ゴブリン喰らい探し3
サンドワームの様子を見ながらクラウド隊長と雑談する。俺はまだこの世界について知っていることが少ないので、クラウド隊長から教えてもらうばかりだが、とても役に立つ情報ばかりだ。そして、話しているうちにルゥナとシルフィが戻ってきた。
「報告するわ。一番重要な、ゴブリン達を連れ戻した咆哮を上げたのはゴブリンキングよ。前に見た事があるから、間違いないわ。武器は剣。近くにクイーンは居なかったけれど、居ると考えておいた方がいいかしらね」
「ゴブリンキングだって・・・? 剣持ちというのは事例が多いから助かるが、それでも最低Bランクパーティが必要となるな」
「ゴブリンキングって強いんですか?」
「ああ。ゴブリンがキングに進化する時、そのゴブリンが一番得意な武器を自身の魔力で作り出すと言われている。そして、その武器は例外なくマジックウェポンとなる。だから、武器によってゴブリンキングの強さが変わるんだ。そして、剣は比較的戦いやすい部類だ。接近戦を得意とし、特殊な攻撃も剣に属性を纏わせる、その属性を斬撃として飛ばすくらいだからな」
「アキラ、ついでに言うとゴブリンキング1体に対して冒険者Bランクが最低4人の1パーティは必要となるの。クイーンが居るとキングをパワーアップさせるバフを使うから、Bランクがもう1パーティは欲しいわね。さらに、とりまきのゴブリンを倒すのにCランクパーティがいくつか必要となるわ」
「とりまきのゴブリンはどれくらいだい?」
「ゴブリンキングの近くに30体ほど。私が通った通路だけでもゴブリンが100体ほどいたわ。他の通路を合わせたら、一体どれくらいの数がいるのか見当がつかないわ」
「そんなに多いのか・・・。まさか、こんな場所にゴブリンの住処が出来ていただなんて・・・。護衛隊としても、放置しておける事態じゃ無いな」
「ゴブリンキングが出て来るのを待ってキングだけ倒すとかは?」
「アキラ・・・ゴブリンキングは自主的に巣から出ることはほとんど無いわよ。身の回りの世話は、まわりのゴブリン達がすべて行うもの。自主的に出る時は配下がすべてやられた時くらいかしら」
どうやら、大変な事態になっているようだ。でも、ゴブリン喰らいがいるなら好都合なんじゃ無いか?
「じゃあ、ゴブリン喰らいにゴブリンを食べまくってもらうとかは? キング以外を食べさせまくって数を減らせばいいんじゃ」
「きっとゴブリン達が食べられる前に、さっきみたいに咆哮で呼び戻すわよ。でもそうね、さっきは自主的に出ることは無いと言ったけれど、怒らせたらきっと出て来るわ」
「ルゥナさん、それは危険だ。結果が良い方に転ぶか、悪い方に転ぶかまったく分からない。せめて、戦力を集めてからじゃないと」
「戦力、あの街に居るの?」
「・・・今は居ない。だが、他の街から呼ぶ事は出来るはずだ」
「そんなに待っていたら、それこそどうなるか分からないわよ? クイーンまで居たら、それこそ1日放置するだけでもどれだけのゴブリンが増える事になるか」
「・・・・・・分かった。ゴブリンキングを怒らせて外に出て来させ、ゴブリン喰らいとぶつけてみよう。最悪、俺の命に代えてでもこの場を収める」
「きっと大丈夫よ。例えゴブリンキングが暴れたとしても、私達がなんとかするわ」
私達って・・・俺も入っているのか? いや、俺は何もできないと思が。シルフィはやる気がある様で、なんか張り切ってるし。
「じゃあ、連れ出してくるわね」
「俺は、ゴブリン喰らいが移動しないか魔道具で見張っているぞ」
「すぐに連れてくるわ」
ルゥナはそう言うと、姿が消える。隠形中のルゥナは、本当にどこに居るのか分からないな。
「グガアアァァ!」
「なんか、すごい怒ったように聞こえる咆哮だな・・・」
「それで合っていると思うよ。きっとルゥナさんがやってくれたんだ」
暫くすると、大きな足音と共に2メートルはあるゴブリンが出てくる。剣を持っているところを見ると、あれがゴブリンキングか。額から血が出ているから、きっとルゥナが攻撃して怒らせたのだろう。いや、額以外にも小さな傷がついているから、怒るまでチクチクと攻撃したのか? そりゃうざいな。
「よし! ちょうどゴブリン喰らいの真上にでるぞ」
ゴブリンキングは、廃坑から飛び出し、きょろきょろと辺りを見る。きっとルゥナを探しているんだろうが、きっと見つける事は出来ないだろう。だが、ゴブリンキングが急に横っ飛びする。ズザザッという音がしそうなほど数メートルは地面を滑る。
「なんだ?」
「あいつ、ゴブリン喰らいの動きが分かっているようだ。回避された」
ゴブリンキングは、ゴブリン喰らいの攻撃(?)を回避したらしい。あの、一瞬しか見えないような攻撃をよく回避できるな。さすがキングなだけある。
「あ」
そう思ったのも束の間で、ゴブリンキングの姿が消えた。さすがに、2連続では回避できなかったようだ。
「ゴブリン喰らいがゴブリンキングを食べる事に成功したようだ。だとしたら、ゴブリン喰らいの強さは推定で冒険者ランクのA相当か? 今のところ、人間に被害は無いが、もしゴブリン喰らいが人間も食べるようなら討伐しなければならないが、難しいな・・・」
しばらく何も無かったが、突然地面からゴブリン喰らいが姿を現す。さらに、口から火が出て無いか? いつから火を吐けるようになったんだ?
「ウロロォォ!」
ゴブリン喰らいは、奇妙な鳴き声をあげると、地面に胃液をまき散らす。俺が脱出したのと同様の動きだ。つまり・・・。
「ゴブリンキングが出てきやがった。だが、無傷では無いようだ」
クラウド隊長の言う通り、吐き出されたゴブリンキングの肌は、ところどころ煙を上げて火傷の様になっている。さらに、顔も半分溶けたようになっているので、大ダメージを受けているのは確実だな。
「恐らく、あの武器でゴブリン喰らいの体内を斬りまくったんだろう。さすがに、体内から攻撃されてはゴブリン喰らいでもどうしようもなかったというわけか」
口から煙を吐いているゴブリン喰らいは、ドウッという音を響かせて横倒しになる。ぴくぴくとまだ動いているところを見ると、生きてはいる様だが瀕死に見えるな。
「グオオォォ!」
ゴブリンキングが、怒りにまかせて剣をゴブリン喰らいに振り下ろした。ゴブリン喰らいについた傷から火が噴き出す。あれを体内でやられたんじゃ、ゴブリン喰らいもたまらないな。
ゴブリンキングの滅多切りを受け、瀕死だったゴブリン喰らいが完全に死んだようで、ぴくりとも動かなかくなった。
「手負いの今なら、俺達でもゴブリンキングをやれるはずだ。むしろ、取り巻きも何も居ない今がチャンスだろう。手を貸してくれ、ルゥナさん」
「アキラ、シルフィ、私達もやるわよ」
クラウド隊長が指名したのはルゥナだけな気がするが、やっぱり俺もやらないとダメなのか? 正直、あの怒りの咆哮だけで足がすくむんだが・・・。
「じゃあ、僕から行くよー。えいっ」
シルフィがツリーバインドを使うが、発生の遅いツリーバインドではやはり捕まえる事が出来ていない。ゴブリンキングはあっさりと避けた。さらに、ゴブリンキングは俺達を新たな敵として認識したようだ。
「あぁっ、やるなら言えよ! シルフィ、せめてピアシング・ルートの方を使ってくれ」
「えー、何も指示しなかったじゃ無いですかー。まあいいですよー、えいっ」
丁度クラウド隊長が剣を抜き、ゴブリンキングに近づいたことでゴブリンキングの注意は隊長に逸れた。その隙でシルフィのピアシング・ルートがゴブリンキングの足を貫く。その後、ゴブリンキングの足首あたりが木の根で固定された。
「ナイス援護だ! 食らえっ!」
クラウド隊長が飛び上がり、ゴブリンキングの頭上へと剣を振り下ろす。その剣を、ゴブリンキングは剣で受ける。そのゴブリンキングのわき腹に、30センチ程のクナイが次々と刺さる。あれはどこかに居るルゥナがやっているんだろう。見えないけど、あの武器を使うのはルゥナだけだし。




