護衛依頼2
ルゥナ イメージイラスト
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「ふぅっ、なんか冷や汗をかいたな」
俺は露店の並ぶ市場を抜けて、路地裏に来ていた。地べたに座って休む。もう少し落ち着いたら、もう一度見に行こうかと思うが、取り合えず喉が渇いたな。
「そう言えば、シルフィって水を出せないのか? 喉が渇いた」
「僕は森の精霊だよ? そう言うのは、水の精霊に言うべきだと思いますねー」
「だろうな、聞いただけだ」
魔道具のある世界なら、きっと水が湧き出る水筒とかもあるだろうし、そういうのも必要そうだ。
「これをどうぞ」
澄んだ声と共に、水が入った木のコップが足元に置かれる。
「あ、どうもありがとうございま・・・す?」
目線をコップの置かれた方に向けるが、誰も居ない。
「え・・・一体、だれがこのコップを・・・?」
「私です」
声は、足元の方から聞こえた。ちょうど自分の膝の陰になっていて分からなかったが、そこにはさっきの露店に置いてあった人形があった。
「こここ、これは一体・・・」
「あっ、着いてきたんだねー。呪いの人形さん?」
「私は、呪いの人形ではありません」
「えっ、僕の声が聞こえるの?」
「はい。姿も見えております」
「へー、ただの人形じゃないって事?」
シルフィは、呪いの人形の前に飛んでいく。いや、呪いの人形じゃないらしいけど、呼名が分からないから今のところ呪いの人形呼びで。こうしてみると、シルフィも呪いの人形も同じくらいの大きさだな。
「私は、小人族なのです。悪い商人に騙されて、奴隷契約を結ばされました。お願いします、私の呪いを解いていただけませんか?」
「・・・どうして俺に? 他にも君を買った人とか居るだろう?」
「私は売り物ではありません。主の商人から物を買った人に隠れて着いて行って、商品を回収する役目なのです」
「なるほど・・・。つまり、シルフィの予想は外れていたという事か」
「だから、勘だって言ったじゃないですかー。僕が分かるのは、魔力的な何かがあるって分かるだけですからねー」
「あなたから、私と同じ奴隷契約の魔力を感じました。しかし、あなたは命令に縛られていないように見えます。同じ境遇のあなたであれば、理解していただけるかと思いまして」
「理由は分かったけど、俺も人の呪いを解くような余裕はないよ? これから、旅に必要な道具を買いに行かないといけないし」
「でしたら、私が役に立てるかと思います。私は、アイテムボックスの魔法を使えます。その中には、あの商人の旅道具が入っておりますので、今解除いただければすべてあなたに差し上げることが出来ます」
「なるほど・・・それは、金貨1枚よりも価値があるんだよね?」
「はい。少なく見積もっても、金貨30枚分の財産が入っております」
「よし、教会に行こう」
俺は金貨30枚・・・300万と聞いてすぐに教会へと向かう決意をする。この時の俺は、目先の金銭の事しか考えていなかった。
「シルフィ、上から教会を探してくれ」
「精霊使いが荒いですねぇ。まあ、いいですけどねー」
シルフィは周りの屋根よりも高く飛ぶと、教会を探してくれる。教会は、日本の教会の様に西洋風の建物で、街の中でも目立つように周りの建物よりも天井が高くなるよう建築されているらしい。
「見つけましたよー。こっちです」
俺はシルフィに着いて行き、教会に向かう。っと、その前に人形? はどうすればいいんだ?
「えっと、君を袋か何かに入れて運べばいいのかな? あと、名前とかある?」
「私の事はルゥナとお呼びください。それと、私はこう見えて隠密のスキルを持っておりますので、人に見つからずにあなた様に着いて行く事が出来ます。ですので、私の事はご心配なく」
確かに、いつの間にか俺についてきてたもんな。それに、そう言う能力が無いと客から回収するのも難しいか。
「よし、じゃあ向かうぞ」
ルゥナは本当に他人に気づかれずに俺についてきた。そして、問題なく教会へ着くことが出来る。
「これが教会か。金がかかってそうだなー」
外壁は真っ白で綺麗で、常に清掃してあるのが分かる。入口の床なんて大理石で出来てるっぽいしな。まあ、この世界の大理石が高いのかどうかは知らないが。
「すいませーん・・・」
俺は入り口に入ると、近くに居たシスターに小声で声をかける。人見知りの俺に堂々と女性に声をかけるなんてマネは無理だし。
「はい。私は、見習いシスターのマーナと言います。教会にどのような御用ですか? 治療ですか?」
「えっと、呪いの解呪をお願いしたいのですけど」
「かしこまりました。それでは、こちらへどうぞ。お布施は金貨1枚分でお願いします」
この世界では、堂々とお布施を金額指定で言ってくるのか。まあ、その方がいくら出せばいいのか分かりやすいが、金が無かったら受けられないという事になるな。気持ちだけって言われてもいくら出せばいいか分からないしな。どうせ気持ちだけといいつつ、既定の金額になるんだろうし。
「はい。どうぞ」
俺は教会に入る前に金貨1枚分の貨幣を財布に入れておいた。さすがに、教会の中で全身を漁って金を取り出すわけにはいかないからな。まだルゥナに金を預けるわけにも行かないし。
マーナは、小銭だらけの貨幣を数え、きちんと金貨1枚分あるのを確認する。
「小銭ばかりですみません」
「大丈夫ですよ、むしろ金貨1枚で出される方の方が珍しいですし」
確かに、平民が10万円を持ち歩くのは珍しいわな。普段でも使いづらいだろうし。日本でも、会計が1000円とかで10万円金貨を出されても、店員も困惑するだろう。
マーナに着いて行くと、小さな部屋へと案内される。
「司祭様、お一人様をお連れしました。呪いの解呪をお願いいたします」
「分かりました。マーナは下がってよろしいですよ」
「はい」
マーナは俺達に会釈すると、教会の入口の方へ戻るようだ。
「それでは、この魔法陣の中にお立ち下さい」
「あ、呪いを解除して欲しいのは俺じゃ無くて、こっちの彼女です」
マーナは気が付いていなかったが、きちんとルゥナはついてきている。まあ、足元にもう一人居るなんて思わないよな。
「なるほど。それでは、こちらに。あなたはよろしいのですか?」
司祭様には、俺にも呪いがかかっているのが分かるのか?
「はい。今は手持ちが無いので」
「分かりました。それでは、彼女の奴隷契約を解除致します。主からの許可は得ておりますか?」
「はい」
えっ、奴隷契約の解除には主人の許可が要るのか? だったら、どっちにしろ俺は解除出来ない事になるぞ。ルゥナは済ました顔で返事をしているところを見ると、分かっていたようだが。
「よろしい。それでは、神の名のもとに。呪いの解除を希う!」
司祭様が魔法陣を起動される。神の名の元と言っているが、どうみても司祭様の魔力で解除している様に見えるんだが、気にしたら負けか?
ルゥナの首にある奴隷の首輪がカチャリと音を立てて足元に落ちる。
「これで呪いが解かれました。では、お気を付けてお帰りください」
「はい。ありがとうございました」
ルゥナは足元に落ちた奴隷の首輪をアイテムボックスに仕舞うと、何事も無かったの様に出口へと向かう。俺も慌てて彼女に着いて行く。
「ありがとうございました」
「はい。神のご加護があらん事を」
マーナさんが、祝福の言葉と共に俺達を見送ってくれる。教会を出ると、ルゥナはのびをする。
「はー、やっと解除できた。ありがとね。それとごめんね?」
「え? それは一体、どういう意味?」
お礼は分かる。でも、謝られる理由って? 金貨1枚分以上のお返しは貰えるはずだし。あと、口調も一気に変わったな。
「勝手に人の奴隷を解呪するのは犯罪なんだ。あなたは知らないようだったから、利用させて貰っちゃった」
「なん・・だと・・?」
「あなた、見た感じ異世界人みたいだったからさ。この世界の人に頼んでも、絶対に解呪なんてやってくれないし。あ、それとこの口調は私の素だから。さっきまで、主人の命令で口調を制限されていたんだ」
「騙したのか?」
「結果的にはそうなるけど、お礼は嘘じゃないよ。そこまであなたに迷惑かけるわけにはいかないし。そういえば、あなたの名前って?」
「・・・アキラだ。本当に、犯罪なのか?」
「うん。じゃないと、人の奴隷を解呪して自分のものにする奴が出て来るからね。大丈夫。重罪だけど、死刑にはならないと思うから、たぶん」
「たぶんて・・・。まあ、もう遅いけど・・・バレないよな?」
「この街を出ればバレないよ。あの商人も、ずっとこの街に居るわけじゃ無いし。よかったー、行動制限の命令が切れた瞬間にアキラに会えて。というか、シルフィちゃん・・・でいいのかな? のおかげなのかな?」
「あっ、それは内緒にしておこうと思っていたのに! 秘かに、アキラに呪いの人形がついたら面白そうだな―ってやったんだけど」
「やっぱり、何かしてたんじゃねーか!」
どおりであのタイミングで人形・・・ルゥナが動いたと思ったわ。シルフィが何もしてないわけなかったんだよな。




