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いたずら  作者: あるとII
20/24

【20】再請求・五条

時間が少し飛んで再請求。

これでも再請求できるって、日本はすごい国ですね。

中原家の離婚劇から八ヶ月が経過した頃、娘の美香から、父親に会いたいと連絡が入った。


 山本さんの紹介でウチに来た中原進氏は、見るからに弁護士を雇うようなトラブルには向かないと思った。誠実さがにじみ出ていたからだ。

 それでも依頼をしたからには事情があるのだろうと話だけは聴いたところで、依頼を受ける決意をした。娘に痴漢冤罪を仕掛けられたと、あまり聞いたことのない酷い話で、この結末に興味があった。

 依頼内容は、資料の作成、訴訟準備、および家族とのつなぎ役だった。約一年で三百万というのは氏から提案された。

 資料の作成については法的なアドバイスだけでほとんど彼が行った。経験で培ったのか、俺が思った以上にわかりやすく資料に仕上がった。財産分与については本当によかったのかと今でも思うが、報酬をもらっている身なので、しつこい言及は避けた。

 幸い調停や裁判に至ることなく離婚は成立し、カネの振込も済ませている。

 いくらその後の請求を拒否して了承していても、請求する権利があるのは理不尽な話だ。

 特に今回のようなケースでは。

 条件に盛り込んだものの、そのあたりはわかっていたようだ。だからこそ、一年という長い間の依頼になったのだ。


 元妻と娘には、依頼人である進氏の連絡先は教えていない。ただ資料はうちの事務所の封筒で送っていたし、資料にも記載していたから、それで連絡してきたのだろう。

 つなぎ役は買って出ていても、俺の判断で氏につなぐなり断るなりしてもよいという前提だ。間接的に、山本氏にも同じようなことを伝えていることを知った。


 数日後、美香と近所の喫茶店で落ち合った。

 事務所でもよかったが、中原氏が彼女らにされたことを考えると、後々冤罪で訴えられることも考えられる。人目のある場所で話すのがいいだろうという判断だ。

 初めて会ったが、少し痩せぎみ、髪は派手に染めていて、メイクもしていた。バッグや着るものはブランドものという感じだ。いまどきの女子高生はこういうものなのだろうか。それとも、財産を食い潰しているのか。

 ここは持ちますから好きなものを注文してください、というと、店で一番高いパフェと高級茶葉の紅茶を注文された。俺は一番安いブレンドだ。

 パフェを食べ終えるまで二十分ほど黙って見て、ようやく本題に入る。

「ねえ、あの人どこにいるの? 養育費ってのもらえるんでしょ」

「あの人、ってお父さんのことかい」

「あの人ったらあの人しかいないでしょ。で、もらえるのもらえないの」

 養育費はおろか、いっさいの援助はお互いにしないことを念書できちんと約束をしている。互いの合意があれば別として、一方的に要求しても通ることはない。子供からの請求には応えなければならない判例はあるものの、それもまともな家計である前提だ。

「もらえないよ。離婚の時にその点は同意しているからね」

「あたしはそんなの知らない。親の離婚であたしはひどいめに遭った。ソンガイバイショー請求したい」

「いや、そんなに簡単にはできないよ」

「じゃあどうすりゃいいの」

「まず何があったか聞かせてくれないか」

 そういうと、美香はソフトクリームの乗ったケーキから手を離した。

「お母さんがホストに狂って遊びまくってんの。夜も遅いし料理も家事もやらない。仕方なくあたしが家事やってるけど、食事はスーパーの総菜やレトルト。肌も荒れるしもーサイアク」

「もしかして、お金に困っているのですか?」

 二人には一億五千万円を渡している。調査したところ、美香の学費は別に確保して三千万、美香の取り分で二千万、残りは家計分を含め妻の英美の口座に渡った。

「お母さんは働いてないし。家を売ってマンションに引っ越そうかって言ってた。ゴミ屋敷を片づけるよりそのほうが簡単だって」

 そういいながら、奢ってくれるって言ったよね、とメニューとこちらと視線を投げて無言で訴えてくる。今度はパスタを注文された。

 正直、かかわり合いになりたくないタイプだ。あえて嫌われるように言葉を返した。

「では、売却してお金を得て引っ越してはどうでしょう」

「おじさん、わかってないな。空気読んでよ。いいからあいつの連絡先教えてよ」

「教えられません」

 教えられるわけがない。甘い顔を見せたら、第二の人生を踏み出している氏にいつまでも無心を迫ってくる。おじさん呼ばわりは無視することにする。

「お金ほしいからお父さんに会わせてほしいということでしたら、お受けできません。これで失礼しますが、よろしいですか。あ、ここまでのお代は払っておきますので、ごゆっくり」

 席を立ち上がろうとすると、彼女はウェイトレスを呼び止め、さらに五品注文し、後から持ってくるように付け加えた。

「もうわかったよ。うざいおっさんに頼らないから。ごちそうさま」

 そういうと、美香はパスタを平らげて、次の注文を待ちながらスマホをいじり始めた。

 俺は彼女に呼ばれた側なのに、その彼女はもう残りの注文しか目に入ってない。パスタを持ってきたウェイトレスは、空いた皿を下げた後、他の注文を出すか確認して去って行った。 ここまでのお会計はしておくから、と一応伝えた後、レジで会計をして店を出た。


 進氏には、事の顛末と、英美、美香の現状について調べた限りのことを伝えた。

 英美の口座には約三千万しか残っていなかった。八ヶ月で七千万使ったことになる。使い道や利用状況も確認し、本当にホストに貢いでいたようだ。

 娘の美香も相当で、学費はあまり手をつけていなかったが、八ヶ月で二百万近く使用していた。ブランドものやメイクに散財したのは会ったときの服装から予想がついた。

 関わらないつもりで縁を切っても、やはり元妻と娘のことは気になるらしい。わかったことがあったらまた教えてほしいと頼まれた。

 やはりこの人は、こうしたドロドロのトラブルには向いていない。弁護士としてはおいしいお客さんではあるが。転職先ではそれなりに仕事をして株も再開したらしいから、早く新生活に慣れてほしいと思う。

一人で男の弁護士の下に行かせる英美はどうなんだ。。。

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