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第二章 D-2

この小説、実はプロットが途中までしかありません。

っていうか、ネット小説で完璧なプロットなんて書く人見たことがありません。

行き当たりばったりで進む時もあるので、矛盾があったら是非教えてください。

「フランベルジュの土地をあなたたち竜に譲渡するなんて、例え一部だってそんなの認められないわよ!」


「なぜだ? 人間界には豊富な土地に綺麗な水、そしてなにより生きとし生けるものに別け隔てなく恵を与える太陽があるではないか。それを少しくらい竜に分けても文句はなかろうに」


「どの土地にも代々そこに住んでいる人たちがいるでしょ。わたしは民を蔑ろにしたりはしないわ!」


「ならば好きにしろ。俺たちはお前に味方しない。気ままな観光に戻らせてもらう」


 サイファーの容赦のない言葉がイシュタルの臓腑をえぐる。

 金髪碧眼の華奢そうに見える美少年。その瞳は氷のように冷酷で、今まで一緒に旅をしてきた少年とは思えない威圧感を感じさせた。

 今のサイファーは雷竜の王子の顔でイシュタルに迫っている。

 本来外交というのは楽しくお喋りしてお茶を楽しむような場ではない。はっきり言って、これは血の流れない戦争だ。

 笑顔を浮かべながら右手で握手しながらも、左手にはナイフを持ち、油断なく相手を見据えている。

 外交の決め手はは軍事力と経済力。

 この二つが重要になってくるのだが、イシュタルの手元にあるカードで決定的に欠けているのは軍事力の方だ。

 サイファーは竜が飢えず暮らせる土地が欲しいと言う。ならばフランベルジュが食糧を輸出し、魔界からの鉱物を輸入するという経済的交渉に期待が持てる。

 だが、この傲慢な竜は人間界への干渉でもって、食糧自給率の向上を求めるつもりだ。

 反乱軍を打倒し、フランベルジュ帝国再建という目標を掲げるイシュタルには、竜の支援が必要不可欠になる。

 王都に集うニアの軍勢は獣人の援軍をさらに合わせると五万に届くのではないかという大軍である。対してイシュタルにはタイラント兵二千しかいない。

 戦争はほとんど数で決まる。

 天才的な軍師がいればその差も少しは縮まろうが、ほとんどの戦闘は軍勢と軍勢のぶつかり合いで、いくら策を弄したところで圧倒的数の力には勝てない。

 イシュタルには将を担う人材も今は少なく、サイファーとリリアナという強力な武力に依存するしか生き残る道はなかった。


「……サイファー様。この短時間でイシュタルに結論を迫っても良い返答は望めません。少し間を置くほうがいいでしょう」


 迷っているイシュタルに、なぜかここでリリィからの助け舟が入った。

 今まで諍いばかりしてきた彼女が、なぜ自分を救ってくれるのかわからない。

 驚いてリリィの方を見るが、馬鹿にしたような冷笑で返された。


「勘違いしないでください。別に私はあなたのことなんてなんとも思ってませんから。逆にここで別れた方が、ライバルが一人減ってせいせいします。ですがさすがにおっぱいの大きさしか取り柄のないあなたには一抹の哀れみを感じます。優しい優しいサイファー様のパートナーであるこの私が、おっぱいに栄養を取られて頭の発育のよろしくない可哀想な可哀想な乳牛のあなたを助けてあげましょう」


「…………」


 怒っては駄目怒っては駄目怒っては駄目…………。

 イシュタルの握った拳がプルプル震える。

 これは今までの喧嘩や恨み辛みを含めてのリリィの復讐だ。

 この女に優しさなんて感情を求めたのが間違いだった。

 ああ、でも腹立つ!


「ふむ。どうせあてのない旅だ。時間など腐るほどある。タイラント領の重臣たちと相談して決めればいい」


「ねぇ、サイファー。急にどうして人間界が欲しいなんて言い出したの?」


 召還してからずっとサイファーは飄々としていて、人間界で行われている戦争や権力闘争などにはあまり興味を示さなかったはずだったのに。

 その問にサイファーは首を横に振って答えた。


「俺は魔界にいた時からずっと人間界が欲しかった。掘っても鉱物しか出ない寂れた大地、日のささない腐った大気。神は魔界をとことん苛めぬき、竜や魔物の繁殖力を削ぐ作戦に出たのだ。俺の親父カインやその好敵手である黒竜王アークも別に戦いたくて戦っているわけではないのだ。ただ部下を養うための土地と食糧が無くなってきたから戦っている。お前たち人間のように好んで同族殺しをしているわけではないのだ。俺は幼い頃からずっと人間界と魔界の不平等をなんとかしたいと思っていた。竜も日のあたる大地に住みたい。それは全ての竜族の願いだ」


「でも……下手をしたら人間とも、神とも争いになって。また人魔戦争が起こるわよ」


「過去の間違いは犯さないさ。それにウルにはもう戦争を起こすだけの戦力は残ってはいまい。怖いのは戦女神だけだ。今はまだ力が足りないが、いずれ俺が天界をもしのぐ力を手に入れてみせるさ」


「出来るの? そんなことが……」


「ああ、出来る。俺ならな」


 本当に自信家の男である。

 リリィが「さすがサイファー様……」と頬を赤らめてモジモジしていた。

 気持ち悪いので無視しておくとしよう。


「……わかったわ。でも、どんな土地でもいいの? 竜って何人くらいいるのよ」


「ううむ。具体的には……忘れた。リリィ、説明してやれ」


 サイファーが腕を組んでしばらく唸ると、交代するようにしてリリアナが前に出てきた。

 秘書であり腹心の部下でもあるというこの女、秘書らしいことをするのは人間界によってきてこれが初めてではなかろうか。


「今現在雷竜一族の数は雑種も含めて521頭ほどです。これに配下のモンスター部隊を加えますと、我が領土で生産される食糧では全然足りません。さらにサイファー様のご希望通り、全ての竜族を養うほどの食糧を求めるとなると、さらに絶望的な数字が算出されました。どれくらい足りないかというと、ざっと小麦100万ティルグくらいです」


「50万!? ……かなりの量ね」


 大雑把な内容でしかものを語らない典型的な王者であるサイファーと違って、官僚気質のリリアナの弁舌は素晴らしいほどに論理的だった。  

 現在フランベルジュ帝国の小麦生産高はだいたい300万(1500万トン)。

 今現在確かに穀物自給率は150パーセントとかなり余剰分があるが、いきなりその三分の一を奪われるのだ。

 絶対にインフレが起こり、民にいらない混乱が起こる。

 

「わたしの国の穀倉地帯にも限界はあるわ。それにあなたたちには土地が余っているように見えるかもしれないけど、これでも開墾するにあたって人手はいっぱいいっぱいなの」


「フランベルジュ帝国の地図を見せてもらいましたが、この国にはまだ未開と言ってもいいほどの土地がたくさんあります。それに人足などいくらでも狩り集めればいいでしょうに」


「まさか奴隷狩りでもしろっていうの! それだけは絶対に駄目!」


 つい感情的になって椅子から立ち上がってしまった。

 リリィがやれやれとため息をつく。


「あれも駄目、これも駄目。あなたは我々をなめているのですか? というか、いつまで対等の立場でテーブルに付いているのです。せめて下手したてに出ながら代案を出すくらいのことはしなさい。本当に無能なんですから。……ははぁ、あなたもしかしてサイファー様なら手心を加えてくれると期待してますか? 愚かですね。サイファー様は確かに竜のオスとしては信じられないくらいお優しいお方です。ですが、一度やると決めてしまえば、相手を滅ぼしてでもやり遂げる残酷な面も合わせもっていらっしゃいます。あなたもメスとして可愛がられているからといって、あまり油断なされないよう。サイファー様は次期魔王。―――暴虐の塊のような生き物なんですから」 


 リリィがまるで我がことのように、サイファーを賛美する。

 しかし、その目から放たれる威圧感が、その言葉の真実性を物語っていた。

 『嘗めていると終いには殺しますよ』―――この言葉がありありとリリィの瞳にあった。

 ゴクリとイシュタルの喉が音を鳴らす。

 正直、竜というものを、侮っていたかもしれない。

 簡単に言う事を聞かせられる存在ではなかったのだ。


「俺も無茶な要求をしていることはわかっているつもりだ。だからあまり多くは望まない」


 サイファーが真剣な顔で、イシュタルを見つめた。

 そして言葉に反して、自分の欲求をべらべらと語りだす。


「炎竜は熱いところを好むからなるべく温暖なところがいい。あと竜には海に住む者もいる。海竜とかな。そいつらの為に海に面した土地が欲しい。ああ、湖でもいいぞ。基本魔界に住む奴らは気候変動には強いから、完全な砂漠や湿地でない限り生きていけると思う。あっ、雷竜は高いところが好きだ。山脈地帯があれば最高だな。あっ、これが一番大事なんだが、天界には気付かれないようこの計画を遂行したいから、このことはなるべく秘密裏に頼む」


「注文多いわねっ! 高望みしすぎよ! もっと遠慮して具体的にどのへんの土地が欲しいのか教えてほしいわ。というか、あなたたちってフランベルジュをまだ地図上でしか知らないんでしょう。色々歩きまわって直に確かめた方がよくない?」


「ほう。それは俺たちに旅に戻ってもいいよって言っているのか?」


「そ、そうじゃないわ。反乱軍やら天使やら戦争中はいっぱい危険や妨害があるから、まずはわたしたちと一緒にニアをやっつけることから始めればいいのよ」


「ニアの首をとれば領地くれるって言うなら考えてやってもいい。交換条件だよ」


「はぁ、堂々巡りね」

 

 イシュタルは竜の戦力がないと、絶対に勝てない窮地に立たされている。

 しかし、勝手に自分の戦力扱いし、戦争の駒になることをサイファーは拒否した。

 もしどうしても竜を自軍に組み込みたいというのなら、それ相応の対価を要求するのは当然であろうと言う。

 どちらにせよ、イシュタル一人でどうこう出来る問題ではなかった。

 

「……わかったわ。この話はエリスや皆と会議して決めます。結論出すのに時間かかりそうだけど、大丈夫?」


「ああ。一年やニ年くらいなら待ってやってもいい」


「気が長いわね……。一年後戦争に負けてわたしは処刑されているかもしれないのに」

 

 竜は寿命が長く、同時にかなり時間にルーズのようだった。

 南から獣人族が襲来し、西から反乱軍の討伐部隊が山脈を越えて移動しているらしい。

 徐々にタイラントの防衛線は縮まっていき、包囲されるのも時間の問題であった。

 この状況では一年どころかあと一ヶ月も持たず、蟻が象に踏み潰されるようにタイラントはのみ込まれるだろう。


 しかし、サイファーは気楽に笑い、イシュタルの頭に手をのせて撫でてくる。


「お前が死ぬなんてことはありえない。この国がどうなろうとあまり興味はないが、お前やリリィは絶対に俺が守るからな」


「―――っ、馬鹿。女たらし!」 


 イシュタルの顔が瞬時に真っ赤になる。

 できればリリィを含めないでそのセリフを言って欲しかった。

 本当にこの女たらし!

 でも正直嬉しかった。


「わたしを守るなら、この国も守ってよ」


「なんで? 興味ないからパス」


「むー」


 そう言って、イシュタルが膨れたところだった。

 

『イシュタル様。あの、外でずっと待っているのですが……。できれば少し急いで頂きたい』


 兵士が扉をノックしてきた。

 その声には苛立も多分に含まれており、「わ、わかった。今すぐ行きます!」と恥じた。


「まあとりあえずタイラント領主とやらに会うか」


「そうですね。サイファー様、どのような輩かわかりません。十分ご注意ください」


「エリスは優しいわたしの姉みたいな女性よ。悪く言わないで」

  

 リリィのまるで闇討ちされるかのような発言に腹を立てながら、イシュタルは部屋から出て、関所の廊下を歩いていく。

 その後ろにサイファーたちが続いた。

 関所の北門には既にタイラント兵の迎えの飛竜が何匹も上空を旋回していた。

 ワイバーンタイプが三匹、セルタムタイプが二匹。

 セルタムとはワイバーンよりも体が大きく頑丈で、その背中には何人も人が乗れるような平らな形をしている。

 戦闘では使わずほとんど物資の輸送に使う。

 ずんぐりとした顔だちに、角が三本。鋭い爪も牙もなく、大人しそうな丸い目をしている。

 ワイバーンとリンドブルムの交配の結果生まれた新種である。


「ん? あれは―――」


 目が人間よりもいいサイファーが空の雲間から何か発見したようで軽く目を細めた。


「なに。敵なの?」


「いや、あれは……」


 と、その時だった。


『イシュタル様! よくぞご無事で』


 いきなり天からワイバーンが急降下してくるなり、翼を大きく広げ、まるで喜びを表現するかのようにイシュタルの目の前に降り立った。

 それはタイラントに向かう途中で別れたイシュタルの騎竜バーンだった。

 イシュタルはワイバーンの首に抱きついて、その角を撫でてやる。


「バーンさん! 無事に着いていたのね」


『ええ、怪我も完全に回復しました。これでイシュタル様を乗せて、いつでも戦陣へお供できます』


「心強いわ。あなたに乗って空を駆けるのも久しぶりね」


『本当に懐かしい。ですが、此度駆けるのは戦場の空。ゆめゆめ油断なされませぬように』


「わかってるわ」


 イシュタルは覚悟を見せるように、大きく頷いた。


「イシュタル様、エリス様がお待ちです。どうかお急ぎください。竜の方々はこのセルタムにお乗りください。我が主より最上級の飛竜をご用意いたしました。どうぞお寛ぎください」


「わかった。よろしく頼むぞ」


『あなた様をお乗せできるなど光栄の極みにございます』


 サイファーがセルタムの鼻を撫でてやると、恐縮したように巨体が跪いた。

 さすが竜。モンスターや雑種など簡単にああやって手下にできてしまうのだろう。

 タイラント武人の勇猛さで知られる兵士たちも、サイファーやリリィの威圧感を肌で感じているのだろうか。

 皆緊張した様子で手綱を握って、ピンと背筋を伸ばしている。

 

「さあ、エリスのところへ案内して。この地を抵抗勢力立ち上げの基盤にするわよ!」


 イシュタルもサイファーに負けないように、声を張り上げた。

 兵士たちが「おお!」と掛け声をあげて、騎竜に合図を送る。

 何十匹もの飛竜が翼を広げ、大地を飛び立つ。


「どうか御武運を! 姫様!」


「殿下、どうぞフランベルジュをお守りください!」


 関所の尖塔に立つ見張りの兵士らが手を振りながら、槍を天高く突き上げた。

 イシュタルはそれに笑顔でもって返してやる。

 

 サイファーたちとの交渉はまだこれからも続く。

 問題は山積みだが、自分の背には国民の期待がずっしりと重くのしかかってくる。

 バーンの背中で心地よいタイラントの風に吹かれながら、イシュタルは唇を強く噛み締めた。










小説は中々に労力のいる作業です。

特に生みの苦しみ。

難産することなんてしょっちゅうです。

エンターテイナーなので、常に皆さんがどのような作品を求めていて、どのような文章ならば喜んでいただけるか考えています。それは純文学の己をただありのままに表現するようなものではなく、まさしく大衆小説としての娯楽を追求していくがためにおこる対価なのでしょう。

等価交換、ハガレンの名台詞ですが、現実でもこの等価交換が蔓延ってます。

ああ、簡単になんでもかんでも創造できたらいいのにね。


っと、今回はポエム風。


登場人物紹介


アベル・ドルストン

種族 エルフ

年齢 本人は1500年は生きていると言っているが、明らかにもっと生きているだろうって感じのエルフです。

身長 175cm

体重 61kg

レベル 324

近接格闘、剣、魔法、機械、薬学、帝王学、錬金術、死霊術などなど、持っているスキルは星の数ほどあります。しかもトップレベル。


ステータスやレベルが上がるごとに上昇する数値はあまり高くありませんが、ステータスで見ると、INTの数値がハンパなく高いです。恐らくこの世界の諸葛孔明は彼なのではないか……。

一説によればエルフと言えど少しずつ老いるので、魔法で若返りを実現しているのではないだろうかと噂で流れている。

エリスラブ! お嬢様大好きー! お嬢様は俺の娘!

エリスが赤ちゃんの頃から、付き従っていた。その頃からロリコンに目覚めたか。小さい女の子が大好き。むさいオッサンが大嫌い。クロムウェルとは喧嘩友達っぽい。



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