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誘拐犯

商店街を出てしまえばあんまり建物もなく、畑くらいしか特にない。

しかも今冬だから作物もほとんど植わってないし、植わってても低いのだけだから視界良好。

なので精霊が指しているものはすぐにわかったけど。

なんの違和感もない、ただの荷車だ。

まわりに農家っぽい格好の男たちがいて、まさにこれから作物を出荷するかのよう。

まあ誘拐犯だってわかってて見るとまあ、だいたいどういう犯行なのかわかる。

どうせあの作物の中にミゼルを隠してるんだろうな。他にも被害者いるかもしれないけど。

でも私の精霊を抑えたんだからそれなりの精霊使いがいるはずだ。

私は精霊使いを油断させるために精霊達をいったん待機させた。

私の精霊の中で一番力の弱い植物精霊だけを連れて、私は堂々と誘拐犯達の方に近付いて話しかけた。

「こんにちは」

近付いてくる私を警戒する素振りも見せず誘拐犯達は挨拶を返してくれた。

「やあ兄ちゃん。あんまり見ねえ顔だが、里帰りかなんかかい?」

どうやら彼らは私のことを知らないらしい。まあ精霊を全然連れてないっていうのもあるけど。精霊連れてなかったら私はただのそこらの兄ちゃんだし。いや、姉ちゃん?どっちでも……よくないか。

「せっかくの年末なので戻ってきました。出荷ですか?ご苦労様です」

「そろそろ出発しなきゃならんからな……」

男の一人がそう言ってる間に後ろにまわられた。用心してたから対処できるけど、まさか私も狙われるとは。

普通の人が近付いてったら危ないな。

キンッと金属と金属の掠れる音がした。ナイフを首筋にあてて脅そうって算段か。いちいちやり方が古い。

思わぬ反撃に驚いたのか誘拐犯達はぽけっとした顔でこっちを見ている。

「何だお前!」

「そちらこそ物騒なことをしてくれますね。おかげで正当防衛って理由で安心して攻撃できますけど」

私は笑いながら言ってやる。

舐められたとしか思わなかったのか誘拐犯達は反撃してきた。

植物精霊が捕まってしまい、精霊を押さえて勝ったとでも思ったのか攻撃の手が緩まった。

「精霊が捕まっちまったなあ。まだやるか?」

「兄ちゃんくらいの年のやつは値は下がるけどよ、一応売れるしな」

この程度で勝った気でいるとはこいつらずいぶんと小物だな。

ナイフ使いも雑だし、オルトの言ってた誘拐事件の犯人ってこいつらかな。

「もちろんやりますよ」

私は近くでニヤニヤしてる長髪の男の髪を掴んだ。

後ろで括ってるから掴みやすい。

「闘いに長髪は邪魔でしかないぞ」

なのでバッサリ切ってやる。頑張って伸ばしてるのかな。まあ売るためだったかもしれないけど。

「なにしやがる!」

髪をおもいっきり引っ張ったからか男は若干涙目。おかげでまったく怖くない。

私は髪を切られた男の首に腕を回してその首筋にナイフをあてる。

「人の妹誘拐しといてその台詞はないんじゃないか?髪の毛ならけっこう長めに切っといたし、売るには困らないよ」

私は男の前で髪の毛をちらつかせる。恨めしげにこっちを見ようとしてきた。

「妹って、お前さっきのガキの兄貴か!」

「妹を返してくれませんか?」

そう言うと誘拐犯は荷車からでっかい袋を出してそれに一緒に隠していたらしい剣をあてた。

「これだろ?お前の妹は。言っておくが俺はそいつの命なんてどうでもいい。殺せばお前の人質がいなくなるだけだぜ」

困ったものだ。できるだけ穏便に済まそうと思ってたからここで諦めてくれたら酌量の余地はあったんだけどなあ。

私は待機させていた精霊たちに合図を送った。

後悔させる程度にしとこうかななんて思ってたけど、甘かったなぁ。これならもう少しひどい目に合わせても大丈夫そうだ。





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