↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/276

年末年始と地元7

鍛冶屋で数本ナイフを注文しておいた。

私は精霊に刃を帯電させたり発熱させたりすることが多いので、普通の町の鍛冶屋では柄や刃そのものが特注になってしまうからだ。

ミゼルと手を繋いでしばらく歩く、さっきは朝と年末年始の賑わいで道には人が溢れていたのに、今は少し減って反対側のお店が見えるくらいだ。

鍛冶屋があったのは裏の方だったので元から人通りが少なかった。

なのでいきなり大通りに出ると少なくなっていても窮屈だ。

しかもじろじろこちらを見ている人が多い。

まあ人も少ない区だし、見知らぬ顔が混じってたら気になるのかな。私にとってみれば町が全く変わっていないのに人が変わってしまったんだけど。

『なぜあの者たちは主人の方をじろじろと、お知り合いですか?』

不快感丸出しで精霊たちが言う。他の人には見えてないからいいんだけど。

『用がないのなら見ないでいただきたいわ。主人はここに休みに来たのに、これじゃあ落ち着けないじゃない』

好き勝手に言い合う精霊たちをなにもしないようにとだけ言って無視する。

そろそろかなと思って近くのお店を見回すと、ある一店にだけお客が集中していた。

あそこって確かルナの働いてるお店だったような……住所は間違ってない。年末年始とはいえそこまで繁盛するものだろうか。しかも女の子ばかり。

少し引きぎみにお店に近付いていくと、一人の女の子と目が合った。

「あの方じゃない!?」

「うそっ、どこどこ?」

……まさか私か。こういう反応は何回もあったし。

補佐官になって初めてのパーティーや街中、祭典等々、こういう反応をされた。

それにこんな辺鄙な区には滅多に私みたいな有名な人間は来ないしね。移動劇団が来たくらいでも大騒ぎだし。

視線が痛い。情報源はきっとルナだろうな。昨日の夜はあんまり人に会わないように動いたし。

「兄ちゃん!」

主に女の子で構成された人混みからひょっこりルナが顔を出した。女の子たちから一斉に黄色い声があがる。

小走りでこちらにやって来たルナが少し申し訳なさそうに言った。

「兄ちゃんが戻ってきたって言っちゃったの。ゆっくりしてもらうつもりだったのに、ごめんね」

「仕方ないよ、そのうち戻ってきてることは知られただろうし」

どうせルナのお店に行ったらばれることだし、さっきの鍛冶屋からも伝わってく。まあこんなに人がいたのは想定外だけど。

「お店見てってもいい?どんなところで働いてるのか知りたいから」

ルナはうなずいてお店に戻っていく。でもお店の迷惑になるような……

女の子の目的は買い物じゃないだろうからいるだけだし、お店からしたらいい迷惑だろう。

行くべきか迷っていたら女の子が一斉にこちらに押し寄せてきた。

ルナがいたから遠慮してただけだったんだな。

「戻ってこられたんですね」

「一度お会いしたかったんです」

「王宮はどのようなところなんですか?」

一度にそんな言われても答えられないんだけどなあ。

「一度場所を動きませんか?ここではお店の営業の邪魔になってしまいます」

あえて迷惑そうな顔をせずに笑顔で女の子たちに提案する。変に緊張させても意味がないから。

女の子たちはやっと営業妨害に気付いて少し離れたところに移動する。こういうときの女の子の動きって想像しにくい。

ミゼルだけお店に行かせておこうとしたけど、私の手を握って離してくれない。ルナのとこにいた方がいいと思うけど。

「お嬢様方、私に何かご用がおありですか?」

どうせ私にとっては大したことのないことだろうけど。大半は私を見に来ただけだろうし。

話を振ってみると何も言わずにお互いキョロキョロと誰か何か言わないかと待っているようだ。

「振る舞いからして優雅よね」

「あか抜けてるっていうか、なんか世界が違うって感じよね」

「そりゃそうよ、だってレゲル様よ。この区誇る補佐官様だもの」

「向こうに思い人とかはいらっしゃるのかしら」

聞こえてますけど……

けっこう聞こえるものなんだよね。彼女達以外何も言ってないから。

「レゲル様の女性の好みってどんなのかしら?」

不意にそんな声がした。こっそり聞いたつもりなんだろうけどしっかり聞こえてます。それを聞いて女の子達はあれこれ勝手に予想を始めてるし。

「女性の好みですか?私の……」

『主人!妹様が変な男に連れていかれました!』

「は?」

今何て言った?妹様ってことはミゼルのこと?ルナはお店のはずだしね。

ミゼルにはお店までって精霊をつけておいたはずなのに!

『男も精霊使いでした。しかも複数連れです』

治安が悪くなってきてるとは聞いてたけど、まさかミゼルが誘拐されるとは……

『西に向かったそうです。追いかけています』

「すみません、通してください!」

私は女の子たちを押し退けて女の子の輪から出ようとした。

「レゲル様?何か……」

「申し訳ありません。急がなければなりませんので」

あっけにとられてる女の子たちを無視して私は精霊が教えてくれる方に向かって走る。

一応ルナの精霊にまで伝言を頼んでおいた。心配させるなぁ。

まあとりあえず誘拐犯には私の妹を拐ったことを絶対に後悔させてやる。

私の妹を拐うとはいい度胸だ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。