策略の心得
9章 「策略の心得」
『いいか、シュナ。
人を謀ることは何時、如何なる時にもしてはいかん。』
だが、例外もある。
大切な人を守るとき。
先に卑怯なことをしている人を罰するときは仕方ないんだ。
だけど、大切な人を嘘で傷つけるな。
もし、その自覚があるのなら…。
お前の手で幸せにするんだ。
その覚悟がないなら、傷つけるな。
教えは守っているよ。父さん。
『ミリーを傷つけてしまったんだ。
でも。生きて帰れたら、絶対に幸せにするんだ。』
だから、今だけは。
叔父上が面会を申し出た。
取るに足らない手駒にするにも狭小な人物。
俺は、命を懸けてでも、演じなければならない。
見目は派手で遊んでいる風に。
これは特別な人なんかいないというポーズ。
三年前、両親が死んだっきり会ってないから、俺がこんなに成長したことも知らないだろう。
ここ一年で年を偽ってもわからないぐらいになった。
領主館で籠りっきりで仕事をするシュナイザーの設定だった。
たまに、シュナとして抜け出して外出していたけど、領民にすら気づかれていなかった。
だから、誤魔化し通せる自信がある。
『はじめまして。叔父上。』
キツい香は今、王都の娘たちに人気の物。
あまり、好みじゃないけど。
騎士団の恋人を嫉妬させたい娘に協力を仰ぎ、女を部屋に連れ込んでいる体裁を整えた。
何と、こんなにもだらけきっているとは。
これではこの男は使える駒なのかすらわからないではないか。
『シュナイザーから議会の仕事を任されたと聞いたが。』
ええ。そのぐらいの罪滅ぼしぐらいはね。
なんたってあいつは俺の存在さえ知らず、ぬくぬくと育った。
僕は自ら選んだ人生をあっさり奪われた。
だから、仕事と自由ぐらいはね。
手に持ったワイングラスからワインを一口。
このぐらい、アルコールに入るか。
俺は、もっと強い酒を煽るように飲んで来たのだから。
相手を謀るにはまず、油断を誘うこと。
そして、自ら聞き出したい情報に関連があるキーワードを口にすること。
『僕は、父親なんていらなかった。
母との生活の記憶さえあれば、他はいらなかった。』
この場合、キーワードは父親。
叔父上の弟。
これさえ口にできれば、あとはしゃべってくれるはず。
きっかけさえあれば、容易いこと。
策略の心得を使うようになった事が悔しい。
父さんが教えてくれた事。
そのうちで、絶対に使わないと思っていたこと。
ごめん、今はそれしか言えない━━━━。




