子供達6
綺麗にレルチェを避けたカイを見て騎士は目を見開いた。
「すごいなお前、今のは俺でも避けれねーよ」
「僕もびっくりしました」
カイも自分がやったことに対して驚いているようだ。
「君もしかしてこっちの才能がるんじゃねーの?来年あたり入団しねーか、いいとこに行けそうだぞ」
そして騎士は勧誘を始めた。まあ今のあれが偶然にせよなんにせよ、避けられたのはすごいことだ。言われてみれば向いているかもしれない。
「しかし次の試験まではまだしばらくありますよ。それまでどうするんです?」
「あっ……そりゃそうだ。途中入団とか聞いたことありませんよね」
どこか預かってくれるようなところがあればいいんだけど、こんな言い方は可哀想だけど精霊の目だし。あんまり好んで引き取ってくれる所はない。突然視線が泳いだり変な方向を見始めたりするのが不気味に思われることも多いらしいし。
「そうだ、お前掃除とか洗濯できるか?」
「えっ……掃除とか洗濯ですか?できますよ」
「じゃあさ、騎士団の手伝いとかどうだ?給料が出るかはサイラスさん次第だけどよ、入団試験くらいまでなら世話できそうだ。サイラスさんこの前手伝いが欲しいとかぼやいてたし」
これは名案のように思われるけど、騎士団には一応お手伝いさんがいるしなぁ、仕事を取ることにならないだろうか。
「他の方の仕事を盗るのは……」
「そこはサイラスさんに相談だよ、行こうぜ」
そう言って半ば無理やりカイの手を引っ張っていく騎士、まあ一つ問題が片付くならいいのかな。引き取ってもいい理由があるわけだし。
とりあえず話し合いの結果を待つか、残ったのはレダだな。やっぱり孤児院しかないかな。彼女には悪いが、紹介できるところがないから。
今はまだ解決策が見付けられないので、とりあえずめいめい自由にしている子供たちの様子を眺めていることにした。
しばらくすると、一人の女性が男性を伴って広間に入ってきた。お手伝いさんとか騎士ではなさそう。誰かの両親が到着したのかな。
少ししてその二人は一人の女の子と目が合い、吸い寄せられるようにお互い抱きつきあっていた。感動の再会というやつだろうか。お母さんらしき人の目から涙が零れたのが見える。私もそれを見て目の奥がじんとなった。
ひとしきり抱き合った後、その家族は辺りを見回して誰かを探しているようだった。そしてその家族と目が合う。
「レゲル様!」
そう言いながら近寄ってくる家族、探していたのは私だったのか。
「先日から急にいなくなって、とても心配していたんです。なんてお礼を言えばいいのか、本当にありがとうございます。あなたはこの子の命の恩人です!」
「手伝えることをしただけです。この子達を助けられて本当によかった」
私は私の服の裾を掴んでいる女の子の頭を撫でた。見上げてきた女の子と目を合わせてにっこり笑う。
「お家に帰ってゆっくり休みなさい。お母さんとお父さんが迎えに来てくれたんだから。ね?」
素直にこっくりとうなずいた女の子は何か言いたげにもじもじしている。私は女の子の口元に耳を近付けた。
「わたしね、お嫁さんに行くならレゲル様のところがいい。こんなこと言ったらお父さんに怒られちゃうけど」
一瞬、口の端がピクピク痙攣した。すぐに気を取り直す。子供の言うことだから、気にしてはいけない。
とりあえずそっかとだけ言って、家族を見送った。
なんて答えればいいのかわからないので、それ以上は考えない。
他にもなん組かの家族がやって来て、子供との感動の再開を果たし、お礼を言って帰っていく。
その間、何人かの女の子にさっきの子と同じようなことを言われた。気にしてはいけないと自分に言い聞かせたけど。
気付けばほとんどの子供が家に帰っていったようで、広間がさっきよりずいぶんと広く見えた。




