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邪精霊2

外に出るとメイドや使用人の視線が刺さる。私だって今の状況はさっぱりわからない。

「あの、どのようなご用件でしょうか」

リフィアル嬢はあたりに人がいないかしきりに確認しているようだ。さっき精霊に確認させたから聞き耳を立てている人はいないとわかっている。

「単刀直入にお訊きしますわ、お姉様のご様子が最近妙なんです。そうですわね……あのパーティーの後からぼんやりなさることが増えました、何かお心当たりはございません?」

あのパーティー?あっ、魔物に襲われた離宮のパーティーか。あのパーティーでクラヴィッテ殿下とフェターシャ嬢は知り合ったんだったな。

「殿下のことでしょうか」

「ええ、まあ……」

リフィアル嬢は歯切れ悪そうに言った。確かにあのときなぜか殿下に呼ばれて近くにいたんだ。だから何か知ってると思われたのかな。

「とにかく、お姉様にお尋ねになって」

「えっ?なぜ私がお尋ねするのですか?リフィアル様がお尋ねになればよろしいのでは……」

「私が聞いても意味がありませんの。少しお待ちになってください。私はお姉様を呼んできますわ」

そう言い残してリフィアル嬢はパーティー会場に消えていく。私は何もしていない気がするんですが……

考えてはみるけど、特に思い当たる節はない。ハンカチが気に入らなかったのかなとか思ったけど、そんなことで悩むお方ではないはず。

そうこうしているうちに、リフィアル嬢がフェターシャ嬢を連れて戻ってきた。

「私は戻っておりますね」

へっ?お姉様が何で悩んでいるのか知りたいんじゃないの?私に何をしろと……

「あの、何か……?」

言いづらそうにフェターシャ嬢が口を開く。私が呼んだみたいな感じだし、私から話しかけた方がよかったかなと今さらになって反省する。

「妹が何かしたのですか?失礼なことでも……」

「いえ、そんなことはありません。リフィアル様はフェターシャ様のことを心配なさってこのようなことを」

「このようなこと?」

「このところフェターシャ様の様子がおかしいから、とおっしゃっていました。何かあったのですか?そういえば以前精霊のことで話があるとおっしゃっていなしたが、その事と何か関係が?」

精霊のことでとか、そんな用事で殿下に呼ばれたはず。きっとその事だろう。

「ええ、はい。精霊についてお聞きしたいことが」

フェターシャ嬢は言いづらそうにしている。

「このあたりには聞き耳を立てているような者はおりません。安心してください」

私がそう言うと、フェターシャ嬢は小さな声で一言呟く。

「邪精霊……」

「じゃ、邪精霊とおっしゃいましたか」

フェターシャ嬢は黙ってうなずく。知り合いが取り憑かれたのか、それとも……

「少し前から部屋の隅や廊下に何かの気配を感じるようになりました。どこへ行っても気配が消えなくて……思いきって見てみましたら、黒い靄のようなものが見えました。どう考えてみても精霊ではなくて、どこかで耳にした悪霊、邪精霊ではないかと……恐ろしい噂しか情報がなかったので誰にも話せませんでした。レゲル様は精霊にお詳しいので、何か知っているかと……」

邪精霊、取り憑いた人を死に至らしめる精霊、いや、精霊と呼んでもいいのかわからない存在。物語に登場する悪霊というのはほとんどがこれのことだ。

「申し訳ありません、私は邪精霊について知ってはいますが、対処することはできません」

「そんな……」

フェターシャ嬢は思わずといった様子で口許を押さえた。

「しかし、私には祓えないというだけです。祓う方法はあります。邪精霊は今、どのあたりにいますか?」

私はフェターシャ嬢を安心させるためにできるだけ笑顔で訊ねる。フェターシャ嬢はある方向を指差した。

指差した方向を精霊に見てもらうけれど、なにもいない、という返事が返ってきただけだ。

「普通の精霊は邪精霊を見ることができません。同じように、干渉も不可能なのです」

これが邪精霊が精霊なのかそうでないのか議論されている理由の一つだ。

「しかし、神精霊であれば干渉して祓うことができます」

これは読んだだけなので実際のところどういう風に祓うのかは知らない。ただ、神精霊が邪精霊を祓うことができる、というのは事実。

だから邪精霊祓いは神殿に依頼するのが普通だ。まあ法外なお金がかかり、かつ邪精霊は不幸の象徴なので、大きな家では家柄に傷がつく。きっとフェターシャ嬢はこの事を危惧して誰にも話せなかったのだ。

フェターシャ嬢が知っているかは知らないが、昔ある貴族の家で邪精霊憑きが出た。家が傷つくのを恐れ、その邪精霊憑きは地下牢に幽閉されて狂い死んだという。こういう話は決して少なくはない。

「クラヴィッテ殿下にお頼みしてはどうですか?あのお方は神官位を持っていらっしゃいますし、なんとかなるかもしれません」

しかもこのまま殿下がフェターシャ嬢を助ければ殿下の株も上がる。フェターシャ嬢が進展を拒んでいた理由がこれだとしたら、一石二鳥どころか一石三鳥、いいことだらけだ。私もこの事から身を引けるし。

そうと決まれば、と私は殿下を呼びに再び会場に戻った。



勘のよろしい妹と、鈍感すぎるレゲル君。

突っ込み、募集中です(笑)

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