護衛依頼3
俺達は一旦宿へ帰って来た。帰って来たというか、まだ1日も利用して無いんだけどな。
「それじゃ、私のマジックボックスの魔法の中身を出すよ」
「マジックボックスの魔法なんてあるんだな」
「そりゃあるよ、そもそもマジックボックスの魔道具が魔法の真似事なんだから。あっ、その前に改めて自己紹介するよ。私はルゥナ。小人族で、特技は暗殺。精霊視も持ってるからシルフィちゃんを視る事ができまーす」
「ちょっ、新しい情報が振り込まれたんだが? 暗殺者なの?」
「元ね。隠密っていう暗殺者向きのスキルがあったから、それを生かした職に就いたって感じ? 一応、職業はシーフって事になってるからよろしく。これ、冒険者証」
ルゥナはアイテムボックスから冒険者証を取り出す。
「ところで、アイテムボックスの魔法と普通の魔道具のアイテムボックスが分かりづらいんだが、他に言い方は無いのか?」
「それなら、本来なら魔道具の方を変えるべきなんだけど、アイテムボックスの魔法を持ってる人は珍しいからね。だから、私も殺されずに奴隷で済んだんだけど。それにしてもあいつ、何が組織から抜け出すのを手伝ってあげる、よ。嘘ばっかりついて!」
ルゥナは、元主の商人に対する怒りが湧いてきたのか、急にキレだしたな。どうやら、暗殺者を止めたかったらしいことは分かったが、今は話を戻したい。
「で、アイテムボックスの別の言い方はあるのか?」
「なんか、あんたと同じ異世界から来た人がストレージって呼んでるらしいから、それでもいいわよ」
「じゃあ、今後はストレージでいいか。・・・はぁ? ルゥナがBランクの冒険者って、本当なのか?」
受け取った冒険者証は確かに銀色だった。ちなみに、Sランクはミスリルの冒険者証で虹色に光る金属らしい。そして、Aランクはゴールド、Bランクはシルバー、Cランクはブロンズだ。そして、Dランクが鉄でEとFとGはプラスチックみたいな物である。実際はプラスチックじゃないんだろうが、水にぬれても大丈夫な代わりに熱には弱いみたいだから似たようなもんだろう。そんで、俺はルゥナの冒険者証を鉄だと思ったのだ。
「驚いた? 私、その辺の冒険者よりも強いよ。ただ、奴隷になっていた期間があるから、降格してDランクになってるかもしれないけど」
冒険者は、全く依頼を受けないとランクが下がる。ルゥナは当然奴隷の間はクエストなんて出来ていないだろう。
「それは、ギルドに説明すれば分かってもらえないのか?」
「その辺はギルドも公平よ。よほどの理由があれば温情もあると思うわね。けれど、私は冒険者証を取り直すつもりよ。そのギルド証も偽名で登録してある奴だし」
「そんなことできるのか?」
「裏技を使えば可能よ。ただ、普通は無理ね。水晶をだます事は出来ないもの。ただ、水晶に触れた手が本人のものかどうかは職員しか確認していないからね」
不穏な事を言うので、深くは追及しないことにする。つまり、水晶を騙せないから職員の方をだましたって事だけは分かった。
「それじゃあ、ギルドに行くか?」
「今はいいわ。登録するとしても次の街でいいわよ。もうすぐこの街を出るんでしょ?」
「ああ、護衛クエストを受けたからな。だから、テントとか買いに行こうかと市場をぶらついていたんだ」
「良かったわね。あの商人、旅の道具だけは結構充実しているわよ。元Bランクの私でも、それほど旅道具にはお金をかけていなかったのに」
そう言ってルゥナは旅道具の一部を出した。テントに、コンロに、椅子や机などがある。確かに、どれも見た感じ高そうだ。
「このテントなんて、防音、防寒、耐熱機能がついてて、普通に買えばこれだけで金貨20枚はするわよ。そしてコンロ。自分の魔力でも使えるし、魔石をセットしても使える珍しいタイプ。普通はどっちかしかついてないからね。魔石をセットすれば、魔力を流していない間も火が続くから煮物とかでも使えるわ。ま、普通は旅じゃ煮物なんて作らないけど」
それからもルゥナは色々と道具の説明をしてくれる。どれも普通の冒険者には必要無い機能があったりして、確かに高そうだ。道具の整備はルゥナの役目だったようで、どれも使うのに問題ないらしい。
「でね、でね、最後に一番役に立つものをつけたいんだけど、いいかな?」
ルゥナが急に声色を変えて言ってくる。
「な、なんだ急に。怖いな」
「怖くなんて無いわよ? たーだ、あなたの旅に私も連れて行って欲しいの」
「はぁ・・・はぁ!? なんで一緒に来るんだ? 俺は道具だけ貰えればいいぞ」
暗殺者と一緒に旅なんて、よほど信用できないと怖くて無理だろ。
「さっきも言った通り、私は珍しいストレージ持ちで道具の整備も出来るわ。さらに言えば、暗殺者の経験があるから周囲の気配や警戒、夜番も得意よ? 料理も作らされてたから作れるし、体も小さいから食費も安いし寝る場所もとらないわ。ね、お得でしょ?」
「動機が分からん。それだけ聞くと確かにメリットしか無いが、デメリットの提示も頼む」
「えー、この美少女と一緒に旅に出れるだけでもお得すぎるでしょー? 少しだけなら、夜の相手をしてあげてもいいわよ?」
「ぶっ、それは別に望んでない! 大体、体の大きさが違いすぎるだろ! 早く動機とデメリットを言え!」
「アキラー、何を相手してもらうの? ゲーム?」
「シルフィには関係ないものだ」
「そこはテクニックで何とでもなるわよ。まぁ、望まれてないなら、わざわざやらないけど。じゃあ、動機はあなたに私が組織から抜けるのを手伝って貰えるかもしれないって打算で、デメリットはそれに付随して命の危険にさらされるってことかな?」
「じゃあ、断る。道具だけ寄越してどこへでも好きな所へ行くといい」
何が悲しくて命を狙われなきゃならん事に手を出すんだ。俺は平和に生きたいんだ。
「えー、そんな事言っていいのかな? 私の奴隷契約、解除したくせに」
「それはお前が騙したからだろ!」
「だ・か・ら、責任をもって私があなたを守るってば。じゃないとあいつ、貴族にも顔が効くから、バレたら死ぬまで追いかけられることになるわよ?」
「お前・・・、今更そういう・・・」
実際、選択肢がねぇじゃねぇかよ。
「それはそれは面白そうだねー。じゃあ、バラしに行く? あ、僕の声は商人に聞こえないかもしれないですけどー」
「さすがにわざわざバラしに向かわないわよ。せっかく離れられたのに、自分から近づくなんて、単なる馬鹿でしょ。逃げたのはもうバレてるだろうし」
なんだ、ルゥナにしてもリスクがある脅しだったって事だな。それなら、メリットとデメリットを天秤にかけるか。メリットは、さっきも言った通り、旅には必須レベルで役立つ能力を持っている。デメリットは俺がルゥナの巻き添えで命を狙われる危険があるってことだ。ちなみに、俺が奴隷契約を解除したことがバレたら同様の事になる模様。だったら、Bランクの護衛が居る方が安全な可能性がある。
「―――分かった、同行を許可しよう」
「やった! ありがとね! シルフィちゃんもよろしくね」
「うん、何かルゥナとは気が合いそうな感じがしますしー」
あれ? これって混ぜたら危険ってやつだったのでは?




