回収
とめどなく放ち続ける榊原。
煙の中からなんとか飛び出したエアリスだったが――
服はボロボロ。
顔も煤だらけ。
息も絶え絶えで痛々しい火傷の痕もあった。
「どうして……」
エアリスは小さく呟く。
「頃合いか」
榊原は火球を放ち続け、その中に榊原は紛れた。
エアリスが避けている最中、蹴りが腹部を襲う。
「うッ!」
腹部を圧迫され、苦悶の声が漏れる。
エアリスは追撃を恐れ、剣を薙ぐ。
しかし――
「遅い」
榊原の剣の方が速く、エアリスの剣は宙を舞った。
そして、榊原の手がエアリスの首を掴む。
「ぐッ!」
首を絞められ、地面から足が離れるエアリス。
もう片方の剣で反撃しようとするが、それも弾かれ、手から離れてしまう。
「うぐっ!」
首を掴む手の力が増したのか、エアリスの口から苦しそうな声が聞こえてくる。
このままでは、エアリスが死ぬ。
静華はすぐさま魔法を放とうとした。
だが、魔法は具象化されなかった。
「…………ッ!?」
「会長の今の精神状態じゃ、魔法は使えない。下手に魔法を使おうとして誤爆されても困るから、やめときな」
榊原の言葉に苦虫を噛み潰した表情をする静華。
精神状態。
静華の心は解き放たれた感情が渦巻き、自分で制御できていなかった。
薄々はわかっていた。
八ヵ月と短い期間だが、魔法を使い続けてきたのだから。
魔法を使用する際は、平常心を保つことが重要となることを。
これが、基本であり、根本なのだと知っている。
だが、人間の心はそう簡単に平常心になることができない。
だから、クリューカの元でどんな状態でも平常心を保てるように訓練した。
しかし、戻ってきた感情は理性で抑えつけられるほど、小さいものではなかった。
榊原は静華を一瞥し、邪魔にならないと判断したのか、視線をエアリスに向けた。
「な……ん……で……」
首を絞められて苦しい中、なんとか言葉を紡ぐエアリス。
「聞かれたことにホイホイと答えるような馬鹿じゃないよ」
榊原は右手に持つ剣の切っ先をエアリスの左胸に当てる。
「上級精霊の霊核を回収するのは、初めてだから本当か半信半疑なんだけど、核がここにあるってホント?」
榊原は人間の心臓がある箇所を剣で示す。
「…………」
「だんまりか。まあ、開いてみればわかることかな」
さっき自分で言ったことを棚に上げて喋り、剣を刺し込もうとする。
エアリスの服を貫き、柔肌に触れる。
瞬間――
榊原とエアリスの間を鋭い暴風が空気を切り裂いた。
榊原はエアリスの首から手を離し、躱した。
さらに、二発目。
「おっと」
榊原はそれも躱す。
だが、躱したことで追い詰めたエアリスと距離が離れてしまう。
「追いかけてこれるとはね」
エアリスを庇うように立っているのは、琉海だった。




