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【10/23(金)コミカライズ新章開始】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい  作者: 来栖千依
第4部 王宮騒乱編

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プロローグ 本当のはじまり

 春の陽気に包まれた祝祭日。


 正タスティリヤ国教会の大聖堂から宮殿へ続く大通りには、たくさんの市民が詰めかけた。

 国旗を振り、花びらを撒き、歓喜の声を上げる彼らの視線は、大通りの中央を走る馬車に向けられている。


 タスティリヤ王国の紋章がついた黄金の馬車に乗っているのは、麗しき第二王子と晴れて花嫁となった美貌の公爵令嬢――。


「レイノルド王太子殿下、マリアヴェーラ王太子妃殿下、バンザイ!」

「ご結婚おめでとうございます!」


 幸せそうな表情で手を振り返す二人に、群衆は熱狂する。


 人混みのなかで、ただ一人だけ冷めた目をした女性がいた。

 白の混じった金髪は見事で、着ているデイドレスも上等だ。

 腕には、仕立てのよい子ども服を着た、白銀の髪の男の子を抱き上げている。


「……なぜ、あそこにいるのが私ではないの……」


 純白のウェディングドレスを着た王太子妃を見る瞳は暗く、表情は嫉妬で張りつめていた。

 自ずと、子どもを抱く腕に力が入る。

 男の子は、サファイヤのように青い瞳を痛そうに細めた。


「おかあしゃま」


 けれど、彼女は気づかない。


 身の内で沸き上がる黒い情念が、周囲の喧騒も、我が子の訴えも、何もかもを意識から遠ざけている。


「絶対に取り戻してやる……」


 つぶやく彼女に、酒のカップを手に持って騒いでいた若者がぶつかる。

 こぼれた酒が女性のドレスにかかった。


「うわ、すまない!」

「…………」


 女性は、若者をギロリと睨んで踵を返した。

 抱かれた男の子は、群衆に隠れて見えなくなるまで、若者をもの憂げに見つめていた。


「なんか気味悪いな」


 若者はそう言って、カップに残っていた酒を飲んだ。

 そして、喜びに沸く集団に戻ろうとしたが――。


「うっ」


 ドクンと鼓動が脈打った。

 胸を押さえて倒れた若者に、周囲の人々が悲鳴を上げる。


「大丈夫か!? 誰か、医者を!」


 呼びかけに、人々は助けを呼びに走ったり、水を持って駆けつける。

 しかし、懸命な救命にもかかわらず、若者は助からなかった。


 パレードの最中のこの事件は、慶事の喜びにかき消され、当の王太子夫妻のところへは届かなかった。 

 ――これが、本当のはじまりだったのに。

長らくお待たせしました。

『高嶺の花令嬢』第4部の連載をはじめます!

長めのエピソードになる予定なので、ゆっくりお付き合いくださいね。


コミカライズも本日(2026年10月23日)より新章が連載開始!

炬とうや先生による、めちゃくちゃ可愛いコミカライズです。

Seasons*様(文藝春秋)にて無料でお読みいただけます。

コミックス①②巻(紙・電子)もありますので、ぜひお手元にお迎えください。

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