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遺物ナンバー1 眠れる廃墟の美女? エピローグ

今回は主人公とヒロインは出ません。残酷な描写があります。人を人とも思わない男が感情の起伏もなく人を殺します。

第三者の視点からヒロインの正体をはっきりとさせることと主人公がいずれ倒すべき男を登場させるのが目的なのでそれさえわかっていただければ、残酷描写のあるこの回を無理に読まれなくて物語はご理解いただけるかと思います。

「どうすんだよ?ええ? 古代兵器が逃げちまったじゃないか。お前のせいだよな? 明らかによお! 様子を見るなんてまどろっこしいことしないで、もっと早く踏み込んでりゃとっくにゲットできてたんじゃねえのか? ああっ?」


 ヤスとミコトが無事に逃げおおせ、その場に取り残された男たちは追いかけていた男たちの中でも比較的若く体格に勝る男が色白の金髪の少年に詰め寄っている。少年は細い体を縮めるようにうつむき目線を反らしていた。


 男は少年の額に己の額を押しつけ、さらにねじ込むように擦れ会わせながらも大きな声で恫喝を続けた。


「黙ってたらわかんねえぞ? おう? それに今となっちゃあのガキが古代兵器ってのも怪しいもんだ。本当に奴らから俺らのクニを取り戻せるような古代の人型兵器だったら反撃してきたはずだろうがよ」


 少年は一度顔をあげ、何か言い掛けたがすぐに俯いた。


「なんとか言えよ? このやろうっ」


 男が少年の襟首を掴む。少年は顔を背け続けている。とりなすように男たちの中の年長者が間に入った。


「まあ、まあ、落ち着け。佐藤。それじゃ森野さんもなにも答えられんよ」


「いや、でも、鈴木さん」


「なんだ? いって見ろ」


「こいつ、俺らのこと舐めてますって。初めてあったときからずっと俺らのことバカにしてたじゃないですか? そりゃ、西の方から比べたらここら東の果てなんて田舎すぎて笑っちゃうんでしょうけど、俺らだって、こんな田舎とは言え正規兵だったっていうんですよっ」


 鈴木は苦く笑いを浮かべて言う。


「ま、拳銃をあれだけ用意できる人たちなんだ。しょうがないさ。俺たちとはクニの規模が違うんだ。初めて拳銃を撃ったときは肝を冷やしたろ。お前なんか尻餅ついてたじゃないか」


「いや、違います。ちょっと、疲れてたから座っただけですよ? あのときも言いましたけど」


「ああ、そうだったな。ま、こちらのご主人はあんなもん量産しようっていうんだからよ。竹槍が正規の装備だった俺らなんて猿みたいなもんさ」


 森野が笑みを浮かべかみ殺した。


 佐藤は見逃さなかった。


「見ました鈴木さん? むかつくでしょ? もういいっすよ。こいつらの力なんか借りなくたって俺らでクニ取り替えせますって。さっきの奴らだって拳銃一発で簡単に殺せましたもん」


 森野が笑みを浮かべた


「その拳銃、供給したのうちらですけど。っていうか、全部取られてやんの」


「てっめ」


 森野の襟首をつかもうと腕を伸ばしたその瞬間、佐藤の頭が爆ぜた。


「ちょっとぉ。小野田さん。なにやってたんですか? 猿共、口が臭くてうんざりなんですけど?」


 血しぶきで染められた少年。笑顔だった。


 目線はどこからか現れた馬上の男に注がれている。男は精悍な顔つきのたくましい青年。回転式の大きな拳銃を鈴木に向けた。倒れた佐藤の亡骸に駆けよる鈴木。もう一人の鈴木の仲間は四つん這いで両手で頭を抱えている。


 新たに現れた小野田と呼ばれた男は森野の質問に質問で返した。


「で? どうだった?」


「ただの人間。全然電波飛ばしてないんだもん。僕がキャッチできないなら少なくともあいつの体は機械じゃないよ。それに生態的な人造人間は僕の知る限り古代人は創らなかったんだ。技術的にはできたはずだけど倫理的にタブーだから」


「そっか」


「うん、こいつらの話もさ、全然ガセだし。なにが人間離れした少女に心当たりがある、だっての。っていうか、病室見た? 白い箱が転がってたんだけど。あれさあ、コールドスリープの装置。人間凍らせて長時間生きながらえさせるっていう機械。コールドスリープしてるあの子を見て、こいつら天女だ、精霊だ、いや、妖怪だとかとか言ってたってわけ。ホントこいつら猿」


「そっか。そのコールドスリープとやらに入っていた奴を今の時代の奴が引きずり出せるか?」


「無理。それこそ猿の前に現れたモノリスだと思う。まあ、電源はソーラーパネルから供給されてたし、タイマーが作動して開いたんじゃない?」


「拳銃では? 俺が持ってるこのいかついのならどうだ?」



「うわ、マグナムじゃないの? それ。だったら壊して開けられるかも知れないけど。でもコールドスリープの知識があったらまずやらないよ。気圧とか温度とかいろいろ調整しなきゃだし」


「なるほど」


「本当に理解できたの? 小野田さん、頭いいけどこの時代の人だしなあ」


「男から聞いた。怪我をして薬を探しに忍び込んだら出してくれと中からガラスを叩いてたんだと。それで、この銃で壊して出してやったらしい。それからしばらく世話をしてたんだと」


「あ、なんだ。だったら教えてくれればよかったのに」


「今、教えてる」


「でも、残念でしたぁ。また、忠実なる奴隷が増やせるかと思ってたんでしょ? しかも今度は女の子だし」



「いや。お前が俺の命令より、人を傷つけてはならないというお前の強迫観念を優先することが確認とれた。今回はそれで充分だ」


「強迫観念違う。プログラム。言ったでしょ。僕は人を殺そうとすると体が固まっちゃうの。そいうプログラムが走って一時的に体を麻痺させちゃうわけ」


「ああ。見てた」


「ああ、見てたんだ。・・・・・・・ って、どうしてもっと早く助けてくれなかったの? 僕は人の体に危害を加える行動はとれないんだよ? だからこんな猿を使わなきゃいけなかったのに」


 涙混じりに訴える森野の瞳がとらえているのは涼やかな小野田の眼差しだった。見つめ合うことに耐えきれず叫ぶ。


「今日のコレって全部、僕を試すためのものだったの?」


「ああ。全て、ではないがな」


「ちょ、そんな、ひどくない? とっくに信じ合えてると思ってたのに」


「確認は必要だ」


「そっか、そうでした。僕のご主人様はそう言う人でした。はいはい。さすが、かつて魔王と呼ばれた男の血を引く人だ。その体を流れる血はさぞかしドス黒いんでしょうね」


「赤かったぞ。つまらんことにな」


 森野は何も言わず小野田の瞳を見た。なんの変化も見て取れなかった。何か言おうとしたその瞬間。


「お前がこいつの親玉だな。武器を捨てて馬から降りろ」


 鈴木は森野の背後からしがみつき、その喉元に先端を尖らせた細い鉄のパイプを突きつけた。馬上の小野田は微笑みを絶やさぬまま森野に告げた。


「森野。お前、顔、真っ白だぞ?」


「ちょ、小野田さん。ふざけないで。助けてよ。撃ってよ、こいつ。僕だって、一度にいっぱい血が出たら再生が間に合わないんだから」


「ああ、無理だ。お前にも当たる。それくらいの武器ならおとなしく刺されとけ。死ぬほどではないだろ?お前なら。それでそいつも少しは落ち着くだろ」


 鈴木は目を見開いた。動揺を露わに震える声で


「お、お、おまえ。さっきから人をなんだと思ってるんだ? 躊躇いなく無防備な人間にいきなり殺すなんて」


「そう言うお前はどう思うんだ。人質を取ってるお前が言うべきことじゃないな」


「ふざけるな。いきなり佐藤を殺しやがって。お前みたいな奴は生きてちゃダメだ。生かしておくと他にも犠牲者が増える」


「あれだけの文明を持つ古代人が滅んだんだぞ? 奴らも繁栄した。だが頂点を迎えれば後は下るだけよ。この星が養える人間の数には限りがあるからな」


「バカか、貴様。周りを見て見ろ。人の居場所なんて掃いて捨てるほどあるわ」


「ふん。ここが球体の惑星であることすら知らんのだから無理もないか。まあ、なんにでも限度はある、ということよ。古代人ですら繁栄がいきすぎて逆に調整しようと子を成すものが減り、争いは増え、結果大幅に人が減った」


「だから、どうした? 殺してやるから早く降りろ。お前がおとなしく俺に殺されればこのガキは見逃してやる」


「焦るな。続きを聞け。争いが繰り返され文明も破壊されていった結果、人が減り、厳しい自然環境に対して協力しなければ生きていくこともままならぬことになった。そして、その結果、また、人が増え始め戦でクニを奪い合ってる。俺たちも古代人と同じことを繰り返すだけよ。そこに意味はあるのか」


「せっかく親からいただいた命。全力で生きて何が悪い」


「はは。無駄なことを。全ての生き物はそこに転がる男と同じ躯よ」


 鈴木は言葉を失い小野田は笑った。声をあげて快活と言えるほどに笑った。言葉につまる鈴木。血走った目で小野田の瞳を睨みつけていた。小野田は軽い調子で言った。


「おい、見てみろ。そんなに力むからその武器、森野の首に刺さってる」


「なにっ」


 鈴木は森野の首から流れパイプを伝い己の手に着くなま暖かく湯気を放つ液を見た。青色だった。


「ひいっ」


 後ずさったところ。小野田の銃が放った弾丸が鈴木の頭を炸裂させる。直後、小野田は頭を抱えている男に馬上から声をかける。


「おい、そこの臆病者。素直に質問に答えれば生きて帰れるぞ」


「は、はい」


 頭を抱えたまま男は答える。


「ここからさらにずっと東に行くと死の森、そしてその森を抜けると死神が祀られている古代の神殿があるな? 海の方だ」


「は、はい」


「警備はどうなっている? お前等が侵入者を阻んできたんだろ?」


「と、と、隣のクニと戦が始まってから警備は解かれました。王様同士の話し合いであそこには手は出さないと取り決めがあったってことで。それに、ここらの奴らはみんなガキのころから絶対に近づくなって言われてるから元々、警備の必要もなかったし」


小野田は馬から降りて男の肩に手をかけ告げた。


「よし。わかった。行っていいぞ。俺は敵は倒すが協力してくれた者は労いたい」


 小野田は笑顔だった。人の心を蕩けさすような甘い笑顔。


 臆病者と呼ばれた男は跳ねるように立ち上がると涙の跡が残る頬を緩ませ笑顔で顔を上げた。


「あ、ありがとうございます」


 深く頭を下げた。


 その直後、その首は小野田の刀で跳ねられ、地に落ちた。


 小野田はやおら振り向き森野に訪ねた。


「なあ、この銃の弾丸、ここらへんで作れそうなところはあるか?」


「はいはい。僕の心配よりもお気にの拳銃の弾丸が心配なんですね」


「ふてくされるな。コレで機嫌を直せ」


 小野田は森野に巾着を放った。


 拾いあげて中身を取り出すと森野はにおいをかいだ。


「なに、これ? 食べ物?」


「ああ、干しいもというらしい。この銃の男から奪った。うまいぞ」


「ふうん」


 森野は銃と干し芋を奪われた男の末路に思いを馳せた。その干し芋からかすかに血の香りが漂った気がした。



お読みいただいてありがとうございます。


ワクワクできて、ちょっと笑えて、少しエッチな冒険活劇を目指しているのですが敵役がいたほうが冒険らしくなるかな、というのと主人公に父親に対する気持ちの決着をつけさせるためにも、今の状況があるのは父親のおかげであり、それをふまえて主人公が何を選択するのか?ということを描きたいな、と考えて今回の話をかきました。


あと本来はヒロインは自称アンドロイではなく本当にアンドロイドという設定で書いていたのですが、その設定だと俺のなかではどうしてもビターエンドしか思いつかなくって、ハッピーエンドにしたいなあと思いながら作品を読み返していたらヒロインがあくまでもセリフの上でしかアンドロイドって言ってないな、ということに気がつき、ええいっ、人間設定にしてしまえっ、ってな感じで今回のお話になりました。


いかがでしたでしょうか。


次回からは主人公がだんだんとヒロインが人間であることに気がつく様子やヒロインが自称アンドロイドだと嘘をついた理由などが明らかになっていく予定です。少し笑えるちょっとエッチな感じやすれ違いと和解が表現できればいいかなと思っています。


それではまた次回で。

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