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年末年始と地元2

カチャカチャと鍵の開けられる音が聞こえる。

誰かが帰ってきたようだ。

すぐにリビングの扉が開いて誰かが入ってくる。

「あれ?暖かい……?」

この声はルラかルナのどっちかだ。久しぶりに聞く懐かしい声。帰ってきたんだなって実感がわく。

不意に部屋が明るくなった。

ランプに火をいれたのだろう。来たの昼間だったから私はランプなんて付けてないからね。

「兄ちゃん!?」

私は目を擦りながらソファーから起き上がる。

兄ちゃんか。直に呼ばれるのは久しぶりだ。というか忘れていなかったんだね。偉いよ。

いつでもどこでも、私のことは姉ちゃんじゃなくて兄ちゃんと呼ぶように精霊使になる直前に徹底的に教えた。

それこそ精霊に一週間くらいずっと監視させて少しでも姉と呼ぼうものなら軽くだが攻撃させた。

今も時々精霊を送って監視させてるという嘘もついている。念のためだけど。

「いつ戻ってきたの?知らせてくれればご飯とかも用意したのに」

長い髪をピンクのリボンで束ねてるからこっちはルラか。一応目の下のホクロのあるなしで見分けれるんだけど、ちょっと暗くて分かりにくい。

「みんな驚くかなと思って。ルラ以外のみんなはまだ仕事?」

「うん。ミゼルはルナが面倒見てくれててまだ戻ってきてないし、オルト兄ちゃんとアレスはお仕事だよ。年末だから忙しいんだって」

ちなみに私たち兄弟は父親違いにも関わらず、仲は良い。まあ喧嘩なんてしてる暇なかったし。

「年末なのに戻ってこれたの?去年は国の行事があるって言ってたのに」

「カーレル様に年末年始くらい一緒に過ごしてあげなさいって言われてね。だから年が明け三日までお休み、でも帰らなきゃいけないから二日までかな。その方に手土産ももらったんだよ。後でみんなで食べよ」

「うん!」

ルラは嬉しそうにうなずいてくれた。変わりなさそうでよかった。

「夕ご飯どうする?美味しいところにでも食べに行く?」

「食べに行くの?今から作ろうと思ってたんだけど……」

外食に行くことにまだ抵抗があるのか、ルラは乗り気じゃなさそう。

仕事柄外食はそこそこ行くから抵抗はなくなったんだよね。

少し隔たりを感じてしまった。

「ルラが作ってくれるの?じゃあ家で食べようか」

「美味しいご飯作るから待っててね」

ルラは張り切ってくれている。ルラのご飯かあ、食べたことない気がする。この前帰ってきたときは私が作ったから。

「楽しみにしてるよ。ルラの料理は初めてだよね」

「兄ちゃんがいなくなってからはずっと私が作ってるんだよ。始めはオルト兄ちゃんに教えてもらってたの」

「そっか、いつもありがとう」

ルラは野菜を切り始めた。サクサク切っているから相当上達してるんだろうな。楽しみだ。

「兄ちゃんも、毎月あんなに送ってきてくれてるけど……大丈夫なの?」

ルラは野菜を切る手を止めて不安げな表情で私を見ている。心配してくれているみたい。すごくいい妹を持ったな。

「大丈夫。自分の分は取ってあるから。それより私が送ってるお金使ってる?みんな働いてるなら家具とか買い換えれるんじゃない?」

「あんなお金使えないよ!みんながお仕事見つかるまでは使ってたけど、今は暮らしていけてるからもしものために貯めてるの……」

……送りすぎたのかな。いや、もしもの保険として役立ってるならいいんだけど。でもみんなにいい生活をしてほしいから送ってるのに使われないっていうのは寂しいな。

それに貯め込んでるのが周囲にバレたら盗まれてしまうこともある。

できることなら使ってほしい。

いつから貯め込んでるのかは知らないけど、けっこう貯まっているはずだ。

「それはいいことだけど……」

その時、再び扉が開く音がした。誰が帰ってきたのかな。

「ご飯いつ頃できそう……ってレゲル兄さん!帰ってきてたの?」

戻ってきたのは一番下の弟アレスだった。

子供ってすぐに成長するんだな。この前会ったときよりかなり背も延びてきて、男の子っぽい体つきになっている。

「休みがもらえたんだ。年末年始はここで過ごせそうだよ」

「いつまで?」

「年が明け三日までかな」

「七日も休みがもらえたの?去年の年末年始はあんなに忙しそうだったのに」

「休めって言われたくらいだから大丈夫」

アレスは少し心配そうだったけどうなずいてくれた。

「オルト兄さんももうすぐ帰ってくるし、ルナは帰りがけに少し見かけたよ」

興奮ぎみに教えてくれるので、こちらも嬉しくなる。

「みんな元気そうでよかったよ」

私は心からそう言った。





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