?」

「ああ、あの辺りに黒い靄があると教えてくれた」

そう言って殿下が指差したのは先ほどフェターシャ嬢が邪精霊がいると指した方向と一致していた。

「祓えそうですか?」

「邪精霊祓いは一度見たことがあるだけだ。あまり気分のいいものではない」

殿下はそのときのことを思い出しているのか、口の端を少し歪めている。

「邪精霊の断末魔の叫びのことですか?」

読んだことがあるだけなので、実際はどんなものなのか知らないが、とにかく不快で、耳を塞がずにはいられない音だとか。

「ああ、だから人手がほしいのだが……」

殿下はちらりとフェターシャ嬢の方を見る。思い人のためにも、こっそりとことを済ませたいようだ。

「殿下のお知り合いで信頼できる神官はいらっしゃいますか」

殿下は少し考えて、一人の神官の名前を言った。

「ヘリアル・ロウラという神官がいる。私が以前見た邪精霊祓いをした神官は彼だ。私が最も信頼してる神官でもある」

「ここに来ていますか?」

「ああ、今から呼ぶ。今精霊に頼んだ。すぐ来るだろう」

すると私は用無しっぽいなぁ。まあとりあえずそのヘリアルさんという神官が来るのを待とう。

しばらく待つと、初老の男がこちらに向かってやって来た。

「殿下、お呼びですか?」

「ああ、彼女が……」

殿下が一通り説明すると、ヘリアルさんは驚いたようにフェターシャ嬢を見た。

「そんなことが……ええ、承りました。殿下とフェターシャ様のようなお方の助けになるのであればいくらでもお手伝いいたします」

「頼む、この場で出来るか?外に出るのは目立つ」

まあ殿下とフェターシャ嬢の二人だけならまだしも、神官のヘリアルさんまでいたら怪しいからね。

「広さはあまり関係がありません。問題は叫びです。あれが邪精霊祓いで一番厄介ですから」

「その叫びというのは、物理的なものですか?だとすれば私の風精霊で押さえることができます」

普通の音は空気の振動だから、風精霊に空気を操ってもらえれば押さえられる。

「ええと、半分可能です。あれは物理的なものと、精霊側どちらにも響きますから。物理的な方は精霊使いの力で、精霊側は我々神精霊使いの防御壁で押さえます。しかし、あなたが凄腕の精霊使いであることは私も知っていますが、一人で押さえられますか?」

「何名の精霊使いでいつもは押さえるんですか?」

「前回は四人……です」

「ならば大丈夫です」

私は目の前をふわふわと漂っている風精霊に目を向けた。やる気に満ち溢れた目をしてるからきっと大丈夫だろう。他の精霊達にはこのあたりにできるだけ人を近付けないようにしてもらう。

案外用無しじゃなさそうだ。

「では、お任せします」

ヘリアルさんは少し不安げながらも承諾してくれた。

「ですが我々……殿下とフェターシャ様、もちろんレゲル様は叫びを聴かなければならないでしょう。心の準備をなさってください」

全員が黙って頷いた。







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