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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
グラータ訪問

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結婚願望

結婚願望

 グラータへ出立は午後からだった。ラディウスの仕事の都合がどうしても午前中につかなかったからだ。急なスケジュール変更はヘルムートを相当悩ませたようで、

「本当に、これきりにして下さい」

 とラディウスはもう一度叱られていた。

 やっぱり王様は忙しいんだな……。


 

 移動は魔獣車で、今日はグラータ国内に入って一泊する。明日の昼頃にグラータ城へ到着予定だ。

 こっちに着て宿に宿泊するのは初めて。結構楽しみ。


 あたしはラディウスと同じ魔獣車だった。しかも2人乗り。

 ヘルムートは後ろの魔獣車で、外交担当の貴族となにやら打ち合わせがあるらしい。

「まさかラディウスと同じ車とは思ってなかったよ」

 車に乗り込むと、ラディウスの向かいに腰掛けてそう言った。

 

 外交だけど今日は謁見もないから、ラディウスの服装はシンプルだった。ちゃんと生地は高級品と分かる光沢があるけど、デザインは控えめだ。

「護衛対象は一つにまとまっていたほうがいいだほうが。警護する騎士の身にもなれ」

 確かに……。

 座席に座って足を組んでいるラディウスは、いつもの上から目線をあたしに向けている。

「先日の討伐では治療師として活躍したらしいじゃないか。ヘルムートから聞いているぞ?」

「そこまでじゃないよ……。データ収集が目的だったし。屋外での治療経験にはなったから、助かったけどね」

「そうか」

「獣人族が一番適正量が難しそう。翼人とドワーフは人間と同量で良さそうだったけど。ハーフやクォーターになればまた別だろうけどさ」

「なんだ、それは?」

「人間との混血だよ。両親のどちらかが人間、もしくは祖父母のどちらかが人間って組み合わせの子孫」

「あぁ、なるほど。国内だと1割もいないが、今後人間の国との交流が増えればそこも変わってくるからな」

 

 それで思い出したけど、ラディウスの種族――鬼人について聞いてみようか。 

 こうして見ても、ラディウスの外見は人間と変わりない。耳も尖ってないし、牙も角なければ爪も長くない。羽根があるのは鬼人だから?

 どこをもって『鬼人』と言うんだろう……。外観的な特徴はないのかな……。

 

 じっと見ていると、

「なんだ?」

 視線に気がついたラディウスが怪訝そうな顔をした。

「顔に何か付いているか?」

「いや、そうじゃなくて……。ちょっと聞きたいんだけどさ……」

「なんだ?」

「そのー……。答えにくかったら教えてくれなくてもいいんだけど……」

「どうした、勿体ぶった言い方をして。ヒカリらしくもない」

「そんなことないよっ。遠慮することくらいあるし!」

 思わず言い返すと、ニヤリとされた。

 

 もしかしてわざと言われてる……?

 遊ばれているのかもしれない。だとしたら悔しい……。

 今後は挑発に乗らないようにしよう。

 

「あのさ、ラディウスの種族についてなんだけど」

「種族?鬼人のことか?」

 随分とあっさり返された。

 言いにくいことじゃないらしい。

「そう。鬼人っ何?」

「何、と言われてもな……」

「何をもって鬼人になるの?見た目は人間と変わらないでしょ?」 

「まぁな。見た目は人間に近いが体力、力、魔力の強さが違う。魔族の中でも身体能力は獣人が高いが、鬼人は獣人より遥かに高い。基本的に好戦的で集団生活に向かないのも違う。あと、複数のスキル持ちである者が多いな」

「へぇ。外見より能力的な部分が違うってことか。羽根があるのは?」

「あれは俺のスキルの応用だ。他の鬼人にはないぞ」

 

 変身スキルの応用ってこと?

 便利だな。

 

「ラディウスって何個のスキルを持ってるの?多くない?」

「俺は人間と鬼人の混血だ。だから魔力もスキルも発現しやすいんだろう。しかし純粋な鬼人より力は弱いぞ」

「えっ?!それで?」

 

 嘘でしょ?!純血ならこんなものじゃないってこと?!

 

「父が純血の鬼人だ。俺よりはるかに力は強かったぞ」

「信じられない……」

「鬼人は長寿だが、エルフほどじゃない。せいぜい150歳だな。まぁ、父は200歳まで生きていたが」

「へ、へぇ……」

 

 お父さんが鬼人ってことは、お母さんが人間か。

 なら、お母さんとはかなり前に死に別れてることになるんだ。

 

「鬼人って数が少ないの?国内であんまり見たことないけど……」

「そうだな……。100人もいないんじゃないか?」

 絶滅危惧種じゃん。

「しかし、ヒカリは俺以外の鬼人に会っているぞ。城でお前に付いている侍女がそうだ」

「あの女の子?」

 

 ぱっと見、人間に見えた無口なあの子がそうなのか……。

 

「希少な純血の鬼人だ。能力が高すぎて行くところがなくてな。俺の元でなら制御が利くから雇っている」

 

 力を抑えたりコントロールするのが大変ってことかな?ハイスペックだけど扱いがムズいのか。

 

「もし暴走しても、ヒカリなら力でなんとでもなるからな。お前の侍女にした」

「なるほど……。鬼人って苦労が多いんだ」

「いかんせん、体力、力、魔力が強いからな。制御に苦労する者は多い。数が減った理由もそれだ」

 

 ふーん……。

 なかなか大変なんだ。

 

「数が少ないなら、血を残していくのも大切ってこと?」

「そうだろうが……。もうかなり難しい。あと100年で絶滅するだろうな」

「ええっ?それでいいの?」

「仕方ないだろう?鬼人同士で婚姻したとしても、近親婚になる。より純血になるが、力の暴走が激しくなるから、人間と婚姻していくしか術はない」

「ふーん……。そうなんだ。ならラディウスの結婚相手も人間ってこと?」

「……さぁな。そんなこと、考えたこともない」

「ヘルムートさんはそうじゃないも思うけど……。お見合いとか言われないの?」

「なんだ、急に」

 

 嫌な話なのか、ラディウスは凄いしかめっ面をした。恋愛話とか好きじゃなさそうだもんね。

 

「いや、ソルセリルの次の国主とか考えてるでしょ、ヘルムートさんなら。ならラディウスの結婚話を持ちかけてもおかしくないのかな、と思って」 

「別に俺の血縁じゃなくてもいいだろうが?」

「世襲制にしないってこと?」

「ソルセリルは多種族国家だぞ。どの種族が国主になってもいいだろうが」

「あぁ、確かに」

 その方が平等だし、ソルセリルのお国柄とも合ってるか。

「ラディウスなりに考えてるんだ。なら、生涯独身って可能性もあるんだ」

「それはそうだろう」

 

 ふーん。そっか。

 確かにラディウスが女性にデレてるところとか想像できないもんね。

 

「貴族が出張ってくる事も考えられるしな。どのみち、次の国主の事なんぞ、考えてられん」 

「今は手一杯ってこと?」

「やっと国として安定がとれてきたところだ。まだまだ課題は山積みだがな」

「そっか……。大変なんだ」

「言っているだろうが。俺は忙しいんだ」

 

 顔をしかめてあたしを軽く睨んでいる。

 確かに前々からそう言ってたけど。

 

「なら、今は結婚願望はないってこと?」

はなからない」

「ええ?そうなの?生きてきて一回も考えたことないの?」

「ないな」

 

 きっぱりと言い切るんだ。

 忙しすぎて考える暇もないってことか。

 

「恋愛もしたことない?」

 

 これにはしばし無言だった。

 初恋くらいはあるってこと?

 

 突っ込んで聞こうとしたら、 

「……ヒカリは希望があるんだろう?」

 切り替えして質問された。

「アリウェに言い寄られた時、『今は仕事がある』とこぼしていたじゃないか。つまり、いずれは、と考えているんだろう?」

「まぁ、それは……」

 

 結婚願望はある。

 でも今じゃない。

 召喚の代償で寿命が延びたし、時間はたっぷりとあるから、やりたい事を謳歌する時間はある。


「いつかはしたいけど、今じゃないかな。少なくとも医療体制確立が終わってからじゃないと、考えられない」

「……そうか。もしその時がきたら、色々と根回しと地固めが必要だろうな」

「根回しと地固め?」

「当然だろう。これだけの影響を国に与えているんだ。そんな奴の婚姻ともなれば、国内の貴族だけじゃなく、他国からも引く手数多になるだろう?」

「えぇ……」

 

 政治的策略とか、考えなきゃいけないってこと?

 

 思わず顔を歪めたら、

「面倒だという顔をするな」

「どう考えても面倒でしょう……。恋愛結婚は難しいってこと?」

「そんなことはないが……。場合によっては政略結婚もあり得るだろうな」

 

 すごく嫌だ……。

 政治の道具になるくらいなら、独身のままがいいかもしれない……。

 

「政略結婚なんて……。物語の世界じゃない……」

「元いた世界ではないのか?」

「昔はあったけど……。現代ではほぼ皆無だよ」

「そうか……。政略結婚が嫌なら、積極的に恋愛をすることだな」

「……ラディウスに言われたくないんだけど」

「そうか?」

「そうだよ。ラディウスだって、政略結婚の可能性は十分にあるわけでしょ?」

「無くはないが、限りなく低いだろうな」

「結婚願望がないから?」

「ああ」

「……あたしも表向き、そう言っておこうかな」

 

 その方がおかしな話を持ちかけられないだろう。

 

「それも一つの手法ではあるが。まずはアリウェへの返事をどうするか、考えておけ。今のヒカリの言い分だと、医療体制確立後に確実に迫ってくるぞ?」

 

 あぁ、それもあった……。

 でもまだまだ先の話だ。

 数年後なんて話じゃないだろうし……。 


「確立するのは結構先の話だから、まだまだ大丈夫でしょ」

「そうとも言えんぞ?ヘルムートがやる気だからな。案外、来年あたりじゃないか?」

「ええっ?!」

 

 早くない?

 そこまで急速に進めなくてもいいんだけど……。

 

「そんなに早く変革をもたらさなくてもいいのでは?」 

「医療体制ともなれば、早いに越したことはない。安定するまで時もかかるだろうしな。試験導入は早いぞ、きっと」

「ま、マジか……」

 

 最終的に決断するのはラディウスだから、現段階でそう言うのなら、早いのかもしれない。

 

 目を白黒させるあたしを見て、ラディウスは完全に他人事という顔で笑っていた。

「婚姻を含め、今からしっかり考えておけ」 



読んでいただきありがとうございます!とても励みになっています。

誤字・脱字報告もありがとうございます。助かっております。

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