14日後
琉海がこの村で世話になって一四日ほどの時間が経った。
生活にも慣れて、村の住人からの警戒は薄れ、挨拶を交わすぐらいには打ち解けていた。
「じゃあ、今日も一日がんばりますか」
アンリが洗濯物を持って干場に持っていく。
琉海も一緒に洗濯物を運んだ。
干場で洗濯物を干していると遠くから何かの音が聞こえた気がした。
「ん? なんか来る?」
琉海は村の入り口のある方に視線を向ける。
この一四日間の間で聞いたことのない音だった。
「どうしたの?」
この干場から入り口まではそれなりの距離があるので、アンリには聞こえていないようだ。
ドタドタとなにか騒がしい音が近づいてくる。
そして、数十秒すると――
「これって……!?」
アンリにも聞こえたようだ。
アンリは表情を険しくして洗濯物を放り出し、駆け出した。
あまりの変化に琉海もアンリを追う。
アンリが向かったのは自宅であるヤンばあの家。
「おばあちゃん! いる?」
アンリが玄関の扉を開け大声で呼ぶ。
「なんだい。騒々しいね」
「おばあちゃん、奴らが来たかもしれない」
アンリの言葉でヤンばあの目の鋭さが増す。
「それは本当かい?」
「わからないけど、馬の足音が聞こえた。もう、すぐそこまで来てると思う」
「わかった。儂が様子を見て来る。アンリは琉海と逃げられるように準備をしておくのじゃ」
「おばあちゃん……」
「わかったら、さっさと支度をしなされ!」
ヤンばあの声はいつも通りだったかが、その声には、強い威圧感があった。
その声で肩をびくッとさせたアンリは頷いて家の中に入っていく。
ヤンばあは普段と変わらない足取りで家を出ようとする。
「勝手なことかもしれんが、アンリのこと、頼んだぞ」
琉海とのすれ違う瞬間、ヤンばあはそう言い残し、家を出て村の入り口へと歩いて行ってしまった。
「何がどうなっているんだ?」
状況に置いてかれている琉海はそう呟くことしかできなかった。




