ゴブリン喰らい探し終了
「よし、このまま続ければ倒せるはずだ! 他のゴブリン達が集まる前に倒すぞ!」
クラウド隊長が剣を振り、ルゥナが針を刺していく。ゴブリンキングの体中から血が流れ、どんどん動きが鈍くなってきている。あと数分もしないうちに倒せるだろう。シルフィは、戦闘に興味が無いのか頭の後ろで手を組んで、傍観しているだけだ。まあ、ゴブリンキングの足止めは成功しているし、シルフィの出番はもう無いか。
「ゴブリンキング、止めだ!」
ルゥナの針がゴブリンキングの目に刺さった時に出来た隙を狙い、クラウド隊長が止めを刺すために剣をゴブリンキングの心臓に向かって突き刺そうとした。その時、ゴブリンキングの体が光り、一回り大きくなる。クラウド隊長の剣は、3メートル程になったゴブリンキングの腹に当たり、致命傷とはならなかった。
「くっ、一体何が起きた?」
「ちっ、やっぱり居たのね、ゴブリンクイーンが!」
ルゥナが壁に開いた廃坑の穴に向かって視線を飛ばしている。その方向には、一匹の細いゴブリンが、杖の様なものを振りながら立っていた。あれがゴブリンクイーンなのか。なんか弱そうだ。
「ゴブリンクイーンはゴブリンキングを強化するバフを使うわ。私がゴブリンクイーンの相手をするから、アキラは隊長と一緒にキングを倒してちょうだい」
「えっ、俺も?」
「頼んだわよ」
ルゥナは、俺の返事を待たずにゴブリンクイーンに向かって飛びはねて行く。
「ぐぁっ、アキラくん、ゴブリンキングがパワーアップしている。俺一人じゃ防御するので精一杯だ。攻撃は、アキラくんがしてくれ!」
「わ、わかりました。シルフィ、ピアシング・ルートだ!」
「はーい。めんどくさいけど、えぃっ」
ゴブリンキングのもう一つの足にも木の根が突き刺さり、絡みついて動きを阻害する。しかし、この魔法を使ったのが俺だとゴブリンキングも気が付いた様で、火を纏わせた剣を振り上げる。
「まさか、遠距離攻撃!?」
ゴブリンキングが無駄に動くとは思えなかったので、なにかしらの攻撃が来ると予測する。実際、ゴブリンキングが剣を振り下ろすと、火の玉が俺に向かって飛んできた。
「アツッくはないけど、びびった」
エーテルは熱も通さないのか、熱くは無かった。まるで、CGの火の粉の様だ。
「ア、アキラ。あの攻撃、僕、苦手だからルゥナの方の援護に行くねー。後よろしくー」
「ちょっ、おいっ、シルフィさーん!?」
シルフィは、あっさりとルゥナの方へと飛んでいった。ゴブリンキングの火は、魔法みたいな物らしく、シルフィに当たるのか? だとしても、逃げるのはずるいだろ!
「アキラくん、早く攻撃を!」
ゴブリンキングは、続けざまにクラウド隊長に攻撃していた。ゴブリンクイーンとルゥナが戦っているおかげか、あれ以上のパワーアップは無いようだが、パワーダウンも無いみたいだ。
「ちょっと待ってください、シルフィがゴブリンクイーンの方へ行ってしまって」
「何とかならないのか! このままじゃ、持たない!」
筋力が爆上がりしたらしいゴブリンキングの攻撃は、クラウド隊長であっても何度も耐えられるものじゃないらしい。さらに、足止めしていたピアシング・ルートもすでに引きちぎられている。シルフィが居ないので、新しい魔法を使ってもらう事も出来ない。俺自身が、何とかするしか無いのか。
改めてゴブリンキングを見ると、3メートルに巨大化したのもあって、ものすごく迫力がある。さっきまではちょっと大きな人くらいだったのが、今では完全に化物にしか見えない。でも、何故か不良よりは威圧感を感じないんだよな。これなら、俺が直接攻撃できるかもしれない。
「やっ、やってやるさ、やるぞ! うぉぉぉ!」
俺は、右手に剣の様にエーテルの形を変え、ゴブリンキングに向かって走る。ゴブリンキングは、再び火の玉を飛ばしてきたが、俺には効かない。俺はゴブリンキングの・・・どこに攻撃すればいいんだ? 手足じゃ致命傷にならないし、腹は内臓が出てきそうで嫌だ。やっぱり、首か心臓か? 一瞬、シルフィがすりつぶしたキラーマンティスの姿が思い出され、俺の動きが一瞬止まる。
「アキラくん! 危ない!」
俺が攻撃を戸惑っているうちに、ゴブリンキングから直接剣で攻撃された。俺がそれを左腕で防ぐと、ガギンッという音と共に衝撃が来る。パワードスーツのおかげで、何とか耐えることは出来たが、クラウド隊長は、こんな攻撃を何度も受けていたのか。左足が少し地面にめり込んだくらいの衝撃だったぞ。
「もう、迷わない。心臓だ、心臓を刺してやる!」
前にゴブリンを倒したときの様に、ピアノ線状にしただけではゴブリンキングの太い首を落とす事は出来ないだろう。そもそも、ひっかけるところもないし。だから、直接致命傷を狙える心臓を攻撃したい。
「とりゃー!」
俺のエーテルは、ゴブリンキングにも見えないようで、心臓を狙ったエーテルは剣で防がれることは無かった。
「あ、あれ?」
しかし、分厚い胸の筋肉が邪魔をして心臓まで届かなかった。地面がゴブリン喰らいのせいで少し柔らかくなっているから力が入っていなかったのか?
「うぉぉ!」
その隙に、クラウド隊長が剣で斬るも、同じく致命傷にならない程度の傷にしかならない。パワーアップのせいで防御力もあがっているのか?
「クラウド隊長、俺に考えがあります! あいつが俺を攻撃するように、一旦離れて貰えませんか!」
「分かった、何をするのかは分からないが、任せる!」
クラウド隊長がゴブリンキングから距離を取ると、ゴブリンキングは一番近い俺を攻撃目標に変えた様だ。
「グオオォォッ!」
ゴブリンキングが振り下ろした剣を、左手で受ける。そして、その攻撃をシーソーの様にエーテルを変化させて衝撃をそのまま右手へと伝える。結果、右手の剣はゴブリンキングの攻撃力を持った俺の攻撃となった。いや、てこの原理で威力はそれ以上かもしれない。実際、さっきは少ししかめり込まなかったエーテルの剣が、今回は完全にゴブリンキングの体を貫いていた。
ゴブリンキングの体は、そのままゆっくりと傾いて、地面へ倒れた。
「た、倒したのか?」
「一応、俺が止めをさしておく」
クラウド隊長は、ゴブリンキングの首を剣で斬り落とす。首を落としてしまえば、いくらタフそうなゴブリンキングといえども、死んだだろう。
「ゴブリンクイーンの方は・・・?」
さっきの穴の方を見ると、すでにゴブリンクイーンの姿は無かった。
「ご苦労様、アキラ。ゴブリンクイーンは倒したわ。ゴブリンキングが倒されたら、ゴブリンクイーンの動きが目に見えて悪くなったもの。そこからは、簡単だったわ。シルフィの援護も助かったし。それと、ゴブリンキングとクイーンが倒された事で、廃坑に居たゴブリン達は他の穴から逃げたようね」
「僕も頑張ったよー」
シルフィはエヘンと胸を張っているが、俺を見捨てて行ったので素直に褒めることが出来ない。代わりに、ルゥナが褒めまくっているから満足だろうな。
「アキラくん、ルゥナさん、本当に助かったよ。まさか、こんな大物が居るとは思ってもみなかったよ」
「本当に、運がいいのか悪いのか。報酬は、どうなるのかしら?」
「もちろん、ゴブリン喰いの発見だけでなく、一応討伐完了と言えるし、ゴブリンキングとクイーンも倒した。俺が居たとはいえ、俺一人じゃ到底勝てなかった戦いだ。報酬をはずむように進言しておくよ」
「素材や武器の扱いはどうなるのかしら?」
「サンドワームの皮は良い防具になるし、ゴブリンキングの剣はマジックウェポンだ。ゴブリンクイーンの杖も同じくマジックウェポンだね。所有権は倒した者の物になるから、今回はすべて君たちの物になる・・・と言いたいところだけど、物が物だけに、今すぐ渡すというわけにはいかない。危険が無いか、一度街へ戻って鑑定してみないと」
「別にいいわよ、私達は使わない物だろうし。高値で買ってくれるなら、売り渡してもいいわ」
「本当かい? それなら、すぐに回収するよう護衛隊を連れてくるよ」
「途中まで、私が運んであげてもいいわよ? ここに放置しておいたら、戻ってきたゴブリン達に食べられてしまいそうだもの」
「え? それは、ゴブリンキングとクイーンをマジックボックスへ入れて行くという事かい? ルゥナさんは、そんな大容量のマジックバックを持っているのか?」
「私じゃ無くて、アキラが持っているわ。そうよね、アキラ?」
「え、俺!?」
「彼のマジックバックなら、そこのサンドワームすら入るはずよ」
「それが本当なら、国宝級のアイテムボックスじゃないか・・・。アキラくん、君は一体何者なんだい?」
それは、俺をそのマジックバックの持ち主にしたルゥナに聞いてください・・・。




