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村の生活

早朝に玄関で待っていた琉海。


「早いね」


 玄関にやってきたのは、アンリだった。


「そん……ヤンばあに言われて来たんだけど」


「うん。聞いてるよ。じゃあ、行こうか」


「どこへ?」


「畑よ」


 早朝から向かったのは、村にある畑だった。

 この村ではほとんど自分たちの力のみで衣食住を賄っているようだ。

 つまり、村規模での自給自足。

 この村にある畑は村民全員で管理しているらしい。


「おはよう」

「おはよう」


 先に来ていた女性たちから挨拶される。


「おはよう」


 アンリも挨拶で返していた。


「おはようございます」


 琉海も一礼して返す。


「へえ、彼が噂の子?」


 小声でアンリに確認する女性が一人。


「うーん、どうだろう」


 アンリは何とも言えないと答えた。

 琉海はそんな会話には興味を持たず、畑を見る。

 テニスコート三面ほどの広さのある畑。

 ただ、そこに緑は一切ない。

 普通の地面に比べて柔らかい土であることはわかるが、まだなにも生っていないようだ。

 そう思っていると――


「それじゃ、収穫をしましょう」


 アンリの言葉に琉海は驚かされる。


「えっと……どこに収穫する実が生っているのかな」


「ああ、ルイはこの国出身じゃないからわからないわよね。こっち来て」


 アンリに連れられて畑のそばに寄る。


「この山になっているところを掘ってみると――」


 アンリが掘り返したところから、何かが出てくる。

 そこには拳大の大きさのものがあった。


「ジャガイモ?」


「ルイ、知ってるんだ。じゃあ、これはどう?」


 アンリは別の山からはサツマイモを取り出した。


「へえ、サツマイモも生っているんだ」


「これも知っているのね。なら、話しが早いわ。これらを収穫してほしいのよ」


 なるほど、畑仕事をさせるために、ヤンばあは琉海に来るよう言ったようだ。


「それはいいんだけど、木は枯れているのにジャガイモとサツマイモはできるんだね」


「うーん、詳しいことはわからないんだけど、この村で作れる食物はこの二つなのよ」


「じゃあ、他の食べ物は?」


 たしか昨日、夕飯をもらったときは、色々と品揃えが豊富だった気がしたのだが。


「あれは、定期的に町に行ってる男性組が持って帰ってくるのよ」


 町に新鮮な山菜があるということなのかアンリに聞いてみたが、わからないようだ。

 まあ、このへんのことは、アンリよりヤンばあのほうが詳しいのかもしれない。

 琉海はアンリに教わりつつ、芋を収穫していく。

 これがこの村の主食のようだ。

 畑仕事の後はアンリに村の人たちを紹介してもらい、警戒心を持たれながらも、アンリが間に入ってうまく会話を回してくれた。

 男性陣は朝早く村の外に出て狩りに行っているようだ。

 その間、女性陣は家事や洗濯をして男性陣の収穫を待つらしい。

 琉海は狩りに参加せず、家事や洗濯の手伝いをすることに。

 今はアンリと一緒に料理をしていた。


「男性陣ってどんなものを狩りに行っているんだ?」


 料理中におもむろに気になったことを聞いてみる。


「うーん、色々かな。鳥だったり猪だったり、大きな魔物だと大人三人がかりで運んでくる大きさの魔物を狩ってくることもあるかな」


「魔物か……」


 やっぱりいるのかと、琉海は心の中で嘆息する。

 村を出て他の町に行くのに一番の危険はそこかもしれない。


「でも、そんなに心配しなくても大丈夫。この村に魔物は入ってこれないみたいだから」


 琉海の呟きをアンリは何か勘違いをしたのか心配を取り除こうとする。


「入ってこれない?」


 アンリの言葉を聞いて村の外側を囲う石の塀を思い出す。

 琉海の腰までの高さしかないあの塀に魔物を通さない役割を担っているとは思えない。


「村の外には石で作られた囲いがあるんだけど」


「ああ、それなら見たよ」


「それには、特殊な魔法がかかっているみたいで魔物除けになっているみたいなの」


「へえ、あれがか」


 あんなただの石にそんな役割があったとは思いもしなかった。


「だから、この村では魔物の被害はないのよ。おばあちゃんが言うには、他の村だとそうはいかないみたい」


 やっぱり、この世界で行動するには、魔物の対策は必要なのかもしれない。

 会話をしながら、アンリと琉海は調理を進めていく。

 できた料理は村の人たちと一緒に食べる。

 今日の男性陣は帰ってくるのがいつもより遅いらしい。

 普段は昼過ぎには帰ってくるようだ。

 大体、遅いときは大物が捕れたときのようで、女性陣は期待を膨らましていた。

 期待通り、男性陣は四人がかりでサイのような姿をした魔物を運んできた。

 このサイのような魔物は美味しいとのことだ。

 食べられない部分は他の町で売れるようで、出稼ぎに行く村人に渡すのが通例のようだ。

 その売った金で医療品などの生活必需品を買って持ち帰ってくる。

 こうしてこの村は成り立っていた。


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