23フライパンは他の飲食店からも注目を集め、アランの工房はパンケーキ用の道具だけでなく、様々な調理器具の製造でも評判を呼ぶようになった
「セレスティーナ、新しいフライパンを使えば、一度に焼けるパンケーキの数も増えるし、焼きムラもほとんどなくなるぞ」
アランが自信満々に新しいフライパンを見せてくれた。職人としての探求心が常に新しい技術を生み出している。
フライパンは他の飲食店からも注目を集め、アランの工房はパンケーキ用の道具だけでなく、様々な調理器具の製造でも評判を呼ぶようになった。
工房は、今や国の調理器具の発展を牽引する存在となっている。架け橋だ。お店が忙しくなるにつれてルミナの息子、つまり孫も、積極的に手伝ってくれるようになった。
小さなエプロンをつけてお客様に水を運んだり、テーブルを拭いたり。一生懸命働く姿はお客様からも「可愛いね」「偉いね」とたくさんの温かい言葉をもらう。アイドル扱い。
「おばあちゃま、僕、将来はお店でパンケーキを焼く人になりたい!」
孫が目を輝かせながら言ってくれた。聞いた時、胸はこれまでにないほど満たされて異国で築き上げてきたふわふわ亭が、次の世代へと受け継がれていく未来を想像すると、本当に幸せな気持ちになった。
ルミナもそんな息子の成長を温かい眼差しで見守り、お店の経営だけでなく魔導映画の制作や折り紙の普及活動も続けていて多忙な日々を送っている。いつも充実した笑顔が浮かんでいた。
「お母様、今日のパンケーキも最高にふわふわね! でもね、もっとたくさん食べたくなっちゃうの!」
孫が自分の顔よりも大きなパンケーキを頬張りながら、満足げに言う。無邪気な言葉を聞いた瞬間、頭の中にスパーン、ビシャーンと一つの新たな商売のアイデアが閃く。食べ放題というシステムである。
「そうね、本当に。こんなに美味しいパンケーキならいくらでも食べられちゃうわね。食べたいわよね」
孫の言葉を繰り返しながらルミナに目を向けた。
「ルミナ、アラン。実はね私、新しいサービスを思いついたの。それはね食べ放題というのだけれど」
二人とも首を傾げた。食べ放題という概念はない。
「食べ放題、?それは一体……?」
ルミナが興味津々といった様子で聞き返す。
「ええ。一定の料金を払えば、パンケーキを好きなだけ何枚でも食べられる、というサービスで。時間制限を設けてもいいし、飲み物もセットにしてもいいし」
説明するとアランは腕を組み、真剣な顔で考え始めた。
「なるほど……なるほど。それは面白い試みだ。たくさん食べるお客様にはお得だろうし、我々としても一度に多くのお客様を呼び込める可能性がある」
期待のある台詞。ルミナはすぐに懸念を口にした。
「でもお母様?好きなだけ食べられるとなると、材料費がかさんでしまわない?それに、パンケーキを焼くのに時間がかかるから、お客様を待たせてしまう可能性もあるし」
彼女の心配はもっとも。パンケーキは一枚一枚焼くのに手間がかかるし、材料も決して安くはない。
「そうか、ルミナの言う通りだな。だが、その分、一回あたりの客単価は上がるはず。それに新しい焼き台を増やしたり、焼くスピードを上げたりすれば対応できる」
ルミナの懸念を打ち消すように言う。安心しました。アランがいれば、きっと生産性の問題も解決できるだろう。
「そうなのよルミナ。それにね、食べ放題は、パンケーキだけでなく、店全体の宣伝にもなるはず。ふわふわ亭はこんなにも美味しくて、お得なパンケーキを提供しているってね」
一瞬の不安から期待へと変わっていく。唸る探求心は常に新しい挑戦を求めている。娘は行動的だ。
「なるほど……! パンケーキ食べ放題! 新しいブームになるかもしれない。お母様、すぐにでも準備を始めましょう。待てないわねぇっ」
興奮して立ち上がる。
「待ってルミナ。まずは、料金設定や時間制限、提供方法、綿密な計画が必要よ?アラン、その辺りの計算をお願いできる?」
アランは力強く頷く。
「任せてくれセレスティーナ。最高のプランを立ててみせる」
システムのアイデアがこの世界で新たな形となり、皆に喜びをもたらすことを想像し、大きな期待に胸を膨らませる。
パンケーキ食べ放題システムがまた一つ、ふわふわ亭に街に、新しい賑わいをもたらしてくれると。
「パンケーキの食べ放題なんて、本当に実現できる?想像以上に大変だわ」
提案してからそこそこ経った時の会話。ルミナが山と積まれたパンケーキの皿を前に、ため息をつく。パンケーキ食べ放題の導入に向けて、試作とシミュレーションを繰り返している。
「そうね。でも、最初から簡単なことなんてないわ?アランも言っていたでしょ。課題を一つずつクリアしていけばきっと成功するって」
励ましながらアランの方を見る。焼き台の設計図を広げ、真剣な顔で計算をしていた。
「材料の仕入れルートは確保できそうだ。あとは新しい焼き台の熱効率を上げられれば、もっと早く、たくさんのパンケーキが焼ける」
ルミナはすぐにアイデアを出す。
「じゃあお父様! 冷気の魔石を応用して、生地を素早く冷やして休ませる装置を作れないかしら?そうすれば、生地の準備時間も短縮できるわよっ」
「あっ、なるほど……面白いな。試してみる価値はあるな」
アランとルミナは互いの知識と技術を組み合わせ、次々と課題を解決していく。彼らの情熱は何よりの原動力。広がる期待とこちらも負けていられない。皆が試行錯誤の反響を知るのはあっという間のこと。




