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訪問者

昨日のパーティーでは、あのあとに何人かの人からいろいろ聞かれた。

そしてなんと、王太子殿下と王妃様から直々に礼を言われた。慌ただしかったからお礼の品を後で送るとだけ伝えられてすぐに別れたけど。

私はとりあえずいつも通り出勤して、部屋の扉を叩いた。

返事はない。まあ予想してたけど。

カーレル様はまたどこかにいってしまっているようだ。昨日のこともあって私が来たのは出勤時間ギリギリなのですが。なんでいないんですか。

私は鍵を出して部屋の扉を開けようとした。

この部屋の鍵はカーレル様と私しか持っていない。

未処理の書類とか見られると不味いものがいろいろあるから。

カチャリと音を立てて扉が開いた。昨日休んだから多分書類がたまってるんだろうなと、少し憂鬱になりつつ部屋の中を見た。

「誰です?」

可愛いらしい声が聞こえた。しかも部屋の中から。

声のした方を見ると、私の椅子にふりふりのドレスに身を包んだ可愛らしい女の子が座っている。

誰?カーレル様のお嬢さん?確か子供が一人いるって聞いてたけど。十歳くらいかな。

「あなたがレゲルか?」

カーレル様の子供っぽい女の子は偉そうな態度でこっちを見た。ちょっとむかつくけど、子供相手にむきになることでもない。

「はい。カーレル様の補佐官を務めさせていただいております」

「噂で聞いていたが……思ったほど美男子ではないな」

さらっとストレートに言われた。

いくらなんでも初対面のくせにいろいろ失礼じゃないかな。

私は自分が世間で噂されるほど美男子であると思ったことはない。

周りにはもっとたくさん美男美女がいるのだ。そんな中に入っていけば私のこの容姿のなんと平凡なことだろうか。不細工ではないと思うけど。

とはいえ面と向かって言われると腹が立つ。

「期待というのは外れるものです」

「はじめからあなたの容姿に期待はしてませんよ」

「………」

思わず無言になった。

なんて口の悪いお子様だろう。ここまでになるとちょっとどころでなくかなり……将来が心配だ。

「そこは私の席です。これから仕事をしたいのでそこをおどきいただけませんか?」

私は一応下手に出る。どちらにせよ立場的に下ですし、いくらむかついたとはいえまだお子様だから。大人げないことはしませんよ。

「この机の上にはなにも無い」

お子様は私の机をてしてしと叩いた。

重要書類を机の上に起きっぱなしにするわけがないだろう。その鍵のかかった一番下の引き出しの中にどっさり入ってますよ。

あとは部屋の応接用の机にどっさりと。あまり重要でない書類が積まれてる。

『そんなに邪魔ならどけますよ』

『なんて生意気な子供なの』

気にしなくていいよ。子供の戯れ言だと思って聞き流しなさい。

「重要書類を机の上に起きっぱなしにはしませんよ」

それに王宮の仕事が回り始めればどさどさ書類は届く。他の書類が来る前にそれは片付けてしまいたい。というわけでそこを退いてくれ。

「ここで大人しくしておくように言われたのだ」

ここでってこの部屋でっていう意味だろう。部屋から出なければいい話だろうに。

「カーレル様がそうおっしゃったのですか?」

「もちろん。父上がそうおっしゃった」

父上か。やっぱりカーレル様の娘さんみたいだな。

「カーレル様を探しに行きます。部屋から出ないでくださいね」

「なぜ?待っていればそのうち父上はいらっしゃるのに」

こっちから探しにいった方が早いからに決まっているだろう。早くあなたを引き取ってもらうかカーレル様に面倒を見てもらってほしい。

「このままでは仕事が始められないので」

「私を一人にする気?せっかく人が来たと思ったのに」

なんでこんな生意気な子供と一緒にいなくちゃいけないんだ。いくらカーレル様のお嬢さんでもお断りです。

「少し外を見てきます」

私は部屋の外に出て扉を閉めた。あの子がどんな顔をしてるかは見てなかったけど、まあ気にしない。

とりあえず精霊に見てきてもらうことにした。

しばらく待つと、ここからそう遠くない廊下にいるらしい。

私は部屋を精霊に見張ってもらってカーレル様のいる方に小走りで向かった。

なんで子供を連れてきたんだろう。いろいろ問い詰めないと気がすまない。

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